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【ネタバレ】『サスペリア』最後の儀式シーン、脚本段階はさらにメチャクチャだった

サスペリア
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リメイク版『サスペリア』は観客を容赦なく驚かせる。それもいわゆるホラー映画に多い、いきなりの大音量や恐怖演出で驚かせるという方法によってではない。物語が終わりへ近づいていくにつれ、観客はスクリーンで繰り広げられる光景を前にして呆然とするほかなくなるのだ。

その筆頭が、映画本編における“最後の儀式”である。未見の方のためにここで決して多くは語らないが、実はこのシーン、脚本段階ではさらに圧倒的な光景が書き込まれていたという。完成版の映像は、あくまで脚本から「トーンダウン」されたものだったというのだ。……あれで!?

この記事には、映画『サスペリア』の重大なネタバレが含まれています。

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ヘレナ・マルコスの儀式、サスペリオルムの大虐殺

『君の名前で僕を呼んで』(2017)のルカ・グァダニーノ監督は、ダリオ・アルジェント監督によるオリジナル版『サスペリア』(1977)を大胆に脚色し、新たな要素を多数加えて本作を生み出した。なかでも最大の変更点にしてサプライズは、主人公スージー・バニヨン(ダコタ・ジョンソン)こそが魔女メーター・サスペリオルムだったという結末だろう。

最後の儀式は、舞踊団〈マルコス・ダンス・カンパニー〉に君臨するヘレナ・マルコスの“新たな器”を用意するために執り行われる。ダンサーたちが踊るなかでサラ(ミア・ゴス)の腹部が割かれ、内臓が引きずり出された。醜い姿で若い肉体を待望するマルコスは儀式を見つめているが、マダム・ブランは儀式に迫る異変を察知し、儀式を止めようとする。怒り狂ったマルコスがブランの首を裂いて命を奪ったとき、儀式はさらなる段階へと突き進んでいく。

スージーはマルコスの嘘を暴き、自分こそがメーター・サスペリオルムであることを明かす。彼女は黒い姿をした悪魔のような生物を召喚すると、ヘレナ・マルコスを殺害するのだ。舞踊団がその維持に努めていた存在はいともたやすく退場し、そこからは“マルコス派”の寮母たちが次々と血祭りにあげられていく。人体が爆発し、血飛沫が吹き上がり、儀式の場は真っ赤に染めあげられる。生き延びたダンサーたちはひたすら踊り狂い、最後にたたずむのはスージーひとりだけとなるのだ……。

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言葉で説明しても何がなんだかわからないが、映像で観ても何がなんだかわからない。しかしそれこそがすばらしい……のだが、特殊メイクを担当したマーク・クーリエ氏が米ComicBook.comに明かしたところによると、これら一連のシーンは脚本段階ではもっと恐ろしかったという。

ルカ(・グァダニーノ監督)が脚本に書いていたもの、その描写は実際に完成したもの以上に怖かったです。(映画本編は)脚本よりも確実にトーンダウンしています。観客全員を圧倒する結末にするという計画はずっとあったんですよ。
(脚本には)それぞれのシークエンスが映画よりもたっぷりと書かれていました。魔女たちの宴が開かれていて、身体の一部や人肉を食べる場面があったんです。映画では、私たちがもともと話し合っていたものから少しだけ短縮されていますね。でも良いシークエンスですよね。時間の面でも成功していますし、映画の中でも非常にうまくいっていると思います。」

クーリエ氏はこれ以上の内容を明かしていないが、脚本の段階では儀式から虐殺までの一連がさらにグロテスクに描かれていたのだろう。儀式そのものに魔女の宴が組み込まれていたというあたり、監督はさらに混沌とした儀式を当初想定しており、それをメーター・サスペリオルムが徹底的に破壊するという意図だったとみられる。いったい、そこにはどんな内容が書き込まれていたのか……。いつか、全編の脚本が公開されることを楽しみにしておきたい。

ちなみに、この儀式シーンの撮影には巨大なゴムのスーツとゴム製の内臓が使用されていたとのこと。「みなさん(映画を観て)ビックリされますけど、僕たちはそうでもなかったですよ」とはクーリエ氏の談である。そりゃそうですよね。

『サスペリア』結末の謎はこちらで解明

映画『サスペリア』は2019年1月25日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国の映画館で公開中

『サスペリア』公式サイト:https://gaga.ne.jp/suspiria/

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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