『スーパーマン』は「アメリカの物語であり、移民の物語であり、優しさの物語」とジェームズ・ガン、「いま必要な映画」と語る理由

「『スーパーマン』はアメリカの物語です。他の場所からやってきた移民が国を築いたという物語──僕にとっては、基本的な人間の優しさこそが価値であり、私たちが失ったものだという物語です」。
新DCユニバースの映画第1弾『スーパーマン』の公開を控え、監督・脚本のジェームズ・ガンが、英The Timesにて本作の政治性を語った。故郷クリプトン星の危機をきっかけに、両親によって地球に送られたスーパーマン/クラーク・ケントは、スーパーヒーローという以前に“ひとりの移民”であるという考え方だ。
もちろんガンは、こうした性質を踏まえ、観客の思想や考え方によって「解釈は分かれるかもしれない」と認めている。現に劇中でも、スーパーマンとロイス・レインは意見を対立させるのだ。ガンはこれを「政治」であり「道徳」だと言う。
「スーパーマンの“いかなる場合でも殺さない”という信念か、あるいはロイスが信じるようにバランスを取るか──それが二人の関係性です。基本的な道徳的信念に対する意見の違いが、二人を分断するかもしれないのです。」
ただしガンが強調するのは、これが「人間としての優しさについての物語」だということだ。「優しさを描くだけで腹を立てるような、優しくない人たちはいる。そんな連中はどうでもいいんです」。
以前から、ガンは『スーパーマン』で思想や考え方の違いによらない“善”を描く意志を明かしていた。今回のインタビューでは、自身が描いたのは「他者の善意に対する希望が失われた時代」のスーパーマンだと語っている。
「文化的な人物がオンラインで卑劣な振る舞いをすることで、そうした空気が蔓延しています。僕自身もその一員です。オンラインで数百万人が怒りを爆発させつづけるなか、私たちの文化はどこへ向かえばいいのでしょうか。何が真実なのかがわからないことは、人間の脳にとって非常に困難な状況です。もしもインターネットを消滅させるボタンがあるとしたら、僕はボタンを押すことを真剣に考えるでしょう。」
しかしながら、もちろんそんなボタンは現実には存在しない。そのかわりにガンができるのは、『スーパーマン』で自身のメッセージを描くことだ。映画が完成した現在、この物語を「いま必要な物語だと感じている」という。「僕は世界を変えるために映画を創っているわけではありません。だけど映画を観たあと、ほんの数人でもよりよい人になってくれれば幸せです」。
映画『スーパーマン』は2025年7月11日(金)日米同時公開。
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Source: The Times (via Deadline)