2018年は『グレイテスト・ショーマン』『ボヘミアン・ラプソディ』が大ヒット、音楽映画の当たり年だった。その締めくくりとしてふさわしく、2018年12月21日には『アリー/スター誕生』が公開となる。
『グレイテスト・ショーマン』『ボヘミアン・ラプソディ』共に、映画サウンドトラックが異例の大ヒットを記録したこともブームの証明となった。レディー・ガガやブラッドリー・クーパーの書き下ろし楽曲が話題の『アリー/スター誕生』はどうか。
イオンシネマを展開するイオンエンターテイメント株式会社の商品部・神内氏によれば、同作サウンドトラックは、映画公開前の時点で「前代未聞」の仕入れ数を記録しているという。ユニバーサルミュージックから、同氏へのインタビューが届けられた。

サントラブームの到来
──そもそも映画館におけるサウンドトラックの仕入れ数はどのように決めるのですか?
映画にはいろいろな種類がありますが、まずはその作品のサウンドトラックが出るかどうかの情報収集から始めます。そして映画館にCDを納品していただいているメーカーさんと密に連携をとって、まずは映画館に仕入れるタイトルを決めるところから始めます。いまは配信の時代でもあるので、すべてを仕入れるわけではなく「これなら売れるかな」といったタイトルだけを仕入れるようにしています。
仕入れ数に関しては、例えばシリーズモノであれば前作の実績を参考にしたり、オリジナルの作品の場合は過去の類似作品の数値を参考にするなどして、メーカーさんと相談して目標値を設定しています。
──これまで「この映画のサウンドトラックはすごく動いた」といった実例はどんなものがありますか?
私は劇場で実際に販売していた経験もあるのですが、そのときに「サントラすごい!」と思ったのは『レ・ミゼラブル』が印象的でした。そのあたりからミュージカルが若い層も取り込んで一般的に受け入れられるようになっていったと思っています。そこから徐々にサウンドトラックというものの認知も広まっていった印象で、去年辺りから特に“サウンドトラックが売れる”という現象がすごく顕著になりましたね。『ラ・ラ・ランド』や『美女と野獣』といったサウンドトラックの売れた作品が数ヶ月ごとに続きました。この1,2年で“サントラブーム”といった大きな流れができたように感じますね。
「映画をそのまま持ち帰りたい」ニーズ増える
──そんな“サントラブーム”の中で、実際の販売現場ではどんな現象が起きていたのでしょうか?
通常は劇場で一番売れるのは映画のパンフレットなんですね。サウンドトラックはパンフレット、映画グッズに次ぐ3番目くらいの位置づけにあることが長かったので、必然的に売り場で一番目立つところに置かれるのはパンフレットだったんです。劇場によっては、お客さんから指差しで「このサウンドトラックください」と言われてから出す、ということもあったくらいでした。
でも今の、例えば『ボヘミアン・ラプソディ』では、それだと注文が多すぎて作業が追いつかなくなってしまったんですね。なので自然とサウンドトラックも売り場のいい場所に並ぶようになって、劇場にとってもサウンドトラックの重要度がどんどん上がっていきました。映画をそのまま持ち帰りたいという人がパンフレットとCDをセットで買っていく、ということがすごく多くなっています。
──そのような現象も含め、いままさに“音楽映画ブーム” “サントラブーム”が巻き起こっていると思いますが、この現象についてどのように感じていらっしゃいますか?
サウンドトラックが売れる作品に共通しているのが、比較的来場者の年齢層が高めの作品だということだと思います。配信世代ではなくレコード世代と言うんですかね。そういった方がCDを買っていかれることが多かったのですが、『美女と野獣』とかは来場者の年齢は低めでもCDはとても売れたので、作品によっては年齢層を問わずにサウンドトラックが売れていたりします。
たとえ作品がミュージカルでなくても、音楽がただ単に映画の主題歌やBGMにならず、ちゃんと劇中に意味を持って入ってきている作品が流行っているなという印象です。
──そんな中、いよいよ『アリー/ スター誕生』が12月21日(金)に公開されます。ゴールデン・グローブ賞で5部門にノミネートされ、すでに全米ではサウンドトラックが3週連続1位を獲得するなど、まさに昨今の音楽映画のブームの流れを汲んだ注目作ですが、すでにサウンドトラックの仕入れ数がすごいというお話をお伺いしました。