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『マイティ・ソー バトルロイヤル』ハルクはなぜ話すのか、なぜ賢くなったのか?タイカ・ワイティティ監督、真意を力説

マーベル

映画『マイティ・ソー バトルロイヤル』に登場するハルクは、これまでの作品に登場した“緑色の怪物”とはワケが違う。言葉を話し、時には落ち着き払って行動するのだ。そう、明らかに賢くなっているのである。

『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015)で姿を消してから再登場に至るまで、ハルクの身にはいったい何があったのか。製作陣は、なぜハルクをきちんと知性の伴った存在として描くことを決意したのか。タイカ・ワイティティ監督が米国メディアのインタビューでその意図を力説している。

注意

この記事には、映画『マイティ・ソー バトルロイヤル』の軽微なネタバレが含まれています。

マイティ・ソー バトルロイヤル
©Walt Disney Studios Motion Pictures 写真:ゼータ イメージ

ブルース・バナーとハルク、ふたつの人格

「なぜハルクは話すのか?」という問いについて、ワイティティ監督は早くからひとつの答えを明らかにしていた。2017年7月、米IGNの取材にて、監督は「二重性」という言葉を使うことでその意図を語っている。

「ハルクと(ブルース・)バナーの二重性にいつも魅力を感じてきました。それから、二人の脳が内側でどう繋がっているのかってことに。ハルクを描きながら、そこに時々バナーの存在を示せないか? バナーを描きながらハルクの人格を見せられないか?って思ったんです。身体の主導権をめぐって戦う――本当に戦うんですけど――そういうところを描くのはこの映画が初めてだと思います。それからハルクが言葉を話すのも。言葉を認識して、話すことができるハルクはコミックには存在するんですけどね。」

すなわちハルクが言葉を話せるという設定には、二人の人格が一つの身体に同居していることをきちんと示したいという意図があったのだ。そういえば演じるマーク・ラファロは、ハルクが喋ることは「アイデンティティの分裂した人間を二人の個人にする」ことの始まりなのだと述べていた

より俳優を活かせる「思考するハルク」へ

もちろん、『マイティ・ソー バトルロイヤル』のハルクはただ喋れるだけではない。喋れるという設定を持たせた上で“あえて喋らせない”ことによって、そこにキャラクターとしての厚みを与えていくのだ。
CBR.comのインタビューで、ワイティティ監督は「マーク(・ラファロ)にとって演じがいのある役柄にしたかった」と話している。

「(これまでの)映画では一言二言喋って、ただすべてを破壊していましたよね。多くの人が知るハルクとはそういうものだと思います。でも、今回の賢いハルクはもっと興味深くて魅力的な存在になっているんですよ。だって、彼は2年間ずっとハルクなんですから。この惑星(サカール)の英雄になって、自分を受け入れる時間もしっかりあって、自分自身に満足しているんです。」

そこで監督が見せようとしたのは、じっと黙って思考するというハルクのイメージだった。それはブルース・バナーとは異なる人格が、バナーと同じ身体で何かを考えているという様子だ。

「いまやハルクは黙って座っていることもできれば、ゴリラのように見える時もあるんです。自分の部屋で大きなバスタブに浸かる場面もあります。まるで『地獄の黙示録』(1979)のカーツ将軍みたいでしょう。じっと座って何かを見つめていますし、頭の中ではいろいろ考えているように見えますよね。内省的で静かなハルクは、単純にすべてを破壊する男よりも魅力的だと思っています。」

この言葉通り、『マイティ・ソー バトルロイヤル』で描かれるブルース・バナー/ハルクはもはや「怪物に変身する科学者」ではない。本編で描かれる、従来作品とは少し違ったかたちの心理の機微を見逃さないようにしよう。
また本作は「ハルク3部作」の第1弾とも形容されるだけに、ここからその存在がどのように変化していくのか、そして『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』でどんな活躍が見られるのかという点にも注目したい。変化を経たブルース・バナー/ハルクを、アベンジャーズのメンバーはいかに受け止めることになるのだろうか?

映画『マイティ・ソー バトルロイヤル』は2017年11月3日より全国の映画館にて公開中。

Sources: https://www.cbr.com/thor-ragnarok-smarter-hulk-explained/
http://www.ign.com/articles/2017/07/23/how-thor-ragnarok-pays-homage-to-planet-hulk
https://www.cbr.com/thor-ragnarok-hulk-talks/

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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