『スター・トレック BEYOND』は「一番大変な仕事だった」 ─ 『ワイスピ』ジャスティン・リン監督、J・J・エイブラムスの無茶振りがすごい

「あれは今までで一番大変な仕事だった」──『ワイルド・スピード』シリーズのジャスティン・リン監督が、映画『スター・トレック BEYOND』(2016)の製作をこう振り返った。
『スター・トレック BEYOND』は、J・J・エイブラムスが製作を務める「ケルヴィン・タイムライン」の第3作。『スター・トレック』(2009)『スター・トレック イントゥ・ダークネス』(2013)を手がけたJ・Jは、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015)のために第3作を撮ることができず、代わりの監督を探すことになった。ポッドキャスト「Happy Sad Confused」にて、リン監督はオファーを受けた経緯を語っている。
「『TRUE DETECTIVE』の撮影をヴェンチュラ(カリフォルニア州)で進めていて、木曜日にJ・J・エイブラムスから電話がかかってきたんです。“ちょっと聞きたいんだけど、『スター・トレック』は好き?”と。僕が“父を一緒に観て育ったから、大切な作品ですよ”と言ったら、“なにか『スター・トレック』映画のアイデアはないかな”と。」
電話を受けたリンは、『スター・トレック』の新作はすでに撮影準備段階だと考えていた。しかし、J・Jは「中断しているんだ」と答え、それどころかリンに「なにかアイデアがあったら、月曜日にオフィスに来てほしい」と提案したという。
「木曜日から月曜日の間に、“究極の『スター・トレック』映画ってなんだ?”と考え、両親とディナーに行き、いろんなことを思い出して、それでJ・J・に『スター・トレック BEYOND』のアイデアを話しました。それが1月の終わりのこと。すると彼は、“素晴らしい、やろう。だけど6月には撮影を始めないと”って言う。しかし、まだ脚本も何もない。“(脚本の)ダグ・ユングは知ってる? 飛行機に乗ってサイモン・ペッグに会いに行ってほしい”と言われて、すぐにロンドンに飛びました。」
無茶振りに次ぐ無茶振りの連続である。話を聞いている司会者のジョシュ・ホロウィッツも、思わぬ苦笑いで首を横に振るほどだ。リンは「大変でした。一番大変な仕事だった」と漏らす。
「サイモンやダグとは今でも冗談にしているけれど、とんでもなかった。僕は3回、サイモンは4回投げ出したんです。お互いのこともよく知らなかったし……もちろんサイモン・ペッグとの仕事は夢のような機会だったけれど、彼は伝統的なプロセスを大切にするほうで。一方、僕のほうはバンクーバーでセットを建てはじめなくてはいけなかった。『ワイルド・スピード』とは違い、『スター・トレック』では思いついたアイデアがすべて建築につながるんです。」
現代のアクション映画の場合、セットではなく実際のロケーションで撮影を行うことも多く、リンが手がけた『ワイルド・スピード』シリーズもそのうちのひとつだった。しかし『スター・トレック』の場合、ロケ撮影に頼ることもできなければ、すべてをCGに頼り切ることもできない。脚本を書いているうちに残り時間はどんどん短くなっていくのだ。
「時間がなかった。サイモンとダグのことは大好きでしたが、大変な仕事だったんです。(撮影の)初週を無事に終えられるかどうかがわからなかった。」
リンやペッグらはこの試練を乗り越えて、無事に撮影にこぎつけ、完成した作品はファンの間でも高く評価された。この経験をへて、リン監督は『ワイルド・スピード』シリーズに復帰。ところが、続く『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』(2023)では撮影初週に監督を降板している。J・Jの無茶振りにも勝利したリンにさえ続行できなかったのだから、もしや現実的に「一番大変だった」のは『ファイヤーブースト』だったのではないか……。
もっとも、現時点でリン監督は『ファイヤーブースト』を降板するに至った真相を語ってはいない。「キャストには愛情しかありません。みんな“ファミリーだ、ファミリーだ”とジョークを言っているけど、僕も同じ気持ち。メンバーとともに成長できたのは特別なこと」「ポジティブな気持ちしかないし、ただサポートしたい」と前向きな言葉を口にするにとどまった。
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Source: Happy Sad Confused