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『タイタニック』感動深まる裏話・トリビア集 ─ 日本人乗客の存在、ラストの時計の切ない理由

タイタニック
© Paramount Pictures Photographer: Douglas Kirkland 写真:ゼータイメージ

唯一の日本人が乗船、ミュージシャン細野晴臣の祖父

2000人以上の乗客を乗せたタイタニック号には、唯一の日本人が乗船していた。鉄道院在外研究員の細野正文(ほその まさぶみ)だ。ロシア留学からの帰路でタイタニック号を利用した細野は、二等船室の乗客だったといい、無事救命ボートに乗り生還を果たした。

細野正文 Masabumi Hosono
細野正文|https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Masabumi_Hosono.jpeg

日本への帰国後、細野は不遇に見舞われる。タイタニック号生還者であるイギリス人ローレンス・ビーズリーが、事故での体験談を綴った自著『The loss of the SS. Titanic』の中で「救命ボートに嫌な日本人がいた」と記したことを火種に、日本国内で細野に対する批判の声が相次いだのだ。

ビーズリーによる証言は、『タイタニック』公開後、当時の手記などを基に行われた調査で「人違い」である可能性が濃厚だと判明。1939年に他界した細野は、没後から58年の時を経て名誉を取り戻した。ちなみに細野の孫は、イエロー・マジック・オーケストラに属するミュージシャン、細野晴臣。

沈没のさなか、ベットで身を寄せ合う老夫婦は実在

タイタニック号沈没事故で亡くなった乗客は延べ1500人にも及ぶ。劇中で描かれている通り、乗客人数に対する救命ボートの数は不足しており、沈みゆく豪華客船から脱出することができなかった者が大勢いた。その一方、絶体絶命の状況を悟った乗客の中には、タイタニック号と運命を共にすることを決意する者もいたという。本作でも物語終盤、海へ消えゆくタイタニック号に残ることを選んだ乗客のモンタージュが流れている。

中でも強い印象を放ったのが、水がどっと流れ込む客室のベッドで身を寄せ合う老夫婦だ。死への恐怖で顔を歪ませる妻を後ろから優しく包み込む夫。残り少ない人生を最後まで添い遂げようとする夫婦愛を感じさせた。クレジットでは、この老夫婦がイジドー・ストラウスとアイダ・ストラウスという名であることが分かる。このふたり、実際にタイタニック号からの下船を拒否した実在の夫婦である。

イジドー・ストラウス Isidor_Straus
イジドー・ストラウス|Photo by James Edward Purdy https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Isidor_Straus_1903.jpg

イジドーは、当時世界最大の百貨店「メイシーズ(Macy’s)」の経営者で、外遊先のイギリスからの帰りとして妻と共にタイタニック号に乗船していたという。正義感の強いイジドーは、高齢にもかかわらず女性と子どもを差し置いてボートに乗ることを断固拒否したのだそう。それでも妻アイダだけは救命ボートに乗せようと説得したが、愛を誓ったアイダも夫から離れることに納得せず、2人は船に残ることを選んだという。

なお、本作でもイジドーがアイダを救命ボートに乗せようとする場面の撮影が行われていたが、本編からはカットされた。同シーンはDVDに収録された約45分に渡る未公開シーン集に含まれている。

目閉じたローズのラストシーン、階段の大時計が指す時刻はタイタニック沈没時間

物語終盤、碧洋のハートをジャックの眠る海にしまい、80年前の思い出に別れを告げたローズ。ベッドで瞳を閉じたローズの姿を巡っては様々な解釈がなされている。

ベッドで瞳を閉じるローズを映し出した後、カメラは海中を通り、沈んだタイタニック号を映す。船の階段で乗客乗員に囲まれながら、ジャックの元へと歩み寄るローズ。再会した2人はキスを交わす。2人の後ろに置かれた大時計が指すのは2時20分。この時刻は、タイタニック号が氷山に衝突してから約2時間40分後、船が完全に沈没した時刻と同じなのである。

この時間、現実では救命ボートに乗ることができなかった乗客が必死に脱出しようと船内を駆け回っている。あるいは、沈みゆく船と運命を共にすることを決め、それまでの人生を振り返っていた乗客もいただろう。こうした悲劇とは裏腹、瞳を閉じたローズに続く一連のシーンでは、2時20分にジャックとローズが愛を交わすのだ。

大時計の指す時刻が沈んだ時刻と同じであったことに、制作者側にどのような意図があったのかは定かでない。事故の死没者に敬意を払うための粋な計らいのようにも感じられる。もしかするとローズは、ジャックと離れてから80年もの間、“沈まなかった”タイタニック号でジャックと結ばれる夢を見続けてきたのかもしれない。あるいは、このときローズが亡くなっていたのだとすれば、死後もかすかに残り続ける意識の中で、無事ジャックと結ばれ、天国へ旅立ったのだろう。

Writer

SAWADA
SawadyYOSHINORI SAWADA

THE RIVER編集部。宇宙、アウトドア、ダンスと多趣味ですが、一番はやはり映画。 "Old is New"という言葉の表すような新鮮且つ謙虚な姿勢を心構えに物書きをしています。 宜しくお願い致します。

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