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『TENET テネット』米公開の無期延期受け、「配給側は公開日を守れ」 ─ 映画館側が提言「ニュー・ノーマルに対応すべき」

TENET テネット
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クリストファー・ノーラン監督の最新作『TENET テネット』の米国公開が無期延期となったことは、映画業界と映画ファンに衝撃をもたらした。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、業界全体が停止状態となる中、ノーランは映画館の営業再開や劇場体験の重要性を早くから説いており、それゆえ『TENET テネット』はコロナ禍からの“復活”を象徴する作品になるとみられていたのだ。

では、映画館側の反応はどうか。全米劇場所有者協会の代表を務めるジョン・フィシアン氏は、ワーナー・ブラザースの決定に厳しい視線を向けている。大作映画の公開が順次繰り下げられてきた現状を受け、「より多くの市場が年内に再開される保証はありません。配給側は公開日を守るべき」と訴えかけたのである。

「ワクチンが作られ、広く普及するまで、すべての市場がオープンすることはないでしょう。安全かつ合法的に上映できる市場では、映画を公開するべきなのです。アメリカの市場では約85%、世界ではより多くの市場で、映画を上映できる状態にあります。(配給側は)映画を公開し、ニュー・ノーマルに対応すべき。以前と同じほどの利益を得られないかもしれませんが、映画を配給しなければ、彼らの経済にも大きな穴が開くことになる。年間42億ドルの業界なのです。それらがまったく開いていないのではなく、市場の85%は準備ができている。すべての市場が再開されるのを待っている間に、何が起こるかわかりません。」

コロナ禍のなか、映画館業界は再開への取り組みを続けてきた。大手映画館チェーンは専門家の監修を受けて安全確保のガイドラインを策定し、設備投資も実施している。けれども行政の許可が下りなければ営業は再開できず、仮に許可が出たとしても、話題作が公開されて観客が戻る見込みが立たなければ、映画館側も営業再開には踏み切れない。もしワクチンができるまで営業が再開されない場合、フィシアン氏は「映画館は残るだろうが、所有者は完全に変わる」との見立てだ。多くの企業は破産し、再構成される組織と、そのまま消滅する組織に分かれるという。そうなれば、多くの人々が職を失い、企業が消えることになる。

これまで全米劇場所有者協会とワーナーは緊密にコミュニケーションを取り、データの共有や意見交換を続けてきたとのこと。フィシアン氏は、両者を「素晴らしいパートナー関係」と形容し、スタジオ側の苦境にも理解を示している。しかし、その一方で「映画の公開を延期しつづけるのは大きな過ち」とも述べた。

『TENET テネット』の米国公開延期を受けては、『ムーラン』を控えるディズニーなどが自社作品を延期する可能性も危惧されている。また、『TENET テネット』の公開延期が映画館の再開に影響を及ぼすことも考えられる状況だ。フィシアン氏は、これら2つの問題については「わからない」とだけ答えた。

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Source: Variety

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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