映画『見栄を張る』藤村明世監督、主演・久保陽香さん独占インタビュー【2016年SKIPシティアワード受賞作】

2016年7月17日〜24日まで開催された「SKIPシティDシネマ映画祭」。

本日そのクローズセレモニーが開催され、藤村明世監督がメガホンを取った『見栄を張る』が見事SKIPシティアワードを受賞しました。

THE RIVERではそんなセレモニー前日、23日の上映直後に藤村明世監督主演の久保陽香さんのおふたりへの独占インタビューが実現。最終上映と観客を交えたQ&Aの後というスケジュールでありながら、おふたりは笑いも交えた和やかな雰囲気でインタビューに応じていただきました。

今回は筆者と当サイト編集長、そしておふたりを交えたインタビューの模様をお送りしたいと思います。(一部敬称略)

映画祭のスケジュールを終えて

2度の上映と観客の方々とのQ&Aを通して「ここに反応してくれて嬉しいな」あるいは「あ、ここに反応してくれたんだ」と感じた観客の反応はありましたか?

藤村監督(以下藤村):上映後、毎回質問でいただくのが作品内の「やきそば」のことでした。食べるものって人のアイデンティティーが出るところなので、食べるものや食べ方というのはすごい出したくて。なのでそこを見ていただけているのは嬉しいなと毎回思っていました。

そうなんですね。ただ焼きそばにしょうがを入れて食べるシーンについて、監督自身はその味を試されていなかったんですよね?

久保陽香さん(以下久保):私も拍子抜けしました、試してないんだって(笑)ちゃんと試した上で台本に書かれているのかと思ってました。でもそれがかえって面白かったです。

作中、いくつかのシーンで会場に笑いが起きていましたが、そこは狙ってたんですか?

藤村:特に笑いを狙ってたわけではなかったんです。でもああいった観客の方々の反応を映画館で観れるのは楽しみの1つなので、とても嬉しかったです。

藤村監督の作品への細やかなこだわり

今作では泣き屋を通して死生観が描かれていましたが、宗教観など何か事前に勉強されたのですか?

藤村:宗教的なものではないですが、泣き屋については調べました。あまり資料がなかったんですが、国内にある泣き屋の資料はすべて読みましたね。

序盤の主人公の自宅での服装や生活空間に小道具へのこだわりを強く感じました。実際に生活のリアリティーを感じさせる作中のオブジェクトなどは、ベースになるものがあったんですか?

藤村:実は、絵梨子の東京の家は実際に撮影助手の男の子の家を借りて撮ったんです。小道具についてはそれぞれのキャラクターのプロフィールを美術監督と話した上で、例えば絵梨子がどんな音楽が好きで、こんな風で彼氏の影響を受けているといった具合でCDやポスターを用意してもらいました。あと彼女は乱雑な子だから、ジャンクフードが好きで部屋が散らかっているといった具合で。彼女の実家ロケ地も元はほとんど物置だったんですよ。美術監督や助手の方がそこから物を全部出して掃除して、一から家具を借りたりして全部作りました。

久保:本当に、最初に絵を観させていただいて実際にそのままの形が現場にあったので、すごいびっくりしました。こんなにできるものなんだって感じで。

小道具以外に、『見栄を張る』のタイトル通り本音なのか上部を取り繕ったのかわからない、細やかな演技が多く見られました。例えば亡くなった姉・由起子の息子である和馬くんの今後の話で、その場を取り仕切っている絵梨子の親戚の聖子さんが一瞬だけ正座の足を直していたり。そうした部分も出演者の方と細かく打ち合わせていたんですか?

藤村:聖子さん役を演じた辰寿広美さんには彼女の細かいプロフィールを伝えました。彼女は非常にキャリアのある女優さんだったので、その上で聖子像を作り上げお芝居してくださいました。

東京と田舎という2つの舞台で物語が進みますが、東京という華やかな所にいる人にいわゆるダメ人間が多く、田舎の人々の方が仕事や家族などを持ってしっかり生活しているように感じました。こうした描写には監督のどんな意図があったのでしょう?

藤村:私は東京で生まれ東京で育ちました。今作では田舎が嫌で上京し夢を追う自分と、夢に追いつけない人たちが周りにいる環境を東京で描きたくて。田舎を軽蔑していたのに、帰ってみたら(地元の人間が)全然自分たちよりもしっかりしてるというギャップを描きたかったんです。

そんな田舎の冒頭のシーンで姉・由起子の葬儀があるわけですが、非常にあっさりした印象でした。泣き屋という職業がテーマの中であの部分だけ涙というのが除外されていたと感じたのですが、そこにはなんらかの意図があったんですか?

藤村:中学生の時に私の祖父が亡くなったのですが、その葬儀で実際に映画のシーンのような今後の話が出ました。「今お葬式なのにその話する?」と違和感を覚え、そこを姉・由起子の葬儀に入れた部分があって。口では悲しいと言っているけど、実際に考えていることは違ったり、今後の自分たちのことをどうするか考えていたりというのを意図的に出していますね。

絵梨子と同世代の親戚である美里が、ラストで彼女をずっと見送って動かないのが非常に印象的でした。あれは絵梨子に対する羨望の気持ちがあったんでしょうか。

藤村:彼女は小さい時からずっと一緒にいるんだけど、絵梨子はすごい綺麗でしかも東京で女優をやっている。そんな彼女みたいになりたいけれど絶対にそうなれないという気持ちがずっとあって。仲がいいけれどずっと近づけないという羨望と寂しさをあのシーンで出したかったんです。

絵梨子という役柄を演じるにあたって

久保さんは多数のCMや作品に出演されていますが、そこでは表情豊かな愛嬌のあるキャラクターを演じていらっしゃいました。今作では対照的に終盤まで表情が少ないキャラクターでしたが、役柄を演じる上で難しかった点はありましたか?

久保:難しい点というわけではないですが、常に険しい表情を作り続けるという作品の中、和馬と交流するシーンで思わずふっとこぼれる笑みや表情にリアリティーを込められたと思います。絵梨子自身が思わず見栄を張ってしまう部分も、あの子の存在で和らいだ気がします。

年齢的にも職業にも共通する絵梨子を演じて、思ったことや突っ込みたいことはありましたか?

久保:突っ込みたいところは、やっぱり彼氏とのことですね(笑)口では厳しいことを言いながら結局お金渡しちゃったりしてしまう弱さが彼女にはあったので。

今回長編映画に初挑戦しましたが、1つの役にずっと入り込むのことで普段の生活や立ち振る舞いに変化があるなど難しさはありましたか?

久保:当時は違う仕事も掛け持ちしていたので、現場に入ったらピシッと変わるような感じでした。現場に入れば現場がちゃんと雰囲気を作ってくださったので、すごく(役に)入りやすかったですね。

今作は比較的シリアスな題材だったと思うのですが、現場はどんな雰囲気だったのでしょうか?

久保:いや、むしろ皆とても仲良しでした。和馬役のあっちゃん(岡田篤哉くん)も最初はすごい人見知りで距離があったんですが、次第に向うから手をつないでくれるようになって。ラストで手をつなぐシーンもすごいリアルに撮影できました。

【次ページ】本編同様、オーディションでは泣けなかった?

About the author

好きなジャンルはSF、特にファンタジー映画。そのきっかけとなった『ロード・オブ・ザ・リング』は筋金入りのオタクで、大学時代は卒論にするほど。

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