『ミスター・ガラス』結末はいかに作られたか ─ エンディング解説、シャマラン監督が明かす執筆秘話、そして次回作

『アンブレイカブル』(2000)と『スプリット』(2017)の“その後”を描く、M・ナイト・シャマラン監督の最新作『ミスター・ガラス』は、シャマラン監督らしいストーリーテリングの妙が大きな見どころとなる。3部作の締めくくりとなる物語の結末を、シャマラン監督はいつから構想し、どのようにこだわっていたのか? 監督らの証言をもとに本記事では解説していきたい。
この記事には、『ミスター・ガラス』の重大なネタバレが含まれています。必ず本編の鑑賞後にお読みいただきますよう、よろしくお願いいたします。
『ミスター・ガラス』ラストのおさらい
物語の終盤、フィラデルフィアで最も高いタワーの開業記念イベントを襲おうと試みるミスター・ガラス(サミュエル・L・ジャクソン)とビースト/ケヴィン(ジェームズ・マカヴォイ)を止めるため、デヴィッド・ダン(ブルース・ウィルス)は精神病院を抜け出す。デヴィッドとビーストは病院の外で対峙し、そのまま戦いへと突入するが、そこでデヴィッドの息子ジョセフ(スペンサー・トリート・クラーク)によって、デヴィッドが唯一の生存者となった「イーストレイル117号の事故」でケヴィンの父親が亡くなっていたことが明かされる。
この事故は、ミスター・ガラスがヒーローを探し出すために仕組んだもの。父の死が原因でケヴィンは母親からの虐待を受けつづけ、多重人格者となった。ビーストはケヴィンを苦しめた元凶であるミスター・ガラスの骨を砕き、致命傷を与える。
その後、ビーストはデヴィッドの弱点である“水”によってデヴィッドを追い詰めて衰弱させる。タワーに向かおうとしたビーストを引き留めたのは、かつてビーストが引き起こした誘拐事件唯一の生存者であるケイシー・クック(アニャ・テイラー=ジョイ)だった。ケイシーの必死の説得でケヴィンの人格が姿を現し、事態が収束したかと思いきや、突如謎の警備隊が発砲した銃弾がケヴィンの身体を貫いた。ケヴィンはケイシーの腕の中で絶命する。
同じ頃、デヴィッドも警備隊の手で溺死させられそうになっていた。そこにデヴィッド、ケヴィン、ミスター・ガラスを治療していた精神科医のエリー・ステイプル医師(サラ・ポールソン)が現れ、デヴィッドに「手を掴んで!」と呼びかける。デヴィッドが掴んだ瞬間、その脳裏に浮かんだのは、ある組織の集会だった。ステイプル医師も所属するこの組織は、特殊能力を持つ人々が存在することを隠すべく暗躍していたのだ。ケヴィンを殺害し、デヴィッドを殺そうとしている人物もその一員である。その事実を知った直後、デヴィッドはそのまま命を落としてしまう。ミスター・ガラスもまた、「これはヒーローのオリジン・ストーリーだ」と母親に語りながら息を引き取った。
こうして3人の特殊能力者を社会から抹殺したステイプル医師は活動の成果を組織に報告する。すべては組織の思惑通り…かと思われたが、ひょんなことから医師はミスター・ガラスの術中にはまっていたことを悟った。組織の存在に気づいていたミスター・ガラスは、病院の内外に設置されたカメラでデヴィッドとケヴィンの戦いの様子を記録。母親とジョセフ、ケイシーに録画映像を送っていたのだ。一連の映像はインターネットに流出し、物語は全世界がその映像を見て騒ぎ始めるところで幕を閉じる。
監督が明かす『ミスター・ガラス』結末の制作秘話
『アンブレイカブル』当時から構想されていた
『ミスター・ガラス』のエンディングは、実は『アンブレイカブル 』制作時からシャマラン監督の頭にあったという。「『結末はこうしたらいいかも』と言って笑っていました」と述べ、当時は実現するか分からないまま結末を思い描いていたことを明かした。また、この結末を実際に作り上げることについて「勇気があるかも分からなかったんです」と振り返っている。「でも作ることができて本当にうれしいですよ」。
しかしながら、完成版の結末は当初の構想とは異なる部分もあるという。ミスター・ガラスを演じたサミュエル・L・ジャクソンが英Digital Spyに伝えたところによると、「今日の社会情勢や世界で起きていること」が理由で変更を加える必要が生じたとか。変更の内容は明かされていないが、当初の構想とはどのように異なったのだろうか?
「物語が続かないことを理解してもらいたかった」
『ミスター・ガラス』の結末は、ひとつの映画の終わりであるだけでなく、『アンブレイカブル』『スプリット』と続いてきた3部作のフィナーレでもある。シャマラン監督は「ストーリーテラー、語り部として結末は重要です。つまり、決定的な結末にどう辿り着くのか。具体的に伝えたいことがあること、そして物語が続かないことを理解してもらいたかったんです」と、エンディングのこだわりを明かした。
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