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『ザ・クリエイター/創造者』ギャレス・エドワーズ監督来日単独取材 ─ 「映画の半分は、観客に委ねたい」

映画『ザ・クリエイター/創造者』ギャレス・エドワーズ監督
©2023 Getty Images/Getty Images for Disney/Photo by StillMoving.Net for Disney

『GODZILLA ゴジラ』『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』のギャレス・エドワーズ監督が、そのSF偏愛を余すことなく映像化した意欲作『ザ・クリエイター/創造者』が大ヒット公開中だ。日本作品からの色濃い影響を公言するエドワーズが、この作品のプロモーションのため来日。THE RIVERでは、エドワーズと一対一で話を聞いた。

『スター・ウォーズ』からの影響、独自の世界観の作り方や、観客に向けた熱いメッセージまで、『ザ・クリエイター/創造者』がより味わい深く楽しめるインタビューをどうぞ。

『ザ・クリエイター/創造者』ギャレス・エドワーズ監督 単独インタビュー

映画『ザ・クリエイター/創造者』ギャレス・エドワーズ監督
(C) 2023 20th Century Studios

──今日はありがとうございます。僕は『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』をはじめ、あなたの映画の大ファンです。最新作『ザ・クリエイター/創造者』、とても気に入りました。SF映画の新たな傑作だと思います。『ローグ・ワン』らしさを感じるところも多かったですが、もしも『ローグ・ワン』を作っていなかったとしても、同じ映画になっていたと思いますか?それとも、『スター・ウォーズ』への再訪のような感慨がありますか?

面白い質問ですね。ある程度は同じになったと思います。今、僕は英語を話していますが、それは両親が僕に英語を話し、常に英語を聞いて育ったからです。同じように、僕は『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』を観て育ちました。当時はベータマックスという、VHSより前の世代の、1980年代のフォーマットで観ていました。ソニー製です。『新たなる希望』は、ベータマックスで何度も何度も繰り返し鑑賞しました。

そして自分で映画を作るようになると、今度は『スター・ウォーズ』を語る側になった。『ザ・クリエイター/創造者』を作っているときは、奇妙なことに、より『スター・ウォーズ』がすんなりと入ってきたんです。『スター・ウォーズ』にも携わっているプロダクション・デザイナーのジェームズ・クラインにも参加してもらいました。すぐに『スター・ウォーズ』っぽくなってしまうから、むしろそういう要素を取り除く必要があったほどです。僕たちは、あまりにも『スター・ウォーズ』から影響を受けていたんですね。

それから、こういったハリウッドの大作映画を作る時には、素晴らしいこともあるのですが、同時にあまり自由がなく、少し制約を抱えることもあります。大金がかかっているからですね。やりたいことは全てできるんです。でも一般的に大作映画では、ロケ撮影に行ける回数は限られています。一方、この映画ではほぼ全てのシーンでロケに行くことにこだわりました。

例えばタイでも、現地で撮影された他のどの映画よりも、各地をたくさん周りました。それから、南アジアでは7カ国で撮影しました。『スター・ウォーズ』とは全く違うプロセスですが、とても現実的な世界観に仕上げることにできました。

『スター・ウォーズ』に多大な影響を受けつつ、日本映画からも同じくらい影響を受けています。たとえば『子連れ狼』に『AKIRA』、それからもちろん、黒澤映画です。日本のアニメからも大きな影響を受けていて、デザインに存分に反映しています。

ザ・クリエイター/創造者
© 2023 20th Century Studios

そして、この映画で描かれる未来では、iPhoneのようなApple製品は存在しないという設定です。代わりに、ソニーのウォークマンが普及していて、誰もがポケットに一機持っているという設定。だからプロダクトデザインをソニー製品っぽかったり、任天堂っぽかったりするものにしています。1980〜90年代のソニー製品のデザインを徹底的に研究して、それを未来風に仕上げたのです。レトロというより、『AKIRA』とか、僕たちが子供の頃に憧れていた“未来”のルックってこんな感じだったよね、という再現です。

──アメリカ側が誇る天空要塞「ノマド」は、『スター・ウォーズ』デス・スターからの着想ですか?

ザ・クリエイター/創造者
© 2023 20th Century Studios

そうかもしれませんね。これは、コロナ禍によってデザイン製作期間が追加で2年間もたらされたことの好例なのですが、あの間、僕たちはさまざまなデザインのために長い時間を費やしていました。ノマドのコンセプトは、ワシのような猛禽類。そこに輪がまるで目のように空いていて、ビッグブラザーとして人々を抑圧的に監視している。猛禽類と巨大な目の組み合わせです。

──ジョージ・オーウェルの作品みたいに?

そうです。

──劇中に登場する、突進してくるタンク型のドロイドがとても恐ろしくて、すごく心惹かれました。あのドロイドは何という名前で、どのように誕生したのですか?

ザ・クリエイター/創世者
© 2023 20th Century Studios

あれはジョークから生まれたんです(笑)。ビル・ヒックスという、もう亡くなった有名なスタンダップ・コメディアンがいるのですが、彼のジョークに因んでいます。彼がイラク戦争で使われた爆弾をG12、G13と呼ぶネタがあるんですよ。イラク戦争で用いられた新技術がいかに凄いものかというのが、彼のジョークでした。

(※ビル・ヒックスは毒の効いた風刺ジョークで知られるスタンダップ・コメディアン。ここで挙げられているのは、兵器のカタログを広げたお偉いさんたちが「このG12ってのはどんな武器だ?」「G13はどうだ?」と爆弾投下を試す様子を皮肉ったジョーク。実際の映像はこちらで見られる。)

僕は彼が大好きなので、そのジョークを引用して、G13という名前をつけました。ちょうど僕の名前はギャレス(Gareth)で、誕生日も13日なので、ピッタリだと思ってね。

──これほどのスケールの映画の中で、ハルン役の渡辺謙が日本語のセリフを言うのが嬉しかったです。日本語のセリフは、彼が考案したのですか?

はい。出演者たちには、自身の言語を喋ってもらうように任せました。英語もそうです。この映画で描かれる未来では、戦争によって多くの国境が消滅していて、AIと西洋の対立にいろいろな国が合流して一緒に戦っている。一応、英語は共通英語なので、時々英語で話すんだけれど、それと同じくらい各々の出身国の言語でも話される。謙は日本人なので、日本語です。

ザ・クリエイター/創世者
© 2023 20th Century Studios

難しいシーンでもありました。アマール(・チャーダ・パテル)という役者がロボットの一体を演じる場面で、謙が「このシーンは全部日本語で行きます」と言うんです。ナイスアイデアだと思いました。というわけでアマールは、たった5分で自分のセリフの日本語版を全部覚えなくてはならなくなった(笑)。かなり大変そうでしたが、なんとかやり遂げてくれました。ただ、ポストプロダクションの段階で、一部を英語に戻して、日本語と英語のミックスに仕上げました。

そんなふうに、この映画ではさまざまな言語が飛び交うのですが、そこも気に入っています。リアルに感じられるからです。実際に撮影で各国を訪れた時も、みんなが英語で語りかけてきて、直後に別の言語に切り替え、また英語で話すということがよくありました。英語と他の言語、ごちゃ混ぜです。

でも、字幕というのは映画監督としては難しいものなんです。目で字幕を追っていると、映像が見られないからです。だから、字幕を見て理解してもらうための余白な時間を設けるようにしています。

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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