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音楽青春映画の新たな金字塔『シング・ストリート 未来のうた』をより深く楽しむ6つの元ネタ

『シング・ストリート 未来へのうた』はジョン・カーニー監督の自伝的音楽映画だ。1985年、ダブリン。鬱屈した毎日を送る14歳のコナーは音楽と少女に恋をし、自分の世界を変え始める。80年代UKロックという、映画史的にはあまり語られてこなかったカルチャーにスポットを当てつつ、「夢をあきらめるな」というあまりにもストレートなメッセージが突き刺さってくる青春映画の傑作だ。

本作をより深く味わってもらうため、作中エピソードの元ネタを挙げておく。これでもほんの一部!

元ネタ1.80年代ミュージックビデオ

80年代はMTVの時代。そして、ミュージシャンをブッキングしなくてもテレビで歌唱シーンが流せるMV(ミュージックビデオ)が作られるようになった時代だ。コナーも兄弟でMVを夢中で見ているシーンがある。そして、コナーは自分のバンド、シング・ストリートでもMVを制作するようになる。しかし、80年代はMVの黎明期、演出がちょっと「アレ」なMVも多かった。シング・ストリートが最初に作るMVはそんな80年代ロックのお馬鹿な面を連想させられる。 

Journey/Separate Ways(史上最悪にダサいと言われるMVだ!) 

元ネタ2.ジェネシス問題

コナーが好きになった女の子には彼氏がいた。カーステレオでジェネシスを聴いていたライバルを兄貴に報告すると「フィル・コリンズを聴く男なんでダセえ」と鼻で笑われる。なぜか?

1967年結成のジェネシスは、メンバーチェンジを繰り返し、そのたびに音楽性を変化させてきた。70年代にピーター・ガブリエルが脱退し、フィル・コリンズ主導になってからは、音楽が商業化。セールスはうなぎのぼりになったものの、コアなロックファンからはそっぽを向かれてしまっていたのだ。

ここらへんのロックファンの憎しみは、小説『ハイ・フィデリティ』にも綴られている。

 

元ネタ3.ヴィレッジ・ピープル

MV撮影で、カーボーイの格好をしているメンバーにぶつけられる「ヴィレッジ・ピープルかよ!」というツッコミ。これはもちろん、ゲイ・ディスコ・バンドだったヴィレッジ・ピープルのメンバー、ランディ・ジョーンズの衣装を指す。

元ネタ4.デペッシュ・モード、ジョイ・ディヴィジョン、デュラン・デュラン

音楽に詳しいエイモンをスカウトしにきたコナーたち。そこで、エイモンが口にするバンド名はニューウェイブの一派。パンクから派生しつつも、それまでのロックにはなかった要素を取り入れ(主にリズム面)、ポップミュージック界に衝撃を与えた。エイモンのアンテナの高さが分かる一幕。

元ネタ5.カッコーの巣の上で

詳しく書くとネタバレになるが、クライマックスは名作『カッコーの巣の上で』のラストシーンに酷似。そこに込められたメッセージを読み取ると感動的だ。

 

元ネタ6.U2

最初に書いたとおり、本作は監督の自伝的映画である。

しかし、シング・ストリートがU2をモデルにしているのはファンからすると一目瞭然。ダブリン出身、学校にメンバー募集のポスターを貼ったことから結成、初ギグは学園祭、ロンドンに渡って成功、などなど。

エイモンのモデルはU2のギタリスト、ジ・エッジだろう。ギターだけでなく複数の楽器に精通し、所謂ロックスターではなく、物静かな研究家タイプ(ドキュメンタリー『ゲット・ラウド ジ・エッジ、ジミー・ペイジ、ジャック・ホワイト×ライフ×ギター』で公開された自前のサウンド・システムには、誰もが驚かされた)。ちなみに、U2では多くの楽曲をボーカルのボノとエッジが共作している。これもコナーとエイモンの関係に重なる。

ボノは本作を鑑賞し、「今年のナンバーワンだ」との賛辞を贈った。

Writer

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石塚 就一就一 石塚

京都在住、農業兼映画ライター。他、映画芸術誌、SPOTTED701誌などで執筆経験アリ。京都で映画のイベントに関わりつつ、執筆業と京野菜作りに勤しんでいます。

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