ライトセーバーと『鬼滅の刃』の共通点とは? 『スター・ウォーズ ライトセーバー大図鑑』著者が語る執筆秘話

『STAR WARS スター・ウォーズ ライトセーバー大図鑑』(以下『ライトセーバー大図鑑』)が、グラフィック社より、2021年8月に発売される(書店店頭にて8月上~中旬に発売)。このたび、訳者・上杉隼人氏による、著者ダニエル・ウォーレスの単独オンライン・インタビュー映像が公開された。THE RIVERでは、その一部を抜粋してお届けする。
ライトセーバーに焦点を絞った初めての1冊
ダニエル・ウォーレスはミシガン州立大学卒業後、広告会社に勤務し、その後、著作活動に専念。著作に『スター・ウォーズ ジェダイの書 DXエディション』『スター・ウォーズ シスの書 DXエディション』(グラフィック社)、『アルティメット・スター・ウォーズ(完全保存版大百科)』(学研プラス)、『スター・ウォーズ ビジュアル事典 宇宙戦争全記録』(講談社)、『スター・ウォーズ全史』(ソニー・マガジンズ文庫)、『スター・ウォーズ 3D大図解 ダース・ヴェイダー』(竹書房)ほか、『スター・ウォーズ』関連の書籍を数多く刊行している。
そんなウォーレスも、ライトセーバーにテーマを絞って書いたのは本書が初めてとなる。ウォーレスはライトセーバーについて、次のように語る。
「ジョージ・ルーカス監督は『スター・ウォーズ』シリーズ制作にあたって、日本の時代劇に、特に黒澤明の侍映画に強い影響を受けました。ライトセーバーは、まさに侍の刀です。平和の守護者として、特定の目的を備えた組織の一員として、自分だけの剣を持つのは、『スター・ウォーズ』シリーズで重要な意味を持ちます。(……)でも、ライトセーバーの柄も光刃もいろんな色があって、みんなそれぞれ違います。」
『ライトセーバー大図鑑』には、「銀河共和国のジェダイ」「ダークサイドに仕える者たち」「新時代のジェダイ」の3章に分けて、58本のライトセーバーが所有者とともに紹介されている。
アイラ・セキュラの青い光刃(ブレード)のライトセーバーは耐久性が高く、長期間の使用が可能な上に、戦地でも一瞬で修復できる。デュラスチールの柄のグリップに溝が刻まれ、光刃(ブレード)の強度も長さも調整できる(『ライトセーバー大図鑑』22ページ)
(ダース・ベイダーのライトセーバーは)内部にふたつのクリスタルが埋め込まれたデュアル=フェーズ・ライトセーバーで、調整ノブで光刃(ブレード)の長さもパワーも調節できる。(同100ページ)
なお本書には、各ライトセーバーの特徴と、どんな素材で作られているかといった情報までくわしく記されている。
執筆でいちばん楽しかったこと、いちばん難しかったこと
本書はほかのヴィジュアル書に比べて文字数が多いことからも、執筆は大変だったと思われる。執筆にあたっていちばん楽しかったこと、大変だったことについて、ウォーレスは次のように話す。
「いちばん楽しかったのは、『スター・ウォーズ』映画の舞台裏が書けたことです。本書には、それぞれのライトセーバーがスター・ウォーズ・ユニバースにおいてどんなふうに使われているかといったことはもちろん記しています。加えて、小道具の人たちがそれをどのように作り上げて、コンセプト・アートの人たちがどんなふうにデザインして、役者が戦闘場面の撮影でどんなふうに使ったかといったことも論じています。
いちばん難しかったのは、何を削るか決めなければならなかったことです。(……)エピソード1~9に出てくるライトセーバーは落とせないですが、スピンオフやテレビ・ドラマ、さらにはビデオ・ゲームなどに出てくるセーバーも紹介したかったので、何を取り上げて何を落とすか、ほんとに悩みました。映画ではライトセーバーを持つ場面のないジェダイ評議員も本書では取り上げています。最終的にどのキャラクターとどのライトセーバーを取り上げるか、すごく悩みました。」
ところで、『スター・ウォーズ』の記念すべき最初のライトセーバーはどうやって作られたのか?本書『ライトセーバー大図鑑』の11ページには、次のように書かれている。
装置・小道具担当のロジャー・クリスチャンがロンドンのウエストエンドに足を運び、一軒の店に入ったところ、フラッシュ撮影に使う年代物のバッテリー・パックをいくつも目にした。
「店主に『ここにはほかにはない面白いものが置いてあるんじゃないか?』とたずねたんだ。すると、すぐそこに埃だらけの箱がひとつあったから、そいつを引っ張り出して開けてみた。すると40年代のグラフレックスのフラッシュのハンドルが出てきた。『これだ! このハンドル、まさしくライトセーバーの柄だ!』」
ファン、そして関係者をも惹きつける筆力
ダニエル・ウォーレスの文章は『スター・ウォーズ』ファンだけでなく、広く映画やアートの仕事をしている人たちも惹きつける。この筆力をどこで身につけたか、次のように答えている。
「ずっと『スター・ウォーズ』が好きでしたし、『スター・ウォーズ』とともに育ちました。『スター・ウォーズ』の世界が頭の中に入っています。ほかにもDCコミック、マーベル・コミック、『ウォークラフト』の関連書籍も書いてきました。『ファイナル・ファンタジー』シリーズ関連書籍の書き直しもしました。どれもとても楽しく仕事を進めることができました。そういったことがすべて重なって、今の僕の執筆スタイルができあがったように思います。」
