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『スパイダーマン:ホームカミング』初期脚本、悪役バルチャーは教師設定だった ─ ベンおじさんの死、きちんと語るアイデアも

スパイダーマン:ホームカミング
©Marvel Studios 2017. ©2017 CTMG. All Rights Reserved.

映画スパイダーマン:ホームカミングは、マーベル・シネマティック・ユニバースに『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)で初登場した、“親愛なる隣人”スパイダーマンの初めての単独映画だ。トビー・マグワイアが『スパイダーマン』3部作で、アンドリュー・ガーフィールドが『アメイジング・スパイダーマン』2部作で演じてきたスパイダーマンの物語とは大きく異なるアプローチが本作の大きな魅力となっている。

いかにしてコミックに忠実に、しかし本作オリジナルのストーリーを編み出すのか。脚本家のジョナサン・ゴールドスタイン&ジョン・フランシス・デイリーは、脚本作業の中で試行錯誤を繰り返しながら物語を固めていったことを明かしている。本記事では、残念ながら完成版では見送られたいくつかのアイデアをご紹介したい。

ベンおじさんの死、本編で語るアイデアがあった

『スパイダーマン:ホームカミング』が、過去の実写映画版『スパイダーマン』『アメイジング・スパイダーマン』と大きく異なるのは、スパイダーマンのオリジン・ストーリーである“ベンおじさんの死”をいっさい描写しなかったところにある。コミックのピーター・パーカー/スパイダーマンは、クモに咬まれたことでスパイダーマンとしての能力を得たピーターが活躍していく中で、ある日ひとりの強盗を見逃す。ところがピーターは、その強盗が愛するベンおじさんを殺したことを知るのだった。自分の慢心によって家族を失ったピーターは、ベンの残した「大いなる力には、大いなる責任が伴う」という言葉の意味を知る……。

しかし前述の通り、『ホームカミング』にベンおじさんは登場しておらず、その死もわずかに示唆される程度にとどまった。劇中ではピーターとネッドによって、かつてメイおばさんが「つらい思いをした」ということが語られるのみ。予備知識がなければ、それがベンの死を指していることすら気づけないだろう。

スパイダーマン:ホームカミング
©Marvel Studios 2017. ©2017 CTMG. All Rights Reserved.

Entertainment Weeklyでは、脚本家チームが“ベンおじさんの死”をどう扱うかについて真剣に検討していたことが明かされている。

「メイがベンについて直接語るシーンを入れるかどうか、という話し合いはありました。ピーターがホームカミングの準備をしている時、メイがピーターに衣裳を渡すんですが、その衣裳は全てベンおじさんのもので…という場面です。良いシーンでしたね。だけど、ピーターの物語から話が逸れてしまうことも分かっていました。誰かの死を描くのなら、雑に扱うことはしたくなかったんです。」

『スパイダーマン:ホームカミング』というタイトルの通り、本作のストーリーでは「ホームカミング」、高校生たちのパーティーが大きな役割を担っている。そこにベンおじさんを絡ませるのは秀逸なアイデアにも思えるが、脚本の本筋にはうまくマッチしないと判断されたのだろう。

スパイダーマン:ホームカミング
©Marvel Studios 2017. ©2017 CTMG. All Rights Reserved.

ちなみにジョナサン・ゴールドスタインによれば、ベンおじさん&メイおばさんに関連するものとして、メイおばさんがデートに出かけるシーンを入れようとも考えていたそうだ。ジョナサンいわく「クールなおばさんがいいと思っていた」のだとか。

初期の脚本には、メイが男とデートする場面を入れていたんです。ピーターともやりすぎなくらいフランクな関係性で。今回は実現しませんでしたが、続編では彼女にボーイフレンドがいるということもありえますよ。悲しみに沈む未亡人じゃなくてもいいんです。」

さて、その結果は……続編『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』で確かめてほしい。

悪役バルチャー、教師設定もあった

『スパイダーマン:ホームカミング』では、ヴィランのエイドリアン・トゥームス/バルチャーにも異なる設定が検討されていたようだ。脚本家チームは、コミックから挙げられた約40の候補からバルチャーを選択。しかし、本作に登場するバルチャーの造形はコミックとは大きく異なる。そこには、トゥームス/バルチャーを「極端な悪役にしたくない」という思い、そして本作が高校生の青春コメディでもあるという側面の難しさがあったという。

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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