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リーアム・ニーソン、『トレイン・ミッション』13年ぶり来日インタビュー ─ カッコいい歳の重ね方って、こういうことなんだ

映画『トレイン・ミッション』リーアム・ニーソン
©THE RIVER

『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(1999)クワイ=ガン・ジン役や、『96時間』シリーズで知られる、強くて優しい魅力溢れるリーアム・ニーソン。『アンノウン』『フライト・ゲーム』『ラン・オールナイト』のジャウマ・コレット=セラと再び黄金タッグを組み、通勤電車を舞台に緊迫怒涛のノンストップ・サスペンスを描く最新作『トレイン・ミッション』が、2018年3月30日より公開となる。今作を引っさげ、リーアム・ニーソンが来日。都内でTHE RIVERのインタビューに応じた。

時間まで、別室で取材に応じるリーアムを待った。現場のスタッフによれば、「リーアムがすごいペースでチョコレートを消費している」という。ダークチョコレートがお気に入りなのだそうだ。リーアムはこの度の来日中、2日続けて取材続きだったが「昨日よりもチョコのレパートリーを増やしたので、いろいろ食べてみたくなったのかもしれない」とスタッフは分析した。

やがて時間になると、柔らかなレザージャケットを羽織り、モスグリーンのタンブラー片手にリーアムは現れた。見上げるほどに背が高く、優しいシワを刻んだ表情でゆるやかに笑うリーアムからは、まるで樹のような叡智と優美さが感じられる。

映画『トレイン・ミッション』リーアム・ニーソン
©THE RIVER

「この業界では、死ぬまで働くこともできる」

イギリス、北アイルランド出身のリーアム・ニーソンは、この度13年ぶりの来日となるが、「仕事と観光を両立させることが苦手なんです」と打ち明ける。映画のプロモーションのために訪れているのだから、あまり観光という気持ちにはならないのだそうだ。仕事熱心なリーアムだが、それでもこの度は前日に銀座の名店、すきやばし次郎で美味しいお寿司を頂くことができたという。92歳の現役職人、小野次郎が握る寿司を相当気に入られたようで、リーアムはその味を思い出しながらウットリとため息をついた。「92歳のお姿に感激しました。1981年に、モハメド・アリさんにお会いした時の感動を思い出しました。」

トレイン・ミッション
© STUDIOCANAL S.A.S.

映画では特殊なスキルを駆使して様々な局面を切り抜けてきたリーアムだが、今作『トレイン・ミッション』で演じるのは普通の男。それも、長年務めてきた保険セールスマンの仕事を60歳にして突然解雇されて途方に暮れるという、哀愁溢れる瞬間を演じることになる。「老いによる戦力外通告」が1つのテーマとなる今作だが、監督のジャウム・コレット=セラは本国のインタビューにて、「僕もある日、”ジャウマさん、もう潮時です。今の観客が求めるものに追いついていない。残念です”と言われるかもしれない。そうなったら、”そんな事を言っていたら、アンタもそのうち用済みだと言われて、誰かに捨てられるぞ”と返したい」と語っていた。リーアム・ニーソンは熟練と経験を着実に重ね、今では65歳となるが、俳優という世界では歳を重ねるということにどのような意味があるのか、尋ねた。

この業界では、働こうと思えば死ぬまで働くこともできます。少なくとも男性はそうだと思います。女性の場合はちょっと事情が異なるかもしれませんが、最近では変わってきていると思います。しかし、年を取りすぎたということで用済み扱いされる人も、確かにこの業界ではありますね。それだけ厳しい世界なんです。やはり人間は若さを求めていく。そうすると、歳を重ねた方々の叡智や長年の経験というものが掃き捨てられてしまうこともある。それでも、私は若い方々のポテンシャルを信じていきたいですね。

そんなリーアムは、まるでパダワンを指導するジェダイ・マスターのごとく、撮影現場で若い役者を手助けしてあげることがあるのだという。

「時々、若い俳優さんや女優さんが、現場での演技や振る舞いをどうすべきか分からず、監督さんの方もどう指示してよいのか分からなくなっている時があります。そんな時は、そこにそっと加わって、”こうしてみては”とこっそり提案することもあります。もちろん、監督の立場を崩さない範囲でですよ。時々のお話です。」

