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【レビュー】『ソニック・ザ・ムービー』子供たちの新たなヒーロー、物足りなさは続編に期待

ソニック・ザ・ムービー
©2019 PARAMOUNT PICTURES AND SEGA OF AMERICA, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

映画館は「ソーシャル・ディスタンス」を保つため隔席となっているが、ソニック・ザ・ムービーは久しぶりに大スクリーンでの映画鑑賞を親子で楽しみたい時にはもってこいの1作だ。ただし、大人の観客にとっては少々物足りないかもしれない。

SEGAが誇る大人気キャラクターの映画化。1991年にデビューして以来、多くのゲームファンに親しまれている。新作ゲームやアニメが今もたくさんリリースされているので、ほとんど全ての世代に知られているだろう。そんなスーパースターの初の実写化とあって、デザインをめぐる紆余曲折もあった。

超音速のハリネズミ、お待たせして劇場到着

2019年5月に初の映像が公開された頃、ソニックはもっとヒトっぽいデザインで、これが「気持ち悪い」「ゲームのデザインと全然違う」と大ブーイング。ついにはデザインの修正を行うとして、米公開予定を延期してやり直し作業に入っていた。

11月にようやく現在の新デザインが公開され、2020年2月に公開されると、苦労の甲斐もあって大ヒット。なんと『名探偵ピカチュウ』(2019)の記録を超え、ゲーム原作映画としては史上最高のオープニング成績を記録したのだ。

日本では3月27日の公開を予定していたが、新型コロナの影響で6月26日に延期になっていた。デザイン修正前は2019年12月を予定していたから、実に半年遅れての劇場到着となったのである。

ソニック・ザ・ムービー
©2019 PARAMOUNT PICTURES AND SEGA OF AMERICA, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

この映画でのソニックは、別の惑星からやってきたエイリアンという設定。モンタナ州グリーンヒルズの小さな田舎町に棲み着いたソニックは、人間に見つからないようこっそりと暮らしている。ジェームズ・マースデンが演じる保安官のトムを一方的に気に入っていて、彼の生活を覗き見してもいる。

デザイン修正のグッド&バッド

デザイン修正前はヒトとハリネズミが不幸な事故で融合してしまったような容姿をしていたから、もしもそのまま公開されていたら、恐ろしく不気味なエイリアンにストーキングされる恐怖映画になっていただろう。可愛らしいデザインに生まれ変わったおかげで、人間社会に潜むソニックは無害なものに見えるし、孤独な生活を送る彼に同情してやることも出来るようになった。

ソニック・ザ・ムービー
©2019 PARAMOUNT PICTURES AND SEGA OF AMERICA, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

一方、ソニックの見た目を幼くしたことで、今度はジェームズ・マースデンとのバランスを失っている。修正前のソニックは、その奇妙に長い手脚から、もう少し上の年齢のキャラクターに見えた。きっと、マースデンとソニックのバディ映画のように見せる狙いがあったのだろう。ところが、修正後のソニックは怖いもの知らずの12歳の少年のような印象。40代中盤のマースデンが、このあどけない生き物とつるんでいる絵面はちょっと不釣り合いだ。

ソニック・ザ・ムービー
©2019 PARAMOUNT PICTURES AND SEGA OF AMERICA, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

おまけにマースデン演じるトムは、慣れ親しんだ田舎の地元に留まるか、刺激を求めてサンフランシスコの都会に移るかと悩んでいる。幼いソニックと一緒に行動しているせいで、なぜこの中年男性は、未だに進路が決まらない学生みたいに悩んでいるのかという不自然さが目立つようになっている。『ワイルド・スピード』シリーズを手掛けるプロデューサーのニール・H・モリッツが、大人の相棒に車を運転させてスピーディーなチェイスシーンを作りたかったのではないかと勘ぐりたくもなるが、始めからソニックのデザインを現在の方向性にしていたなら、相棒役はもっと若いキャラクターにしていたことだろう。『名探偵ピカチュウ』のティムや、むしろ『E.T.』のエリオットくらいの子供にしても良かったかもしれない。

ソニック・ザ・ムービー
©2019 PARAMOUNT PICTURES AND SEGA OF AMERICA, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

高速アクションの既視感はジム・キャリーの魅力がカバー

ソニックの超音速アクションシーンは目にも楽しく、子供たちはきっと喜ぶだろう。ただ、既視感がある映像ばかりなのも事実。自分以外の世界が止まったかのように1人だけ動き回る演出は『X-MEN』シリーズのクイックシルバーそのものだし、閃光を描きながら都市で追いかけっこをする映像はドラマ「THE FLASH/フラッシュ」のよう。ゲームでお馴染みの黄金のリングは、映画では別空間にワープできるポータルとして登場するが、その様子は『ドクター・ストレンジ』のまま。しっちゃかめっちゃか大乱闘のシーンは『キングスマン』で見覚えがある。ソニックは「キアヌは地球の宝だ」とか「ヴィン・ディーゼルみたいに…」など、ポップカルチャーの小ネタで軽口を叩くが、切れ味はデッドプールに軍配が上がるだろう。(良く言えば、様々な作品の良いとこ取り、と加えておこう。)

大きな加点要因になってくれているのは、ゲームでお馴染みのヴィラン、ドクター・ロボトニックを演じるジム・キャリー。近年俳優活動をセーブしていたキャリーが、この尊大なマッド・サイエンティストを『マスク』時代のキレで演じている。日本語吹替の山寺宏一もノリノリだ。

ソニック・ザ・ムービー
©2019 PARAMOUNT PICTURES AND SEGA OF AMERICA, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

ゲームでは「エッグマン」としてお馴染みだが、映画では主にロボトニックと呼ばれていて、ソニックが引き起こした大停電を調査すべく政府から派遣された天才科学者という設定。出自も見た目もアレンジが加わっているが、キャリーのコミカルで素晴らしいパフォーマンスの前では不満を言う気もなくなる。

ロボトニックは、怠慢な人間よりも、言われたとおりに休まず働く機械を愛し、我が子代わりのドローン軍を率いてソニックたちを追い詰める。地球で一番頭が良い代わりに、地球で一番のエゴイストだ。仲間思いのソニックと相対するキャラクターで、この2人の追走劇と対決が見どころとなる。

基本的に、科学の無法者ロボトニックと、宇宙からやってきた風来坊ソニックが対決する西部劇のフォーマットで、ソニックたちの友情と決闘を描いている。登場人物も多くなく、展開もスピーディーだ。人間社会では明らかに異型のソニックだが、彼を見て保健所に電話する住民はひとりもいない。そればかりか、ソニックはアイランドキッチンの卓上に寝かせられるから、この街の人々の衛生観念は独特だ。

ソニック・ザ・ムービー
©2019 PARAMOUNT PICTURES AND SEGA OF AMERICA, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

デザインを生まれ変わらせた新しいソニックはスクリーンによく映えて、子供たちのハートを青い閃光で貫いてくれるだろう。既に続編も決定しているから、物足りなかった部分は次回作に期待したい。新たなヒーロー誕生の瞬間に立ち会いながら、映画館復帰戦として久々の大スクリーンを楽しむのに最適。子供たち同士や、親子での鑑賞にオススメだ。

『ソニック・ザ・ムービー』は2020年6月26日(金)公開。

Writer

中谷 直登
中谷 直登Naoto Nakatani

お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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