『トップガン マーヴェリック』ヨット操縦シーン、トム・クルーズが「速さが足りない」と言うもんだから荒れた海で撮り直していた

2022年の大ヒット・スカイアクション映画『トップガン マーヴェリック』には主演のトム・クルーズや監督のジョセフ・コシンスキーの情熱やこだわりが寸分の隙もなく詰まっている。その一例として、トム演じるマーヴェリックとジェニファー・コネリー演じるペニーのとあるシーンは、トムの希望により大幅に変更されたそうだ。コネリーがVanity Fairのインタビューで明かしている。
ペニーといえば、第1作『トップガン』(1986)でマーヴェリックたちの会話内で「司令官の娘」としてチラリと言及されただけだったが、続編では養成学校の近くでバーを経営するシングルマザーとして登場。マーヴェリックの恋の相手となった。
しかし、トムのお相手とあらば、ただのロマンスで終わらせるはずはない。ペニーがヨットの修理のためにマーヴェリックを同乗させるシーンでは、トムがよりワクワクするシーンを求めて撮り直しを希望したのだとコネリーは語る。
「元々は、サンディエゴでヨットのシーンを撮ったんです。美しいボートで、イルカを見て、素晴らしかったです。そのシーンを撮って、座っていたらトムが“いや、これじゃつまらないな”って言うんですよ。“速さが足りないし、カッコ良さが足りない。ペニーには実に強くあってほしいんだ”って。彼は正しかったですね。」
事実、劇中の当該シーンは激しく波打つ荒れた海で、2人が必死に操縦する様子が見ものだ。マーヴェリックが困惑していると、ペニーに「あなた海軍でしょ?」とからかわれてしまうコミカルなやり取りもあるが、どうやらこの構図はトムの狙いを形にしたもののようだ。
「サンフランシスコに行ったのですが、ものすごく風が強くて、完全に異なる環境でしたね。風を受けて、びしょぬれになって、すごく良くなりました。どんな登場人物であるかを作り上げる時間が私たちには限られています。そこで、“彼女がヨットを操縦して、穏やかな天候で、美しくて……”というように描くのか、それとも“彼女はヨットを操縦していて、力強くアドレナリン湧き出る体験”を描くのか。(後者は)素晴らしい決断だと思いましたね。」
些細なシーンにも観客を惹き付ける仕掛けやワクワク感を盛り込みたいという、いかにもトムらしい判断が、ロマンチックなだけではない、迫力も見ごたえもあるシーンへと昇華されている。コシンスキーは撮影当時、マーヴェリックとペニーを「引っ付いたり離れたりで何十年も続いていた2人の関係が続編で結ばれた」と想定していたと語っているが、ヨットで奮闘する2人からは、確かに腐れ縁のような空気が感じられる。その後、2人はお互いへの想いをより深めていくので、トムの提案は2人の関係性を説得力あるものに導いたのだろう。
ちなみに、地上や空中含め、壮絶なアクションシーンが数多見られる『トップガン マーヴェリック』の中でも、「まったく手に負えなかった」との理由で最もハードだったのがこのヨットのシーンだとコシンスキーも語っている。
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Source:Vanity Fair,The Wrap