「他のキャラはどうでもいい、スパイダーマンだけ獲って来い」 ─ 米ソニー、かつてマーベル・ヒーローの映画化権を蹴っていた

話題の最新作『ブラックパンサー』(2018年3月1日日本公開)など快進撃止まらぬマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)。複数の作品が全て1つの世界観の中で繋がっており、キャラクターすべてが主役級の魅力を放つ「ユニバース構造」は、今でこそハリウッドでトレンドと化しつつあるが、紛れもなくMCUによる発明だ。

マーベル・エンターテイメント(2009年にウォルト・ディズニー・カンパニーが買収)が手がけるMCUだが、実は過去のある商談次第では現在の形の成功とは違った可能性があった。The Wall Street Journalが報じたところによると、かつて『スパイダーマン』のソニー・ピクチャーズがあらゆるマーベル・キャラクターの映画化権利を、好条件ながらも蹴っていたというのだ。

「他のマーベル・キャラクターなんてどうでもいい」

遡ること1998年。ソニー・ピクチャーズのヤイール・ランダウ氏に課せられた使命は、スパイダーマンの映画化権利を獲得すること。当時コミック業界のみでしか知られていなかたったマーベル・コミックは業績が振るっておらず、1997年には倒産、マーベル・エンターテインメントとして再稼働を始めたばかりのタイミングだった。マーベルの新たな経営責任者アイザック・パルムッターは、何とか自社の利益を獲得すべく、スパイダーマンに続く「2軍」のキャラクター──アイアンマン、ソー、アントマン、そしてブラックパンサーも含めた、数々のヒーローたちの映画化権もまとめて、2,500万ドルでの商談に打って出たのだった。

ソニー側のヤイール氏はこのオファーを一度持ち帰り、上司に相談。すると、返ってきた答えはこんなものだったという。

「他のマーベル・キャラクターなんてどうでもいい。とにかくスパイダーマンだけ獲って来い。」

こうしてソニー・ピクチャーズは、後のスーパー・スターらを見送りながら、スパイダーマンの映画化権のみを1,000万ドルで購入。マーベル側は、関連映画の興行収入から5%と、関連グッズの売り上げの半分をレベニューシェアで得るという商談にまとまった。

ソニー・ピクチャーズとMCU

その後の皮肉なエピソードは、よく知られた通りだ。ソニーは早速スパイダーマンの実写映画化に取り掛かり、サム・ライミ監督、トビー・マグワイア主演の『スパイダーマン』三部作を2002年、2004年、2007年に公開。全世界興行収入は合計約25億ドルの大ヒットシリーズとなった。その間にマーベル・スタジオも独自の映画シリーズ「マーベル・シネマティック・ユニバース」を展開。2008年の『アイアンマン』を皮切りに、一般認知度が決して高くなかったコミック・ヒーローを次々と人気キャラクターに仕立て、シリーズ作品を続々と公開。かつてソニー・ピクチャーズが見送ったヒーローたちの映画は『ブラックパンサー』までに17作が公開され、興行収入は総額135億ドルという怪物的なシリーズとなった。「ファンはまるで、お気に入りのテレビ番組の最新エピソードを観るためにTVをつけるくらいの感覚で、映画のチケットを購入してくれる」──MCUが絶対的な信頼を勝ち得た様を、The Wall Street Journalはこう表した。

 

これを尻目にソニー・ピクチャーズは、唯一手に入れていたスパイダーマンを2012年にリブート。『アメイジング・スパイダーマン』シリーズとして再び世に放ったものの思惑ほど振るわず、2014年の二作目をもって事実上の打ち切りとなってしまった。

スパイダーマンのウェブ・シューターは、もはやMCUを狙わざるを得なくなった。2016年のMCU作品『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』では、ソニー・ピクチャーズとマーベル・エンターテインメントがスパイダーマンの権利を分かつ形で合意。マーベル最大のスターが、ついにアベンジャーズらに合流を果たすこととなった。

スパイダーマン:ホームカミング

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先駆けて2014年夏、既にMCUの世界的成功で覇権を手にしていたマーベル・スタジオのケヴィン・ファイギ社長は、ソニー・ピクチャーズの共同会長エイミー・パスカル氏とランチ会合を果たす。ファイギ氏が「スパイダーマンの次回映画作を、マーベルで手がけたい」と打診すると、エイミー氏はムっとして、サンドイッチを投げつけて冗談交じりに「出ていって(get the f*** out)」と言い放ったという。

ソニー・ピクチャーズもめげていない。2018年12月には、スパイダーマンの宿敵として知られる『ヴェノム』をトム・ハーディ主演で映画化、続いて女性キャラクター・コンビのスピンオフ『シルバー&ブラック(原題:Silver & Black)』の映画化も進行中。こちらは、脚本家が決定したとの知らせが入ったばかりだ。

Source:https://www.wsj.com/articles/the-black-panther-movie-deal-that-didnt-get-made-1518703200

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THE RIVER編集長。ライター、メディアの運営や映画などのプロモーション企画を行っています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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