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【ネタバレ】『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』エンディング解説 ─ 選択の意味、新たな疑問、続編の可能性

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム
©2021 CTMG. © & ™ 2021 MARVEL. All Rights Reserved.

この記事には、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』』の極めて重大なネタバレが含まれています。必ず映画をご覧になってからお楽しみください。

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム
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“親愛なる隣人”へ

MCU版のスパイダーマン/ピーター・パーカーは、その初登場から従来の実写映画版スパイダーマンとは大きく異なった。アイアンマン/トニー・スタークに見出され、初っ端からアベンジャーズの分裂に巻き込まれたかと思えば、スターク・インダストリーズの技術の恩恵を受け、ときには周りのスーパーヒーローの助けも借りることができた。ピーターにとって大切な人々であるMJやネッド、メイおばさんは、スパイダーマンの正体が自分であることを知り、彼の冒険をサポートしてくれる。

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しかし『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の結末で、ピーターはそれらのすべてを失うことを選ぶ。他のユニバースから現れたヴィランが暴走してマルチバースの裂け目が広がる中、世界の危機を回避するため、ピーターは“世界中の人々が自分を忘れる”という呪文をドクター・ストレンジに頼むのだ。すべてが終わった後、ピーターはMJやネッドと再会するため、三人で通ったドーナツショップを再び訪れる。しかし、“その後”の穏やかな生活を送っているふたりを見て、ピーターはMJやネッドと過ごす日々を諦めるのだった。小さな部屋を借り、スパイダーマンのスーツを縫い、無線の信号を拾って、ピーターは街の平和を守るべく、“親愛なる隣人”としてニューヨークの空へと跳ぶ。

「ここで物語を終わらせるつもりでした。続編があるかどうかはともかく、この物語を終わらせること、これが最高だと思える形で物語を語ることしか僕たちにはできなかった」語るのは、脚本家のひとりであるエリック・ソマーズだ。今回のスパイダーマン/ピーター・パーカーの物語がこのような形で幕を閉じることは、製作チームにとっては早くから決まっていたことなのだろう。ソマーズとタッグを組んだクリス・マッケナも、「こういう形で物語を終えるのなら、これこそふさわしいという結末になった」と力を込める。

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム
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『スパイダーマン:ホームカミング』(2017)『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019)は、ともに続編の展開を期待させる印象的な結末(クリフハンガー)で幕を閉じていた。しかし、製作チームによる今回の目標は「クリフハンガーで終わったように感じさせない、満足のいく物語になっているかどうか」。物語の幕を閉じた今、マッケナはMCU版ピーター・パーカーの物語をこう分析する。

「(本作の結末で)ピーターは犠牲を払いました。彼をめぐるマーベル映画は、すべて“ヒーローとは何か、スパイダーマンとは何か、ピーター・パーカーとはどういう人間か”を描いてきたのだし、どのように(ヒーローと私生活の)バランスを取るのか、どちらもやり遂げるのか、ということが問題でした。前作のラストで、彼はすべてを手に入れたかと思いきや、すべてを剥ぎ取られました。今回(ピーターは)より成熟するのです。なぜなら、ドクター・ストレンジも“君はすべてを手に入れようとしているが、すべては手に入らない。選択しなければならない”と言う。その一方、グリーンゴブリンは“君は神だ、すべてを手に入れることはできる、選択しようなんてやめろ”と言うわけですが。

確かなことは、ピーターは愛する人たちを危険にさらせないということ。ピーターは(MJやネッドを)本当に愛しているからこそ、彼らの日常には加わることができない。今の彼はそのことを理解しています。彼はすべてを打ち明けてMJとネッドを取り戻し、ドクター・ストレンジのサンクタム・サンクトラムに行き、彼らにすべてを納得させ、自分の望みをすべて叶えることもできました。けれども彼は、そちらの道を選ばなかったのです。」

ここでマッケナが言及するのが、ピーターを育てたメイおばさんの存在だ。「メイが育てたような人間になるためには、ピーターは犠牲を払わなければいけないし、そこには彼の負うべき責任がある」と述べ、メイの死こそがピーターにとってのターニングポイントだと強調するのである。「メイの死は、彼がピーター・パーカーであること、そしてスパイダーマンであることの意味をまるで変えてしまったのです」。

The Wrapにて、マッケナは「振り返ってみれば、これは三つの物語を通じたオリジン・ストーリーだった」とも言っている。「ピーター・パーカーから余分なものを取り除き、名もなき人間になり、富豪の支えもなく、能力の意味と責任を知り、家賃の払い方を考えなくてはいけない。本当に納得のいく、非常にいい結末だと僕は思います」。

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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