『TENET テネット』セイター役ケネス・ブラナー、『オリエント急行殺人事件』ポアロ役との共通点とは ─ 映画監督として語る「ノーランの凄味」

また『オリエント急行殺人事件』の場合、ブラナーはせりふの訛りを習得するだけでなく、アガサ・クリスティーによる原作シリーズのすべて(長編33作と短編50作)を読破し、トレードマークともいえる口ひげを6ヶ月以上かけて作り上げた。ブラナーいわく、口ひげは「ポアロのスーパーパワー」。なぜなら、ポアロと出会った人はポアロ本人よりも先に口ひげに目が行ってしまうからだとか。
主人公のポアロを演じながら、豪華キャストを演出する。さぞかし大変だっただろうと思われるが、ブラナーは「監督と探偵には“真実を探す”という共通点があります。人の目を見つめながら話を聞いて、それぞれを信じられるかどうかを判断する。ふたつの仕事が結びついていましたね」とも語っている。「ウィレム・デフォーには、すごく自然な現場だったと言われましたよ。ポアロが捜査をしているし、僕はいつも最後にセットに入ってくるから」。
このように俳優・監督としての難題をやってのけるブラナーだが、『TENET テネット』ではクリストファー・ノーラン監督の技量にすっかり驚かされたことを明かしている。ノーランといえば“時間”をモチーフとする作品で知られるが、ブラナーは作品の内容だけでなく、「ノーランは本当に時間を操れるんだと思う」とまで言っているのだ。
「映画を撮る時、難しいことをやるために時間を止めているような気がするんです。特殊効果が大変なシーンを撮る時、クレーンはあるし、アクションはあるし、機材や車は同時に動くので、役者がパニックになることがある。僕は監督の経験が乏しいので、そういうことがたまにあるんですが、(ノーランには)まったくない。[中略]『マトリックス』みたいに時間が止まって、何事もないかのように演出するんです。リハーサルに丸一日使っておいて、それから恐ろしいカオスを解き放つ。このふたつを融合させられるんです。」
映画『TENET テネット』は2020年9月18日(金)より全国公開中。
Source: オリエント急行殺人事件, USA Today, nzherald.co.nz, The Philadelphia Inquire, Collider