感情移入と違和感の連続に目が離せない『園田という種目』レビュー【SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2016上映作品】
『園田という種目』あらすじ
園田が釈放された。大学時代の仲間たちは「園田を元気づけてやろう的な」会を開き、コールセンターの同僚たちは何も知らずに園田フィーバーに沸き立つ。仲間、同僚たちの、園田への思いは果たして…。
本当に台本があるのかと疑うような会話の応酬
長編作品を3部に構成した展開されるこの物語。とある罪を犯して逮捕され、そして釈放された園田という男を軸に、彼の俳優仲間、そして釈放後彼が就職したコールセンターの職場の仲間たちが、様々な群像劇を見せる。
その会話が、まるで台本がないかのような自然すぎる会話なのだ。
ただ、それは流れるような会話ではない。当事者たちのそれぞれ違う思惑がアンバランスに交錯し、すれ違い、衝突し、誤解や苛立ちが絶えないその様子は、まるで何気ない日常生活の一部を切り取っているかのようだ。
随所にモヤモヤとそして笑いを盛り込むその展開に、あなたはきっと目を離せない。
ギクシャクから結末へと向かう流れに、きっと息を飲む
そんなすれ違いに満ち満ちたストーリー展開が、第3部「園田八段」で一変する。今までどこか腑に落ちない感情を味わい続けていた観衆は、一気に静かな感動に包まれる。
あれだけ膨らみ続けた物語があれだけ綺麗にまとまるのかと感嘆してしまった。監督、スタッフ、そして出演者が作り上げた繊細な人間描写にきっとあなたも息を飲むだろう。
序盤とラストで登場人物たちへの印象が一変する。そんな人間の複雑で美しい様を楽しんでほしい。

『園田という種目』 (C)松田真子・ガノンフィルムズ