【映画に登場するマニアックな格闘技6】ロシアの一撃必殺護身術『システマ』とは?『ジョン・ウィック チャプター2』予告編第2弾公開!

この「映画に登場するマニアックな格闘技」シリーズでは以前、番外編として銃と徒手格闘の融合ガン・フーを扱いました。その際、2014年に全米公開された『ジョン・ウィック』に「ガン・フー」の最新形態が登場しているとご紹介しましたが、先日この『ジョン・ウィック』の待望の続編『ジョン・ウィック チャプター2』の予告編第2弾が公開されました。

前作よりさらに磨き上げられた「ガン・フー」を駆使して、圧倒的多数相手に、カッコよくというよりも、もはや職人芸的に手際よくポンポン敵を片付けるジョン・ウィックの雄姿に、あの手この手で「ジョン・ウィック推し」をしている筆者としては今の時点でテンションMAX、これは何としても日本公開が1年も遅れた前作と同じ轍を踏ませてはならない、ファンを刺激して配給会社様にプレッシャーをかけなければならないという意味不明の義務感にかられ、筆を執った次第です。

「ガン・フー」の項で紹介しましたが、ジョン・ウィックが操っている戦闘技術は、”C.A.R(Center Axis Relock) system”という近接射撃術と、「システマ」という体術を融合させて考え生みだされたものです。今回ご紹介するのは、このうちの後者、ロシア生まれの護身術「システマ」です。

「システマ」の歴史

遡ること四半世紀の1991年、ゴルバチョフが主導したペレストロイカ(自由化・民主化)の流れは、東欧民主化革命を経て、ソビエト連邦の崩壊に結実しました。この世紀の一大転換により、それまで共産主義の赤いヴェールに隠されていた様々なロシアの文化が再び明るみに出るようになり、長らく共産体制を維持するために使われてきた多種多様なロシアン武術もまた一般大衆のものとなったのです。

「システマ」は、ロシア陸軍大佐ミカエル・リャブコとその一番弟子であるヴラディミア・ヴァシリエフが、伝統あるロシアン武術の様々なエッセンスを整理・体系化して生み出したものです。この創始者たちの経歴が凄くてですね、ミカエル・リャブコ氏は、5歳のときに当時スターリンの身辺警護をしていた武官に師事し、わずか15歳で特殊部隊スペツナズに入隊されております。「スターリン」に「スペツナズ」とくりゃあ、もうこっちは「ゴメンナサイ」で相手するしかありませんが、スペツナズ入隊後、リャブコ大佐は主に人質救出・テロ対策チームの戦術司令官として、さまざまな軍事作戦に参加し、数々の国家勲章を受けているそうでございます。テロ対策チーム戦術司令官って、あれでしょ? 『24』のジャック・バウアーでしょ?

無表情で首に拳をキメてる方がリャブコ氏。 http://systema-prague.com/en/%E2%80%9Cpower-within%E2%80%9D-systema-top-seminar-mikhail-ryabko-prague-3-4122016

無表情でキメてる方がリャブコ氏。
http://systema-prague.com/en/%E2%80%9Cpower-within%E2%80%9D-systema-top-seminar-mikhail-ryabko-prague-3-4122016

またリャブコ氏の一番弟子であるヴラディミア・ヴァシリエフさんもまたガチでございまして、こちらは特殊部隊で訓練を受けた後、SWATチームの教官を10年近くも務められていたとか。特殊部隊の教官まで出てきちゃったとなると、もはやよく知る前から、「システマ」が現実の戦場でも有用であることは疑いようがないわけです。

「システマ」の戦闘スタイル

そんなガチの戦場や極限状況を知り尽くしたプロフェッショナルが生んだ「システマ」ですから、さぞ攻撃に特化した武術なのだろうと想像しますが、それは素人考えというもの。「システマ」で何より重視されるのは呼吸法、そしてそこから得られる心拍数の安定、そして平常心の維持こそ、止むに止まれぬ身を守るための戦いで最も重要なポイントだとされています。急に始まった戦いや、不利な状況での戦い、さらには敵の攻撃でダメージを受けてパニックを起こしてしまうことこそ、生存の為には最も避けなければならない事態というわけです。

また「システマ」は体系的な“型”を持ちません。これは「システマ」という護身術が、理念として身体の持つ本能的な反応を重視し、万人に向けた習得しやすさを大事にしているためと思われます。ゆえに「システマ」には決まったファイティングポーズなどはなく、紹介動画などを見ても、ほぼ棒立ちの状態から演武が始まっているのが見て取れます。

また「システマ」の代名詞で、“一撃必殺”と形容される打撃技も非常に個性的です。こちらの動画をご覧ください。

「システマストライク」と呼ばれる打撃は、下半身の瞬間的抜重、上半身の重さ、肩甲骨の回転により生み出されるパワーによって成立するものです(素人目で判断してます)。腰の回転によりパワーを生み出すボクシングや、多くの中国武術などとは対照的ですね。

「システマ」は“ロシアの合気道”と形容されるように、合気、語弊を恐れず言えば相手の力を利用する「カウンター」に重きを置いています。打撃を叩き込むタイミングさえ体で覚えてしまえば、必要な破壊力は手に入るということでしょう。思うにロシアの方たちは、日本人よりも体格的に優れている方が多く、むろん体重も重いはずです。システマストライクの破壊力は、本人の上半身の体重にストレートに比例するので、ロシアの方ならば人間ひとりを倒すには十分な威力となるのではないでしょうか。

「型」にとらわれず、さまざまな戦況に自由な態勢で対応し、呼吸法によって平常心を維持し、相手の力をカウンター利用する。言葉にすると単純ですが、「システマ」とは、創始者であるリャブコ氏らが長年の実戦経験で無駄を削ぎ落とし、その純度を限りなく高めた武術なのです。実際に相手にするのはごめんこうむるとしても(動画のやられ役の人かわいそうです)、映画に登場するならむしろウェルカム。ジョン・ウィック氏の華麗なアクションを見ながら、「あ、今のシステマのあれだな」なんつって、「日本は平和だなー」とポップコーンをむしゃむしゃ食べたりするのが、今からとても楽しみですね。

Eyecatch Image: http://systema-prague.com/en/%E2%80%9Cpower-within%E2%80%9D-systema-top-seminar-mikhail-ryabko-prague-3-4122016

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About the author

1977年生まれ。週刊少年ジャンプ脳のクリーチャー愛好家。玩具コレクター。エンドレスダイエッター。「意識低い系」の文章を信条としています。

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