【レビュー】『ソニック・ザ・ムービー』子供たちの新たなヒーロー、物足りなさは続編に期待

映画館は「ソーシャル・ディスタンス」を保つため隔席となっているが、『ソニック・ザ・ムービー』は久しぶりに大スクリーンでの映画鑑賞を親子で楽しみたい時にはもってこいの1作だ。ただし、大人の観客にとっては少々物足りないかもしれない。
SEGAが誇る大人気キャラクターの映画化。1991年にデビューして以来、多くのゲームファンに親しまれている。新作ゲームやアニメが今もたくさんリリースされているので、ほとんど全ての世代に知られているだろう。そんなスーパースターの初の実写化とあって、デザインをめぐる紆余曲折もあった。
超音速のハリネズミ、お待たせして劇場到着
2019年5月に初の映像が公開された頃、ソニックはもっとヒトっぽいデザインで、これが「気持ち悪い」「ゲームのデザインと全然違う」と大ブーイング。ついにはデザインの修正を行うとして、米公開予定を延期してやり直し作業に入っていた。
11月にようやく現在の新デザインが公開され、2020年2月に公開されると、苦労の甲斐もあって大ヒット。なんと『名探偵ピカチュウ』(2019)の記録を超え、ゲーム原作映画としては史上最高のオープニング成績を記録したのだ。
日本では3月27日の公開を予定していたが、新型コロナの影響で6月26日に延期になっていた。デザイン修正前は2019年12月を予定していたから、実に半年遅れての劇場到着となったのである。

この映画でのソニックは、別の惑星からやってきたエイリアンという設定。モンタナ州グリーンヒルズの小さな田舎町に棲み着いたソニックは、人間に見つからないようこっそりと暮らしている。ジェームズ・マースデンが演じる保安官のトムを一方的に気に入っていて、彼の生活を覗き見してもいる。
デザイン修正のグッド&バッド
デザイン修正前はヒトとハリネズミが不幸な事故で融合してしまったような容姿をしていたから、もしもそのまま公開されていたら、恐ろしく不気味なエイリアンにストーキングされる恐怖映画になっていただろう。可愛らしいデザインに生まれ変わったおかげで、人間社会に潜むソニックは無害なものに見えるし、孤独な生活を送る彼に同情してやることも出来るようになった。

一方、ソニックの見た目を幼くしたことで、今度はジェームズ・マースデンとのバランスを失っている。修正前のソニックは、その奇妙に長い手脚から、もう少し上の年齢のキャラクターに見えた。きっと、マースデンとソニックのバディ映画のように見せる狙いがあったのだろう。ところが、修正後のソニックは怖いもの知らずの12歳の少年のような印象。40代中盤のマースデンが、このあどけない生き物とつるんでいる絵面はちょっと不釣り合いだ。

おまけにマースデン演じるトムは、慣れ親しんだ田舎の地元に留まるか、刺激を求めてサンフランシスコの都会に移るかと悩んでいる。幼いソニックと一緒に行動しているせいで、なぜこの中年男性は、未だに進路が決まらない学生みたいに悩んでいるのかという不自然さが目立つようになっている。『ワイルド・スピード』シリーズを手掛けるプロデューサーのニール・H・モリッツが、大人の相棒に車を運転させてスピーディーなチェイスシーンを作りたかったのではないかと勘ぐりたくもなるが、始めからソニックのデザインを現在の方向性にしていたなら、相棒役はもっと若いキャラクターにしていたことだろう。『名探偵ピカチュウ』のティムや、むしろ『E.T.』のエリオットくらいの子供にしても良かったかもしれない。

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