『ブレイド』ウェズリー・スナイプス、映画『ブラックパンサー』を「1000%支持」 ― 1990年代に映画化を進めていた過去も

コミック・ファンには映画『ブレイド』シリーズでおなじみの俳優ウェズリー・スナイプスが、マーベル・シネマティック・ユニバース最新作『ブラックパンサー』に絶賛の声を送った。
実はウェズリーは、1990年代にマーベルと交渉して、コミック「ブラックパンサー」の映画化を構想していた人物だ。残念ながら実現には至らなかったものの、その動きが『ブレイド』に結びついたという過去がある。

当時、ウェズリーは「ブラックパンサー」をどのように映画化しようとしていたのか。そしてチャドウィック・ボーズマンが演じる『ブラックパンサー』をどのように観たのか? 米The Hollywood Reporter誌にて明かされている。

ウェズリー版『ブラックパンサー』、なぜ実現しなかったのか

ウェズリーがコミック「ブラックパンサー」を映画化しようと考えた理由、それはひとえに、ステレオタイプではないアフリカの姿に強く惹かれたからだったという。当時、映画に登場するアフリカは、ほとんどが珍しい動物が住む、荒野の広がる土地というイメージで描かれていた。そんな中、ウェズリーはその美しさや歴史をきちんと見せたいと考えたそうだ。

「ブラックパンサーが魅力的だったのは、彼が気高い人間だったから。アフリカ人やアフリカの歴史、偉大なる王国の、ステレオタイプな表現や描写に対するアンチテーゼになっていたからです。文化的、社会的に有意義だったんですよ。かつてない黒人のコミュニティ、白人のコミュニティが(コミックの中に)存在していました。
多くの人々は、アフリカの帝国や王族に輝かしい時代があったことを知りませんよね。マンサ・ムーサ(編注:西アフリカで栄えたマリ帝国の9代国王)や、現代の経済に比べても一番裕福な人々がいたわけです。とても興味深いですよね。だから(ワカンダ王国の)進歩したテクノロジーが大好きなんです。すごく先進的な考え方だと思いましたね。」

ウェズリーは“レジェンド”スタン・リーの支持を受けながら、映画化のプロジェクトを始動させている。しかしその当時、「ブラックパンサー」とはマーベル・コミックではなく、1960年代の米国で黒人をめぐる人権運動と闘争を実施していた政治組織「ブラックパンサー党」だと思われることが多かったという。

コロンビア・ピクチャーズのもと、ウェズリーは脚本家と監督を探すことになった。有望な若手監督として名前が挙がったのは、『黒豹のバラード』(1993)や、のちに前述のブラックパンサー党を描いた映画『パンサー』(1995)を撮ることになるマリオ・ヴァン・ピーブルズ、『ボーイズ’ン・ザ・フッド』(1991)のジョン・シングルトン。
ウェズリーによれば、ピーブルズとの話し合いは結局行われなかったそうだが、シングルトンとの間では「ブラックパンサー」の映画化をめぐる見解が分かれたという。

「僕のアイデアを彼に伝えました。今のバージョン(2018年『ブラックパンサー』)に近いアイデアでしたよ。アフリカに科学技術の進歩した社会がひそんでいて、ヴィブラニウムが特殊な場所に隠されているんだ、と。そしたらジョンが、“よし、そうだ! ブラックパンサーの精神が宿っている男がいて、息子を(人権活動家の)組織に入れようとする。でも二人は衝突するんだよ。なぜなら彼は政治的に正しいことがしたいんだけど、息子はバカになりたいからだ”って言うんです(笑)。」

この時、シングルトンは「ブラックパンサー」の構想を聞いて、人権運動と作品を絡めたいと考えていた。しかしウェズリーが映画にしたかったのは、科学技術の進歩した世界であり、ステレオタイプな描写とは対極にある、美しく輝かしいアフリカの姿だったのである。もちろん話し合いがまとまることはなかったようだ。

「ジョンのことは大好きですけど、あのまま進まなくて本当に良かったと思います。こんなに豊かなプロジェクトを、間違った形にしてしまっていたでしょうからね。」

なお、このとき脚本を執筆していたのは『マッドマックス2』(1981)や『マッドマックス/サンダードーム』(1985)のテリー・ヘイズだった。当時のストーリーは、ワカンダで激しい戦闘が発生したことをきっかけに、赤ん坊ティ・チャラが脱出のためにカゴに入れて川へ流されるところから始まるというもの。数年後、別の土地で成長したティ・チャラは、エレベーターで突然の襲撃を受けるのだという。この脚本は非常に完成度が高かったようで、マーベル側も非常に喜んでいたそうだ。

しかし、ウェズリーの健闘もむなしく、「ブラックパンサー」の映画化は頓挫してしまう。

「最終的に、脚本と監督の正しい組み合わせが見つからなかったんです。そして当時は、考えだけが先へ進んでいて、コミックに描かれたものを映画にする技術はまだありませんでした。」

なにせティ・チャラ/ブラックパンサーを演じるつもりだったウェズリーは、そのコスチュームを、CGはおろか猫耳付きのレオタードにしようと考えていたというのだ。きちんとヒーローの体型を見せるためのアイデアだったそうで、彼は「当時はレオタード以外は考えられませんでしたね。僕はダンサー出身だから問題はなかったですよ」と語っている。

2018年『ブラックパンサー』への想い

ウェズリーによる「ブラックパンサー」映画化計画は、のちに『ブレイド』へと企画をスライドすることで、自身が主演するヒーロー映画のプロジェクトとしては実現を果たしている。同作がヒーロー映画史に与えたインパクトを考えれば、その意義は十分だったといえるだろう。

それから約四半世紀の経った現在、マーベル・シネマティック・ユニバースで実現した『ブラックパンサー』を彼はどう観たのだろうか。ウェズリーは「僕は関わっていませんが、1000%支持しますよ。この作品が、変化のきっかけや、新しい扉や可能性を開くことに繋がると心から信じているんです」と述べているほか、米SLATE誌では以下のように語ってもいる。

「興奮しました、という言葉は正確ではありませんね。圧倒されて、大喜びして、すごく驚きました。僕はもう夢中ですよ。この映画がどうなるのか、どんなインパクトを与えるのかがわかるんです。この社会だけでなく、(映画)業界や、新しいリーダーたちの心にどう影響するのかがね。お金のことを考えるのは終わりです。間違いなく、新たな可能性を開くことになります。土の中にたくさん種をまくようなもので、これから成長していくんですよ。」

またウェズリーは、デジタル技術を駆使する新しい世代が『ブラックパンサー』を生んだことにも非常に肯定的だ。「映画化について話していた20年以上前には、こんな『ブラックパンサー』は想像することさえできませんでしたね。」

映画『ブラックパンサー』は2018年3月1日より全国ロードショー。

Sources: https://www.hollywoodreporter.com/heat-vision/black-panther-wesley-snipes-reveals-untold-story-behind-90s-film-1078868
https://slate.com/culture/2018/02/wesley-snipes-on-blade-black-panther-and-black-culture-in-hollywood.html
Eyecatch Image:
[Left]Photo by Nicogenin https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Wsley_Snipes_2009_color.jpg
[Right]©THE RIVER
Remixed by THE RIVER

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THE RIVER編集長。ライター、メディアの運営や映画などのプロモーション企画を行っています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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