精巧なイラストへのこだわり
イラストレーターのルーカス・リスコとライアン・ヴァレの仕事について、ウォーレスは次のように語る。
「僕らがめざしたのは、本物ではないかと思えてしまうライトセーバーの柄を掲載することでした。エピソード4のルークのライトセーバーの柄をはじめ、何本かは実際に映画撮影のために小道具として作られましたから、ルーカスフィルムから写真を取り寄せることで実現できました。
ですが、テレビアニメ「クローン・ウォーズ」「反乱者たち」、アクション・ゲーム『Star Wars ジェダイ:フォールン・オーダー』、コミック・ブックといったものにはそういった小道具は存在しませんから、イラストレーターふたりがそれを再現するのは大変でした。でも、ふたりは本物そっくりというか、思わず手に取ってみたくなるようなものを見事に描き上げました。映画には出てこないライトセーバーも精巧に再現してくれたのです。」
『ゴジラvsコング』『鬼滅の刃』について
ダニエル・ウォーレスは『ライトセーバー大図鑑』につづいて、『ゴジラvsコング アート・オブ・アルティメット・バトルロワイヤル』をリリースした(原書:The Godzilla vs. Kong: One Will Fall: The Art of the Ultimate Battle Royaleは2021年4月に発売され、翻訳版もDU BOOKSから8月に刊行予定)。この作品については、怪獣映画への愛情をにじませる。
「(『ゴジラvsコング アート・オブ・アルティメット・バトルロワイヤル』で)日米の怪獣を対決させられてとてもうれしいですし、楽しんで書き上げることができました。ゴジラとゴジラ映画が大好きですし、『パシフィック・リム:アップライジング アート&メイキング』(ホビージャパン)の時と同じように楽しく進めることができました。」
また、現在、日本のみならず、アメリカを含めて全世界の注目を集めている『鬼滅の刃』の剣についても、ライトセーバーと比較して熱く語っている。
「主人公が刀とつながり、その刀がどんな色になるか語る場面は興味深いと思います。もちろん黒になりますが、刀に持ち主の内面が投影されるのはスター・ウォーズにおけるライトセーバーと同じですね。
悪の化身シスのライトセーバーは赤です。でも、ジェダイのライトセーバーの色は異なります。青いセーバーもあれば、緑のセーバーもあるし、ジェダイの神話に詳しく記されています。ある色は防御に長けていますし、ある色は先を見越すことができるというように、光刃の色で持ち主の性格をそれとなくうかがい知ることができます。」
日本のポップ・カルチャーに強い関心があるダニエル・ウォーレス、今後も日本のファンにも訴求するような作品に期待したい。
スター・ウォーズ、アベンジャーズ、マーベル、DC関連書籍の最重要作家、ダニエル・ウォーレスの独占オンライン・インタビューは、訳者・上杉隼人氏のYouTubeチャンネルにて公開中(日本語字幕・英語スクリプトはこちらから)。
ダニエル・ウォーレスにインタビューした、訳者・上杉隼人氏のサイン入り『STAR WARS スター・ウォーズ ライトセーバー大図鑑』を、THE RIVERの読者3名様にプレゼントいたします。こちらをご覧ください。たくさんのご応募、お待ちしております。(賞品提供:グラフィック社)
『STAR WARS スター・ウォーズ ライトセーバー大図鑑』
書名 | STAR WARS スター・ウォーズ ライトセーバー大図鑑 |
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著者 | ダニエル・ウォーレス |
訳者 | 上杉隼人 |
出版社 | グラフィック社 |
価格 | 本体2,700円(税別) |
ページ数 | 156ページ |
判型・製本 | A4変形判/上製 |
ISBN | 978-4-7661-3516-9 |
上杉隼人
翻訳者(英日、日英)、編集者、英文ライター・インタビュアー、英語・翻訳講師。早稲田大学教育学部英語英文学科卒業、同専攻科(現在の大学院の前身)修了。『STAR WARS スター・ウォーズ ライトセーバー大図鑑』(グラフィック社)、「スター・ウォーズ」全作(エピソード1〜9)、『STAR WARS スター・ウォーズ ビジュアル事典 宇宙戦争全記録』(いずれも講談社)ほか、スター・ウォーズ関連の多数を翻訳している。訳書に『アベンジャーズ エンドゲーム』『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』(いずれも講談社)、『マーベル・シネマティック・ユニバース ヒーローたちの言葉』(KADOKAWA)、ベン・ルイス『最後のダ・ヴィンチの真実 510億円の「傑作」に群がった欲望』(集英社インターナショナル)、チャーリー&ステファニー・ウェッツェル『MARVEL 倒産から逆転No.1となった映画会社の知られざる秘密』(すばる舎)、ジョン・ル・カレ『われらが背きし者』(岩波現代文庫)など多数(70冊以上)。最新訳書は、マーク・トウェーン『ハックルベリー・フィンの冒険』(上)(下)巻(講談社青い鳥文庫)。