『TENET テネット』スーツのデザイン、『007』の影響は ─ 「ジェームズ・ボンドは超大御所」

クリストファー・ノーラン監督は、最新作『TENET テネット』を“クラシックなスパイ映画”と形容する。たしかに〈時間の逆行〉をめぐるコンセプトは難解だが、物語自体は『007』シリーズさえ思わせる、シンプルなスパイ映画のそれだ。ジョン・デイビッド・ワシントン演じる主人公、ロバート・パティンソン演じる相棒のニールは揃ってスーツを着こなし、格闘やカーチェイスに臨む。
ノーランは『007』シリーズのうち、『007 私を愛したスパイ』(1977)がお気に入りだという。では、衣裳デザイナーのジェフリー・カーランド氏は、かの世界的スパイ、ジェームズ・ボンドをどれくらい意識したのか。英Esquireのインタビューでは、「(ジェームズ・)ボンドはこの手の映画の親玉。超大御所です」と述べ、「まったく無関係ではいられません」と語っている。
カーランドいわく、『TENET テネット』で意識したのは、『私を愛したスパイ』のロジャー・ムーア版ボンドではなく、“初代ボンド”であるショーン・コネリー版。しかし、ボンドを意識しながらも「違うものにしたかった」というように、そこには本作なりのひねりが効いている。
「ショーン・コネリーのボンドに近いものを作りましたが、それはスーツのスタイルという意味ではなく、キャラクターがどう着るのか、スーツ姿がどう見えるのかということ。[中略]また、どういう服を着ているかということでもありません。
(コネリー版ボンドは)1960年代に作られたものだから、まるで時代が違います。だけど、(ボンドは)いま見ても十分成立するし、格好いい。そこから何かを盗んだりせずに、そういう満足感を得られる、本質的なところに到達したかった。初めてコネリーのボンド映画を観た時、誰もが“カッコいい、こんなふうになりたい”と思ったもの。そういうクオリティに仕上げたかったんです。」

ボンドと共通するのは、主人公やニールが激しいアクションに身を投じていくこと。カーランド氏は、スタントの撮影にも対応できるよう、衣裳にはいくつものバージョンを用意したことを明かしている。
「彼らは走るし、跳ぶし、地面に倒れるし、戦う。だけど、起き上がったらまだカッコいい。そういう奇跡を見せたいと思いました。クリス(クリストファー・ノーラン)は基本的に実写で撮るし、カットをかけないから、私もそういう方法に対応する必要がある。だから、アクションに特化したスーツをいくつも作りました。スタントパーソン用のスーツも作りましたが、ほとんど俳優本人が演じています。ジョン・デイビッドは全部の格闘を自分で演じているし、ロバートもスタントマンと一緒に全部のアクションをやっている。そういう俳優の仕事に、衣裳は対応する必要があるんですよ。」
ちなみにカーランド氏は、最初に本作の脚本を受け取ったのち、ノーランと打ち合わせをする前に「少なくとも6回は」脚本を読み返したとのこと。『インセプション』(2010)『ダンケルク』(2017)でもノーランとタッグを組んだ経験から、「ノーランの作品ではいつも通りです。まずは素晴らしい脚本があって、そこから始まるもの」だと語っている。
映画『TENET テネット』は2020年9月18日(金)より全国公開中。
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Source: Esquire