「映画作りそのものが変わってきている」

アクション・シーンの撮影は楽しんでいるが、リーアム・ニーソン本人は銃規制に向けた活動家でもあり、「銃火器による戦闘を推奨するような描写は、とてもナイーブになっています」という。「でも、このジャンルは好きですね。これぞハリウッド映画。ジャウマ監督もエキスパートですから。いろんな種類の映画に出たいものですね。例えば、昨年はスティーブ・マックイーン監督の『Widows(原題)』を撮影しました。私はヴァイオラ・デイヴィス(編注:彼女は『スーサイド・スクワッド』アマンダ・ウォラー役でも知られる)の夫を演じています。この髭は、コーエン兄弟の6作編成のミニシリーズ『Ballad Of Buster Scruggs(原題)』の役作りのため。西部劇です。まだ撮影中なので、剃れないんです。」

『Ballad Of Buster Scruggs』はNetflix制作・配信のミニシリーズだ。リーアムはTVドラマシリーズへの本格進出は、「現時点ではNO」だと断るが、こうしたストリーミング配信業者によるコンテンツ制作が活況である理由はよく知っている。

「今、脚本力があると思うのはNetflix、Amazon、Huluといったストリーミング配信勢ですね。ここに才能が集まる理由もわかります。彼らは作品の製作や買い付けに巨額を投じているんですね。しかも、一風変わった作品のほうが好まれるみたいで。脚本家たちも、こうした場所の方がのびのびと書けるのでしょう。それもシリーズものでしたら8時間、10時間かけてキャラクターやストーリーをじっくり掘り下げられますからね。映画の場合は2時間しかありませんから。Netflixは、今年一年だけで作品の買い付けに80億ドルも投じているんですって。ハリウッド映画の一年間の興行収益は、すべて合わせてもおよそ100億から110億ドルなんですよ。Netflixはプロダクトに80億ドル。ものすごいですね。映画作りそのものが変わってきているのだと思います。」

映画『トレイン・ミッション』リーアム・ニーソン
©THE RIVER

『トレイン・ミッション』では、『アンノウン』(2011)『フライト・ゲーム』(2014)『ラン・オールナイト』(2015)を共にしたジャウム・コレット=セラ監督と4度目のタッグとなる。監督とは「とにかく馬が合う」というリーアムだが、その理由とは。

誰かと親友になるときに、理由なんて必要ないでしょう。ただハマりあうんですよ(編注:リーアムはこの”ハマる”について、”click”という表現を多用した)。ジャウム監督と一作目でご一緒したときから、ハマったんですよね。良いダンスパートナーということですよ。今でも、毎回彼から技術を学ぶことが多い。それから彼は仕事が早くて、いつも予習バッチリ。そんなところも好きですね。私は、ダラダラした現場があまり好きでないので…。」

ジャウム監督とは、前作『フライト・ゲーム』では飛行機内で、今作では電車内での密室サスペンスに挑んだ。実は監督と既に次回作を進めているようで、その舞台はやはり乗り物、今度の舞台は「車」になるということだ。「どんどん狭くなっていますね」と言うと、「そうそう。2020年ごろには、舞台が戸棚になっているかも知れません(笑)」とのジョークで笑わせてくれた。

この日の夜、リーアムは本作のジャパン・プレミアのため、TOHOシネマズ六本木で開催の舞台挨拶に登場。『トレイン・ミッション』について自らの言葉で大いに語らう一方で、通訳さんを気遣ってトークの量を調整したり、ゲスト登場した女優の観月ありさが過去に発表した楽曲を事前に聴き込んでいたなど、相手への気遣いを全く怠らない。この取材の最後にも、自ら握手の手を差し出してくれた。大きな右手でがっしりと握りながら、リーアムはその滑らかな低音で「Thank you so much」と微笑んで部屋を後にした。

トレイン・ミッション
© STUDIOCANAL S.A.S.

映画『トレイン・ミッション』は2018年3月30日(金)全国ロードショー。

『トレイン・ミッション』公式サイト:http://gaga.ne.jp/trainmission/

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。