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『アベンジャーズ』指パッチンは物理的に不可能、米研究 ─ 金属ガントレットで皮膚の摩擦が緩和されるため

マーベル『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』サノス

インフィニティ・ストーンを集めたサノスは、指をパチンと鳴らすだけで、全宇宙の生命の半分を消し去ることができる……。マーベル映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)では、サノスの「指パッチン」の脅威が描かれた。

しかし、金属製のインフィニティ・ガントレットを装着したまま、「パチン」と指を鳴らすことは物理的に可能なのだろうか?そう考えた研究者が、「指鳴らし」の原理を徹底調査。すると、研究は様々な可能性を秘めた新発見につながった。

アメリカ科学振興協会のWebサイトEurekAlert!は、『アベンジャーズ』サノスの指パッチンが起点となった、興味深い研究結果を伝えている。この研究は、ジョージア工科大学の学生や助教授ら5人が中心となって行われた。参加したサアド・バムラ助教授は「ここ数年間、人はどうやって指を鳴らすのかということに魅了されていました。これは、我々の指先にありながら、これまで綿密に調査されることのなかった、とんでもない物理パズルなのです」と語っている。

バムラ氏は『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』で、インフィニティ・ガントレットを装着したサノスが指を鳴らすのを観て、これは本当に可能なのだろうかと疑問を抱いた。指を鳴らすには皮膚の摩擦が重要と思われ、金属のガントレットを装着した状態で指は鳴らせるのだろうかと考えたのだ。

そこで研究チームは、高速イメージングや自動画像処理、動的力センサーを使い、「指を鳴らす」ということの原理の解明に挑んだ。サノスのように、金属製の「指ぬき」を装着して指鳴らしの検証も行った。

研究の過程で、興味深い事実も明らかになった。素手の状態で指を鳴らすと、その回転加速度は人間の中でも最速の運動となり、それはプロ野球選手のピッチャーの腕の回転加速度のほぼ3倍にも達するのだという。また、指を鳴らす速度は、「まばたき」の動きの20倍であることもわかったそうだ。「データを見て、椅子から飛び上がりましたよ」と、バルマ氏は語っている。

この研究は、サイエンス・フィクション映画の描写を真面目に論考しただけにとどまらない。彼らは指を鳴らすという超高速運動には適切な摩擦が重要であることを明らかにしており、これは、義肢やバイオインスバイアード・ロボットなどの開発や、アリがどのように顎を鳴らしているかの研究などに応用できる新発見だという。全米科学財団の生物科学理事会も、この研究に資金提供している。

それで、『アベンジャーズ』サノスの指パッチンはというと、物理的には不可能という結論が出たようだ。金属のガントレットを装着していると、必要十分な摩擦を発生させられないためだという。「だからあれは恐らく、実際の物理学ではなく、ハリウッドの特殊効果なんですね」と、研究メンバーのアガヴ・ラチャリア氏は研究結果を報告している。

Source:EurekAlert!

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。