日本映画には無い?SKIPシティ国際Dシネマ映画祭の海外長編受賞作に見られた「感性+◯◯」というキーワード

川口市で開催され2016年7月24日にフィナーレを迎えた「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」。

最終日である24日には、クローズセレモニーとしてアニメショーン部門・短編部門・長編部門それぞれの受賞作品が発表されました。

受賞作については多くのニュース・サイトで紹介されているので割愛するとして、今回は上に挙げた3部門の中から、特に私が気になった長編コンペティション部門に焦点を当ててみましょう。

総評で語られた岡田裕国際審査委員長のある言葉

SKIPシティアワード受賞の藤村監督の『見栄を張る』。
脚本賞に輝いたオリヴィエ・ランジェ監督の『アヒルからの贈り物』。
監督賞に選ばれたベントレー・ディーン、マーティン・バトラー両監督の『タンナ』
最優秀作品賞に見事選出されたアレハンドロ・グスマン・アルバレス監督の『朝日が昇るまで』

受賞4作品のうち実に3作品が外国人監督のものであったのも印象的ですが、それ以上に長編部門の総評を述べたアルゴ・ピクチャーズ株式会社代表で映画プロデューサーの岡田裕国際審査委員長のある言葉が、耳に残っています。

「日本の作品に関して言えば、テーマが見つけにくい時代になったと言われていますが、身の回り3メートルのことを題材にした作品が多く残念でした。新しいテーマを見つけて、グランプリをとりに戻って来ていただくことを期待しています」
公式サイトより引用

この言葉を頼りに長編部門の各作品を俯瞰すると、日本人監督が制作したものと外国人監督とのそれにちょっとした違いがあることが見えてきました。

海外作品に見た「感性+◯◯」

今回ノミネートされた12作品に言えることですが、どの作品も「生と死」、「家族」、「青春」、「障害」といった非常に繊細なテーマを、情緒豊かに描いています。

全ての作品から、監督や制作陣が胸に抱いた疑問や探究心といった「感性」をフルに発揮していることがよく伝わります。

そんな中、海外作品の多くと日本作品との間にあった大きな違いこそが、岡田委員長の示唆した「身の回り3メートル」という概念で、それを私は「冒険」と解釈しました。

国内で撮影された作品や一部の海外作品は、自分たちの生活圏という決められた空間の中で生まれた感情の機微を、非常に巧みなカメラワークや舞台設定、そして会話などで表現しています。

いい意味では日常のほんの些細な瞬間を繊細に創出しきっていると言えますが、その一方で作品を通して次に何が起こるかというドキドキ感、何を見せてくれるのかという興奮が少ないとも感じました。

対して、今回受賞作に輝いた作品の多くは、身の回りに何気なく転がっている感情を巧みに表現してはいつつ、そこからもう一歩外に出て、新しい自分を探すような、そんな物理的・心理的な冒険の要素をも持っていた気がするのです。

中でも「タンナ」は今回のノミネート作品のいずれと比較しても異質でした。ほとんどの人々がその生活の実態を知らないバヌアツ共和国で描かれた「ロミオとジュリエット」のような愛の物語は、冒険的で未知の世界に踏み込む高揚感が満ち満ちているものでした。

今回はこうした監督自身の感性にさらに冒険的要素が加わったものが、高く評価されていたと言えるでしょう。

そういう意味では、見栄というごくありふれた感情、そして夢という普遍的なテーマを、今は無き「泣き屋」という未知の職業でうまく組み合わせ人々の生活を彩った『見栄を張る』が受賞したのも納得です。

映画『見栄を張る』藤村明世監督、主演・久保陽香さん独占インタビュー【2016年SKIPシティアワード受賞作】

梅雨時の天気のように変わる評価の中で、自分の感性をどうダイナミックに発揮するか

そんな長編部門の総評の少し前に、短編部門の総評をした株式会社アルタミラピクチャーズ代表取締役の桝井省志委員長が「審査というのはその日の天気のように変わるもの」というウィットの富んだジョークを飛ばしていました。

審査員が1人変わるだけで、あるいはその視点が少しずれるだけでその作品の評価というのは大きく変わります。これは、実際に劇場でその作品を鑑賞した観客にも同じことが言えるでしょう。

今回各賞を手にした監督、そしてそれらを逃した監督が今後どのような作品を創り上げていくのか楽しみです。

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About the author

好きなジャンルはSF、特にファンタジー映画。そのきっかけとなった『ロード・オブ・ザ・リング』は筋金入りのオタクで、大学時代は卒論にするほど。

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