ボンド&怪傑ゾロを撮った巨匠監督、初の女性アクション『マーベラス』では何を追求したのか【単独インタビュー】

『ミッション:インポッシブル3』(2006)『ダイ・ハード4.0』(2007)のマギー・Q主演、サミュエル・L・ジャクソン&マイケル・キートンという2人の名優が脇を固めた最新アクション映画『マーベラス』が2022年7月1日(金)より全国公開を迎える。幼少期のトラウマを抱えた女性暗殺者が復讐に立ち上がる、スタイリッシュアクションだ。
本作でメガホンを取ったフィルムメーカーも超一流。『007/ゴールデンアイ』と『007/カジノ・ロワイヤル』、シリーズの中でも特に評価が高い2作の『007』映画を手がけ、往年のヒーロー「怪傑ゾロ」を『マスク・オブ・ゾロ』『レジェンド・オブ・ゾロ』の2部作で蘇らせもしたマーティン・キャンベル監督である。『マーベラス』は、御年78歳の監督にとって2017年の『ザ・フォーリナー/復讐者』以来約4年ぶりの新作となる。
これまでアイコニックなキャラクターを世に送り出してきたキャンベル監督は、ゼロから生み出された「女性暗殺者アンナ」というキャラクターにどう向き合ったのか。THE RIVERはキャンベル監督との単独インタビューで、こうした物語の内面に加え、アクション監督としての心構えや美徳なども伺ってきた。
また、近年盛んに聞こえてくる巨匠監督によるヒーロー映画批判についても監督を直撃し、その見方をご教示いただいた。近年、小規模アクション作品が続くキャンベル監督自身、現在のハリウッドをどう見ているのだろうか。

『マーベラス』マーティン・キャンベル監督インタビュー
── 本日はよろしくお願いします!
やあ、どうも。
── 突然ですが、本作のタイトルは、本国ではフランス語で「弟子」を意味する『The Protege』です。日本では『マーベラス』と呼ばれているんですよ。
ほうほう、なるほど。
── ご存じでしたか?
いや、知らなかったな。
── このチョイスはどう思われますか?
日本でピッタリはまっているタイトルなら、それで良いと思いますよ。海外で公開する時に、映画のタイトルを変えることは珍しくはないですから。
── おっしゃるとおりですね。さて、キャンベル監督はこれまで手がけてきた作品のほとんどで、製作や脚本にはクレジットされていません。監督のみとして携わる場合、参加する作品にはどのような基準があるのでしょうか?
「直感」です。私は自分がやることに対して精査したり分析したりすることはしません。オファーされたものを読んでみて、興味を持ったら後はやるのみといった感じです。オファーもたくさん届きますけど、やるべきではないと思うものもあります。今作の場合は、デンゼル・ワシントンの『イコライザー』も手がけたリチャード・ウェンクが素晴らしい脚本家だったのでね。とにかく、直感です。物語やキャラクターが気に入ったので、参加するには申し分ない理由だと思って、撮ることに決めました。

── 本作は、『ジョン・ウィック』を手掛けている製作スタジオ(ライオンズゲート)とのタッグが注目されてもいます。マギー・Qによるスタイリッシュなアクションには『ジョン・ウィック』らしさも感じられましたが、実際に同シリーズのことは意識しましたか?
ライオンズゲートは配給だけで、製作はミレニアムという会社が行いました。『ジョン・ウィック』についてですが、この映画では全く意識していませんでした。『ジョン・ウィック』は個人的に気に入っている映画だけれど。今でも第1作が好きで、全部素晴らしいけど犬が最高でした。
私は、他の作品から影響を受けないタイプなんです。自分の作品についてはやるべきだと思うことをやるだけだと考えている。単純なことです。今作の場合は、マギー・Qのキャラクターとサミュエル・ジャクソンが演じた育ての父の関係性、彼女とマイケル・キートンのキャラクターの関係性が興味深くて、何よりアクションが本当にリアルだった。あれほど身体を張って作り上げるアクションは類を見ないだろうな。アクションの為だけに作られた「アクション映画」ではないのです。
── 本作は企画発表当初、リュック・ベッソンの『ニキータ』のような作品だと伝えられていました。マギー・Qはテレビシリーズ版の「ニキータ」で主演を務めていたという共通点もありますが、女性キャラクターを主人公に据えたアクション作品への野心は強かったのでしょうか?