Menu
(0)

Search

『トランスフォーマー/リベンジ』ヒロイン女優がシリーズを去った理由 ― 監督を罵倒しスピルバーグが激怒、8年後の猛省

トランスフォーマー
Photo by nicolas genin https://en.wikipedia.org/wiki/File:Megan_Fox_and_Shia_Labeouf_promoting_Transformers_in_Paris.jpg

映画『トランスフォーマー/リベンジ』(2009)は、前作『トランスフォーマー』(2007)に始まった本シリーズで最も不運な作品だと言わざるをえない。脚本家組合のストライキに端を発した製作トラブルだけでなく、この作品を最後に、ヒロインのミカエラ・ベインズ役を演じていたミーガン・フォックスがシリーズを去ったのである。

『トランスフォーマー』シリーズで大作映画のヒロインというポジションを射止めたミーガンは、なぜシリーズを去ることになったのか? “お騒がせ女優”として知られていた彼女の発言やマイケル・ベイ監督らの反応、そして2017年秋の猛省を振り返っていきたい。

「ヒトラー発言」でスピルバーグが激怒説

はじめに断っておかねばならないのは、ミーガンは決して『トランスフォーマー』を自主的に去ったわけではないということである。大きな問題となったのは、2009年9月、『トランスフォーマー/リベンジ』公開後に英Wonderland Magazine誌に掲載されたインタビューだった。
当時、過激な言動で注目されていた23歳のミーガンに、同誌は「マイケル・ベイ監督との仕事で最高だったこと、最低だったことは何ですか?」と尋ねている。どう見ても問題発言を引き出す気満々の質問に、ミーガンは全力で乗ってしまったのである。

「彼(マイケル)はナポレオンみたいな人で、イカれた、ヤバいヤツだって悪評を立てたがってます。現場ではヒトラーみたいになりたがってるし、実際にそうなってる。だから仕事中は悪夢みたい。でも現場を出て監督モードじゃなくなったら、私は彼の性格をほんとに楽しんでる。だって、マジでダサいんですよ。絶望的にダサい。人と関わる能力がゼロ。かわいいなと思って見てますよ。実際は弱いしヘコみやすいんですけど、現場では暴君なんです。『トランスフォーマー』の撮影中、シャイア(・ラブーフ)と私は死にかかってますもん。保険で許されないようなヤバいことをやらせるんですよ。」

さらに「オプティマス・プライムとマイケル・ベイが戦ったらどっちが勝つと思います?」という謎の質問をぶつけられると、ミーガンは「オプティマス・プライム」と答え、「だって彼(マイケル)は実生活で戦ったことないでしょ。あったとしても、すぐ地面に倒れて丸まってたと思う。パンチしたこともないはず」と回答。自分をヒロインに抜擢した監督に対して、一体どんな恨みがあったというんだ……。

マイケル・ベイ監督 U.S. Air Force Photo/Tech. Sgt. Larry A. Simmons https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Michael_Bay_060530-F-4692S-004.jpg

それから約2年後の2011年6月、米GQ誌では、ミーガンが第3作『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』(2011)を降板した経緯について、マイケル監督と脚本家のアーレン・クルーガーが明かしていた。降板を決めたのは公の媒体で罵倒された監督本人ではなく、製作総指揮のスティーヴン・スピルバーグだったというのだ。

アーレン:ミーガンは(第3作の)リハーサルには来ていたんです。でも(映画に)出たがっていない感じで。「やりたい」とは言ってましたけど、そういう演技じゃなかったですよね。

マイケル:彼女はBlackBerry(編注:携帯電話)で別の世界にいましたよ。みんな集中しなきゃいけなかった。それから“ヒトラー発言”ですね。スティーヴン(・スピルバーグ)が「今すぐクビにしろ」と言ったんです。[中略]
僕は傷ついてません、ミーガンはそういう人だとわかってるので。彼女はかまってほしいんですよ。ただし彼女は間違ってしまった。ミーガンには気の毒なことをしましたね。(リハーサルで)12時間も働かせて、時間通りに来てもらって申し訳なかった。映画の世界が常に温かくて優しいものとは限らないですよ。

ミーガンの「ヒトラー発言」が、ユダヤ系アメリカ人であるスティーヴンの逆鱗に触れたのは至極当然…なのだが、のちにスティーヴンは、ミーガンの降板は自身の判断ではないと主張している。したがって真相は藪の中だが、いずれにせよミーガンの発言と態度は、すでに『トランスフォーマー』への続投を不可能にするには十分だったのだろう。

ミーガン・フォックス、8年後の猛反省

『トランスフォーマー』シリーズの降板後、ミーガンは『ジョナ・ヘックス』(2010)や『パッション・プレイ』(2010)、『40歳からの家族ケーカク』(2012)などに出演。マイケル監督とはのちに和解したのだろうか、マイケルがプロデュースを務めた『ミュータント・タートルズ』(2014)や『ミュータント・ニンジャ・タートルズ:影<シャドウズ>』(2016)で大作映画にカムバックしている。しかし残念ながら、決して出演作に恵まれているとは言いがたい。

2017年10月、英COSMOPOLITAN誌に登場したミーガンは、“ヒトラー発言”を8年越しで振り返り、反省の意を表している。

「(2009年当時は)私のキャリアで確実に最悪の時期でした。でもあの出来事がなければ、私はあれほど早く学習してはいなかったと思います。私がすべきことは謝罪だけだったのに、私はそれを拒否した。23歳の頃は本当に自分本位で、そうすることが人々のためになると思えなかったんです。私はジャンヌ・ダルクだって本気で思ってました。
(『トランスフォーマー』降板で)私だけではなく大勢の人が傷ついた。でも、あのつらさが私を精神的に大きく、素早く成長させてくれたんです。自業自得だったと気づいてからは、あのことはかけがえのない経験だったと思っています。」

転んでもただでは起きないミーガン・フォックスは、2018年、ジェームズ・フランコが主演・監督を務めた映画『Zeroville(原題、未公開)』に出演。古代の文化や人々に迫るドキュメンタリー番組『Mysteries and Myths with Megan Fox(原題)』では出演と製作を兼任するなど新境地へ進出している。

Sources: Wonderland, GQ, COSMOPOLITAN
Eyecatch Image: Photo by nicolas genin

Writer

アバター画像
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

Ranking

Daily

Weekly

Monthly