Menu
(0)

Search

【特集】新ドロイド「L3-37」ふたつの“史上初”とは ― 『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』演じたのは最注目のクリエイター

ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー
© 2018 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

映画『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』は、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)につづく「スター・ウォーズ」シリーズのスピンオフ映画第2弾だ。両作に共通するのは、いずれも『エピソード4/新たなる希望』(1977)の前日譚であり、それでいて『エピソード3/シスの復讐』(2005)よりも後の出来事を描いているということ。そして、それまでの作品には登場しなかった新しいドロイドが登場するということだ。

本作『ハン・ソロ』に登場するのは、ふたつの“史上初”を併せ持つドロイド「L3-37」。ランド・カルリジアンのパートナーとして登場するこのキャラクターをモーション・キャプチャーで演じたのは、イギリスの劇作家からキャリアをスタートさせたフィービー・ウォーラー・ブリッジだ。本記事では、このドロイドに秘められた作り手たちの思いを各証言から紐解いてみることにしよう。

https://www.youtube.com/watch?v=xXbX75XKyzs

自分で自分を作り出した、史上初の女性ドロイド

『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』で脚本を執筆したジョン・カスダンは、L3-37という新ドロイドを考案にするにあたって、「これまでの映画に出てきたドロイドとは完璧に異なるキャラクターにしたかった。絶対に女性にしたかったんです」と語る。「スター・ウォーズ」の映画シリーズにおいて、女性ドロイドは史上初だ。しかしそれだけでは“完璧に異なるドロイド”にはならない。そこで脚本家チームが考えたのは、ジョンがいうところの「完全なる個人」としてのドロイドだった。

ランド・カルリジアン役のドナルド・グローバーは、ランドとL3-37は「二人とも自力でやってきた」と述べる。ランドが“自力でやってきた”のは、彼が登場した『帝国の逆襲』(1980)や『ジェダイの帰還』(1983)などからも明らかだろう。
しかしL3-37の場合、“自力でやってきた”という言葉には少々違った意味が伴うのだ。L3-37役のフィービー・ウォーラー・ブリッジは、その特徴をこう説明する。

「彼女は自分で自分を作ったんです。(ほかのドロイドの)いろんな部分を繋ぎ合わせて自分自身を作った、唯一無二の存在なんですよね。」

脚本家のジョンは、L3-37を「雑種のようなもの」とも形容する。その特徴はデザインを見ても明らかで、頭部はBBユニット、胸部や腕はR2ユニット/アストロメク・ドロイドを思わせるのだ。そもそも「L3-37」という名前は、英単語のアルファベットを別の記号や数字に置き換える表記方法「LEET」(たとえば“Luke”は“1uke”と書き換えられる)からきているという。それ自体が、いろんなドロイドの部品で構成されているという特徴を象徴しているだろう。

いささか奇妙な新ドロイドの内面について、フィービーは「L3-37は私にとっても本当に刺激的なキャラクターでした」と話す。その性格については、「積極的で楽観的。怖いもの知らずで、誰にも検閲されていなくて、すごく愉快なんです」と説明するのだ。

「(スター・ウォーズの)ドロイドにはそれぞれユニークな特徴がありますが、彼女には自分がドロイドであることを超えた課題があって、それは珍しいことだと思います。反抗的で、変化を求めていて、自分には大きな役割があると感じている。自分の信条があるんですよ。椅子に深く腰かけて、足を組んで、気取った態度を取っているようで…彼女の物語は、すごく優れていると思いますね。」

注目のクリエイター、フィービー・ウォーラー・ブリッジ

フィービー・ウォーラー・ブリッジ
(C) Isabelle Adam https://www.flickr.com/photos/diamondgeyser/8190872198/

1985年生まれのフィービー・ウォーラー・ブリッジは、2009年から主に舞台やテレビドラマの世界で活動を開始。女優のみならず劇作家としても卓越した才能を発揮してきたフィービーは、2016年のドラマ『クラッシング』『フリーバッグ』で脚本・主演を兼任。『フリーバッグ』では脚本家・女優の両方で複数の賞に輝いた(2018年6月29日現在、『クラッシング』はNetflix、『フリーバッグ』はAmazonプライム・ビデオにて配信中)。すなわちフィービーは、現在のドラマ界で最も注目すべきクリエイターの一人なのである。

劇中でフィービーがタッグを組んだドナルド・グローバーは、脚本・監督・主演などを務めるドラマ『アトランタ』(2016-)が高く評価された、同じく注目のクリエイターの一人。『ハン・ソロ』で実現したこの組み合わせは、実は奇跡的なコラボレーションなのである。実はドナルドはフィービーの大ファンだったそうで、「映画で共演できるなんて、望むことすら考えられなかったほどありがたいこと」だと述べている。
ちなみにフィービーの才能は、「スター・ウォーズ」シリーズの重鎮であり、本作の脚本を息子ジョンと共同で執筆したローレンス・カスダンも絶賛するほどだ。

「フィービー自身がすごく面白い人なので、彼女が演じることの効果は素晴らしいですよ。キャラクターがものすごいCGで描かれていても、彼女のユーモアや身体性ははっきり伝わってきます。フィービーが登場したら、すぐに大好きになってしまうと思いますね。」

そんなフィービーだが、なんと本作のオーディションを受けた時点で「スター・ウォーズ」を観たことがなく、渡されたシナリオに書かれていた「ドロイド」が何なのかがわからなかったという。そこでオーディションで人間として演じてみたところ、「いいですね、じゃあドロイドっぽく演じてみてもらえますか?」との指示を受け、「ドロイドっぽいってどんな感じですか?」と聞き返したという強者だ。しかしこのエピソードだけでも、なぜ彼女がL3-37役に選ばれたかがわかるような……。

映画『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』は2018年6月29日より全国の映画館にて公開中

『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』公式サイト:https://starwars.disney.co.jp/movie/hansolo.html

Sources: EW(1, 2), SR, Syfy, The Graham Norton Show

Writer

アバター画像
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

Ranking

Daily

Weekly

Monthly