ノーラン、オンラインフィットネス中に『TENET テネット』をディスられていた ─ 本人に見つかって驚きの事態に
映画監督クリストファー・ノーランが、自分の受講するオンラインフィットネスのインストラクターに『TENET テネット』(2020)を批判されていた……。ニューヨーク映画批評家協会賞のスピーチでノーランが明かした事実が、オンラインで思わぬ騒動を招いている。
2024年1月5日(米国時間)、『オッペンハイマー』でニューヨーク映画批評家協会賞の監督賞を受賞したノーランは、誰でも映画の感想を言える時代だからこそプロの批評家の存在が重要だと力説。「意見の数が増えた」「あらゆるところで意見を見聞きする」現代の具体例として、自らが体験したエピソードを語った。
「私がPeloton(オンラインフィットネス)をしていた時のことですが、へとへとに疲れていたら、インストラクターが私の映画について話し始めたんです。“誰かこの映画観ましたか? あの2~3時間はもう人生に戻らないんだ!”って。レックス・リード(映画評論家)は、映画を酷評しても“運動しなさい!”とは言わないんですけど。」
ノーランの言葉に聴衆は爆笑しているが、このくだりが米Varietyなど大手メディアやSNSで拡散されると、“誰が、どの作品について言ったのか”がすぐさま特定されてしまった。米404 Mediaによると、発言の主はPelotonを代表するインストラクターのジェン・シャーマン。どこから発見されたのか、当時の映像も発掘されているのだ。
セッションの中で、シャーマンは『TENET テネット』の主題歌であるトラヴィス・スコットの「The Plan」を流しながら、「『TENET』という映画のサウンドトラックに入っている曲です。誰か見ました?」と語りかけている。「マニュアルが欲しいんです。誰か説明してください。あの映画で何が起きていたのか、本当にわからない。わかりましたか? 神経科学者じゃないと理解できないでしょう。私の人生の2時間半を返してほしい。返して」。
— Jason Koebler (@jason_koebler) January 4, 2024
まさかシャーマンは、このときノーラン本人がセッションを受けているとは夢にも思わなかったわけだが、この言葉は数年後にスピーチで引き合いに出されるほどノーランの心に深く刻まれた。もちろん、この映像も瞬く間に拡散されてしまい、シャーマン本人がInstagramで反応する事態となってしまっている。いわく、「『TENET』のことは1分たりとも理解できなかったかもしれないけど、『オッペンハイマー』は2回観ました」。
「とんでもない日でした。まさか21世紀を代表する映画監督、クリストファー・ノーランが私を知っているなんて。興奮し、それから記事を読んだんです。だけど、あれは2020年のこと。暗い時期でした。私は小さな授業をしていて、いつものようにぺらぺら話し、前日の夜に見た映画の話を適当に喋ったんです。その映画を撮った監督が、4年くらい後にその話をする確率は……そんなこと、私にしか起こらないと思います。
私が言いたいのはこういうことです。『TENET』でいったい何が起きていたのか、私の頭では1分たりとも理解できなかったかもしれません。ただ、『オッペンハイマー』は2回観ました。人生の6時間ですが、返してほしいとは決して思っていません。ミスター・ノーラン、Pelotonで一緒にバイクに乗りませんか? 私の授業を批評してください。最前列で楽しい時間を過ごしましょう。侮辱しないと約束します。お返事をお待ちしています。」
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アナログ主義のノーランがこの呼びかけに応じるかどうかはわからない(ノーランがオンラインフィットネスを使用していたことも驚きだ)が、ひとつ学べることがあるとするならば、たとえ会員制のフィットネスであれ、オンラインで映画を批判すると監督本人が見ている可能性があるということだ。それが数年後に取り上げられ、当時の映像が広がってしまうことも……。
幸い、シャーマンは炎上しておらず、むしろ面白がられている印象だが、これも作品や人によっては大惨事だろう。くれぐれもあとから後悔しないよう、オンラインでの発言には気をつけたい。現実の時間は逆行しないのだ。
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Source: Variety, Christopher Nolan Art & Updates, 404 Media