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『TENET テネット』キャットはなぜヒールを履くのか ─ エリザベス・デビッキ&ケネス・ブラナーの衣裳が示す「裕福さ」の秘密

TENET テネット
© 2020 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved

クリストファー・ノーラン監督の最新作TENET テネットは衣裳から見てもおもしろい。これまでジョン・デイビッド・ワシントン演じる“名もなき男”やロバート・パティンソン演じるニールのスーツについて、デザイナーのジェフリー・カーランド氏による解説をご紹介してきたが、今回はエリザベス・デビッキ演じるキャットと、その夫でロシアの富豪である、ケネス・ブラナー演じるアンドレイ・セイターに注目してみよう。

Esquireによれば、カーランド氏はノーランによる脚本を6回にわたって読み込んでから、衣裳の打ち合わせに臨んだという。「ノーランの作品はすべて、いつも脚本から始まります」とはカーランド氏の談。書き込まれた人物像を自分なりに分析してから、「精神的に、肉体的にどんな人物なのか、クリス(ノーラン)は彼らをどう表現したがっているのか」について、登場人物全員のイメージを話し合い、それからスケッチを描くのだという。

TENET テネット
© 2020 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

「スケッチを描いて、クリスに見せると、“いいね、そのまま進めて”とか、“いやいや違う、そっちの方向性じゃない”とかって言われるんです」。すべてのキャラクターの方針が固まるまで、ノーランとは長きにわたる話し合いを続けるのだとか。もともとカーランド氏は、キャットの衣裳について、ノーランのイメージとは異なるプランを思い描いていたという。

「脚本を読むと、セイターが裕福なロシアの財閥の人間であることがわかります。彼にどんな背景があり、自分の金でどんなことをしているのかがね。じゃあ、その妻はどんな感じなんだろうと思ったんです。最初に描いたのは、流行りものの、豊かさを見せるための服でした。だけどクリスからは、“そういう風にはしたくないんだ”と言われました。彼女はまったく幸せな結婚をしていないし、結婚で得たものを楽しんでいるようには描きたくない、と。」

このコメントを受けて、カーランド氏は自身のアイデアを捨て、キャットがいわゆる“英国女性”であることに注目したという。そこから生まれたのが、一定の保守性がありつつも、スタイリッシュなところもあるというアプローチだ。「40年代後半から50年代前半を彷彿とさせつつ、今っぽさもある。それから、脆さも感じられる。彼女は誰にも心を開かず、自分の内側にこもっています」。こうして、カーランド氏が最初に抱いていたイメージとはまったく異なる方向性にキャラクターが育っていった。

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© 2020 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved

キャット役のエリザベス・デビッキは、身長およそ190センチという長身の持ち主。しかも、劇中ではほとんどのシーンでヒールを履いている。これは、エリザベスの長身をさらに活かそうというカーランド氏の提案が採用されたものだったとか。「だから彼女は劇中、一度たりとも、他の人物より小さくならない。キャットにはとても威厳があって、自分が自立していることを、身体的に、視覚的に宣言しているんです」。劇中ではつらく苦しい状況に置かれているキャットだが、その内心に燃えている炎が、つねに衣裳によって表現されているということだ。

ちなみにカーランド氏は、“スーツの男たち”である主人公とニール、セイターを、衣裳の面でも差別化しようと試みている。それぞれのスーツは、キャラクターに合ったものになるよう異なる職人が仕立てたのだ。セイターの場合、ある意味ではキャットと共通することだが、「まったく見せびらかしたところがない」のがポイント。富豪であるセイターは、わざわざその財力を服で示す必要がないという解釈だ。

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そのかわり、セイターのスーツは細部までこだわれている。ラペル(下襟)の切り込みが主人公やセイターらとは異なっており、これはカーランド氏いわく「別の時間から持ち込まれたのかもしれない、東ヨーロッパらしさを取り入れたかった」ため。縫い方にしても、セイターは“トップステッチ”だが主人公は“ピックステッチ”など、細かな使い分けがなされている。それが「キャラクターに特別な違いをもたらし、個性を表現する」というのだ。

映画『TENET テネット』は2020年9月18日(金)より全国公開中。

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Source: Esquire

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

THE RIVER編集部。「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。劇場用プログラムや各種媒体への寄稿なども喜んで承りますので、お気軽にお尋ねください。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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