【ネタバレ解説】『トップガン マーヴェリック』伝説のビーチシーン、なぜ◯◯◯ではなかったのか ─ トム・クルーズも全力プレイ、若手はド緊張

この記事には、『トップガン マーヴェリック』のネタバレが含まれています。

なぜアメフトになったのか
『トップガン マーヴェリック』のビーチシーンで、トム・クルーズ演じる“教官”マーヴェリックと若手パイロットたちがプレイしたのは、バレーボールではなくアメフト。ジョセフ・コシンスキー監督はこれといった理由無しにスポーツを変えたわけではなく、とある強い思いからそうしたのだという。
「僕が監督を務めると知った知人は誰でも、こう言ってきました。“あのバレーボールシーンはやらなきゃダメだよ。あれが無ければ、『トップガン』映画じゃない”って。でも、手当り次第のモンタージュ映像を作ってはダメだと感じました。物語を前に進めなければって。」
ロッカールームや上空で対立することもあった1作目の訓練生たちだが、ビーチバレーのプレイ中は仲睦まじい様子で、観客には友情を育む場面として映ったことだろう。しかし、続編でコシンスキー監督が意識したのが、物語との関連性。マーヴェリックは空中戦を意識すべく、ただのアメフトではなく攻守同時並行で行うドッグファイト式アメフトを採用した。コシンスキー監督も「優秀な解決策だと思いました」と振り返る。
トム・クルーズも全力のビーチアメフト

物語の深掘りに徹したコシンスキー監督に対し、キャストたちに与えられた使命は、とにかく身体を鍛えることだった。とはいえ厳密に言えば、この使命は“与えられた”のではなく、名場面を再現することから生じたプレッシャーから、キャストたちは自ら“与えにいっていた”ようだ。コシンスキー監督いわく、パイロット役の俳優たちは「“ドッグファイト・アメフト本番の日”とカレンダーに書いて丸をつけていた」という。「ココナッツオイルとサンレスタンニングを塗って、“やろうぜっ”って言って。僕(監督)も全力で撮影に臨まなければいけないことは分かっていました」。
コヨーテ役のグレッグ・ターザン・デイヴィスは、ビーチシーンの撮影を控えた当時の心境について、「みんなクレイジーになってましたよ」と振り返る。「みんなで『トップガン』を観ました」とも語るデイヴィスは、理想の身体を手に入れた時を「“オー、イェス”って感じでした」と再現。鏡に向き合ってポージングする姿が目に浮かぶようだ。

ハングマン役を演じたパウエルは以前、撮影前夜に「全員で」筋トレに励んでいたことを明かしていたが、実際にはフェニックス役のモニカ・バルバロは遠慮していたそう。ビーチシーンについて改めて言及したパウエルは「彼女は、“私は大丈夫”って感じでした」と証言。一方、自身については「男勢はすごく不安がっていて、高タンパク食を摂取しまくっていました」と語り、「ビーチでも抵抗バンドとウエイトをやって、アメフト前は最後のパンプアップをしていました」と本番直前まで追い込みに励んでいたことを告白した。

並々ならぬ緊張感の下、撮影に励んだ若手たちだが、ビーチシーンの先輩であるトム・クルーズはというと……?コヨーテ役のデイヴィスは、撮影当時のトムの様子をこう説明している。
「トムが走ってスタートを切ったら、全員の間を駆け抜けていきました。」
さすがはトム、疾風のごとく全力ダッシュだったようだ。トムといえば、初期の主演作『トム・クルーズ/栄光の彼方に』(1983)の才能あるアメフト高校生役で迫力のプレーを見せていたが、『トップガン マーヴェリック』でのトムは、さながら史上最高のクオーターバックとも称される現役アメフト選手のように映ったという。「トム・ブレイディかと思いましたよ」とデイヴィスは語っている。
このようにして再現された伝説のビーチシーンだが、無事撮影を終えた若手キャストには、思わぬ事態が待ち受けていたそう。「思いっきり楽しみましたよ」と撮影後を振り返ったハングマン役のパウエルは「夕食後すぐに電話を受け取ったんです」と回顧。受話器越しにこう伝えられたという。
「雰囲気は掴めたけど、もっと撮る必要があるんだ。数週間後に再撮影ね。」
衝撃の伝令を言い渡された若手キャストたちの気持ちは想像するに難くないが、祝福ムードに包まれていたというキャスト一同の反応はというと……なんと開き直ったそうだ。パウエルはこう証言する。「1人の人間が食べられる量よりも多いポテトフライを飲み干しました」。
映画『トップガン マーヴェリック』は公開中。
Source: USA Today