【特集】トバイアス・ベケット&ドライデン・ヴォス ― 『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』裏社会を生きる二人の男

「スター・ウォーズ」シリーズのスピンオフ映画第2弾『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』は“若者たちの物語”だ。若きハン・ソロの冒険を描いた本作には、同じく若かりし頃のランド・カルリジアン、約190歳という(少しだけ)若いチューバッカが登場するほか、ヒロインのキーラもハン・ソロとは幼なじみだ。
そんな若者たちの活劇の中で、まるで「重し」のように存在する登場人物がいる。ハン・ソロの師匠となる悪党トバイアス・ベケット、紳士的だが冷酷なギャングのドライデン・ヴォスだ。
本作を執筆したジョン・カスダンは、物語の舞台となる“銀河の裏社会”について「ヒエラルキーはない。力のある者と、生き残るためにあがく者がいるだけ」と述べている。そんな厳しい世界を体現する二人の大人に、ウディ・ハレルソン&ポール・ベタニーという名優、そして脚本家や監督たちはどう迫ったのだろうか。
https://www.youtube.com/watch?v=Hw6gUFsUtVQ
トバイアス・ベケット(ウディ・ハレルソン)
『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』の脚本を手がけたローレンス&ジョン・カスダンは、ハン・ソロを導く師匠となるトバイアス・ベケットというキャラクターについて、脚本の執筆前にロバート・ルイス・スティーヴンソンの小説『宝島』を参考にしたことを明かしている。海賊ジョン・シルバーと少年ジム・ホーキンズの師弟関係を、本作におけるハンとトバイアスの関係のモデルにしたというのだ。
ロン・ハワード監督は、トバイアスという男を「非常にカリスマ的な人物」だと語る。「彼は誰よりもハンという人間を形づくっていくんです。無秩序な時間の中でも、道徳的な規範を受け入れなければならないのだとハンが気づくように」。また脚本家のローレンスも、トバイアスを「乱暴な犯罪者」でありながら「非常に人間味のある人物」だと話している……。
このキーパーソンを紐解く上で重要なのは、ウディ・ハレルソンというキャスティングだろう。
1961年生まれのウディは、1980年代中盤からテレビドラマでキャリアを本格的にスタート。クセのある役柄を巧みにこなして数多の映画賞に輝いている。近年は『メッセンジャー』(2009)やドラマ『TRUE DETECTIVE』(2014-)、『スリー・ビルボード』(2017)などで高く評価されるかたわら、『ハンガー・ゲーム』シリーズや『猿の惑星:聖戦記』(2017)、『ヴェノム』(2018)とジャンル映画への出演も多い。
「(トバイアスは)悪党ですが、すごく良く書いてもらっていると思います。気をつけなきゃいけなかったのは、スター・ウォーズには熱狂的なファンが多いということくらいでしたね。ローレンスとジョンは本当に良い脚本を書いてくれましたし、ロンも彼なりの仕事をしてくれた。スター・ウォーズに出られて最高の気分です、素晴らしいことですよ。」
ドライデン・ヴォス(ポール・ベタニー)
“悪党”と形容するのがふさわしいトバイアス・ベケットに対して、冷酷なギャングとして登場するのが、裏社会に君臨する男ドライデン・ヴォスだ。ジョン・カスダンは「二人はちょっと違うところにいるんですよね」と語り、映画『レイヤー・ケーキ』(2004)に登場するエディ・テンプル(マイケル・ガンボン)や『ミラーズ・クロッシング』のレオ(アルバート・フィニー)を例に挙げている。
本作が公開される以前、ドライデンというキャラクターについて詳細はほぼ明かされなかった。そんな中、ジョンはドライデンを「やや先進的な人物」だと述べ、その執筆意図をこう語っているのである。
「気品があって、自信家で、そして本当に危険な人物。そういうキャラクターが面白いと思いました。彼は(裏社会に)居場所を構えている。この映画に登場する誰よりも、犯罪の世界に深く入り込んでいるんですよ。」
実は制作当初、ドライデンを演じる予定だったのは『それでも夜は明ける』(2013)などに出演する俳優マイケル・ケネス・ウィリアムズだった。しかし『ハン・ソロ』の撮影中盤である2017年6月、当時監督を務めていたフィル・ロード&クリス・ミラーが降板。後任を務めるロン・ハワード監督によって大幅な再撮影が行われることとなったが、マイケルはスケジュールの都合で参加が叶わず、そこで新たに起用されたのが『アベンジャーズ』シリーズで知られるポール・ベタニーだったのだ。
- <
- 1
- 2