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【ネタバレ】『タイラー・レイク -命の奪還-』ラストシーン解説 ─ 監督が語る結末のねらい

タイラー・レイク -命の奪還-
Netflix映画『タイラー・レイク −命の奪還−』 2020年4月24日(金)より独占配信開始

この記事には、映画『タイラー・レイク -命の奪還-』の重大なネタバレが含まれています。必ず鑑賞後にお読みください。

『タイラー・レイク』結末の人影は

裏社会の任務を請け負い、危険な戦闘を渡り歩いてきた傭兵タイラー・レイクは、ムンバイで誘拐された麻薬王の息子オヴィを、ギャングが支配するダッカの市街地から救出するという作戦に挑む。武器商人などが牛耳るアジトに単身突入し、タイラーはオヴィを奪還するが、街中にいるギャングたちから猛追を受けるのだった。タイラーは絶体絶命の状況を脱出し、オヴィを救出することができるのか……。

いわゆる“人質救出劇”である『タイラー・レイク』だが、特殊なところは、クリス・ヘムズワース演じるタイラー・レイクに希死念慮の思いがあることだ。命を危険にさらす任務に次々と身を投じてきたタイラーは、オヴィ救出の依頼を引き受けた際、仲間からも「そうしていればいつか死ねると思ってるの?」という言葉を投げかけられる。なぜ、タイラーは死に接近しようとするのか。その背景には、病で命を落とした息子から“逃げた”という彼自身の罪悪感がある。やがてタイラーは、亡き息子の影をオヴィに重ねていく。ただの仕事が、少年を救うことで自分の罪を償おうとする行為へ変化していくのだ。

クライマックス、ダッカの橋で銃撃戦を繰り広げながらオヴィを仲間に引き渡したタイラーは、安堵したのも束の間、敵に銃撃されて致命傷を負う。痛みを堪え、橋の欄干までたどり着いたタイラーは、オヴィの安全を見届けると、橋上から川の中へと身を投げるのだった。映画の冒頭とも重なるこの場面に続き、物語は8ヶ月後、オヴィがプールの水中に潜っているシーンへ繋がる。そしてオヴィが水面に顔を出すと、画面の奥にはタイラーらしき人影が見えるのだ。しかし、それが誰なのかが明かされることはない。

タイラー・レイク -命の奪還-
『タイラー・レイク -命の奪還-』Netflix独占配信

このラストシーンについて、サム・ハーグレイヴ監督は「映画を観たあと、みなさんに話し合ってもらえればと思っていました」と語る。「あなたが感じたことが、あなたにとっては真実。それでいいんです」と。もっとも、脚本を執筆したジョー・ルッソとハーグレイヴ監督は、もともと“ダッカでタイラーは死んだ”という考えだったという。完成版のラストシーンは、後から変更されたものだったのだ。

「本来の脚本では──これこそ僕の考えだったんですが──タイラーは生き延びていませんでした。彼の物語は終わったんです。タイラーは自分を生かしておく理由を見つけて、犠牲を通じて償いを果たし、旅を終えた。自分が満足する道を選んだのです。過去を受け入れ、今は目の前の少年を救うと決めた。それが自分の死を意味していてもかまわない。僕にとっては、それがタイラーの物語でした。」

しかしハーグレイヴ監督は、脚本そのままの結末を選ばなかった。試写を実施したところ、観客の反応がほぼ真っ二つだったのだ。「多くの人が“生きていてほしい”と思い、また別の方々は“死んでいるべきだ”と思った。僕たちとしては、物語の芯を傷つけることなく、なるべく多くの方を惹きつけたいと考えました」。また、観客のみならず、Netflixの幹部であるスコット・スタバー氏の助言は非常に大きかったという。

「とても鋭い指摘でした。非常に的確で、素晴らしい視点でしたね。つまり、“知性で満足する結末と、感情で満足する結末には違いがあることを忘れてはいけない”というんです。そこで僕たちは、“タイラーが生きているのと死んでいるのと、どちらがより感情的に満足できるんだろう?”と一生懸命考えました。そして、生きていたほうが良い、という結論になったんです。少年はタイラーに生きる目的を与えた。だから、今もそのために生きているのだと。」

もっとも監督は、映画の答えは観客の中にあるのだという持論を崩してはいない。「観ていただいたものは我々が折り合いをつけたものですからね」と、いささか率直すぎるコメントを発してさえいるのだ。「それぞれの見方の良い部分をお渡ししましょう、ということです。曖昧な結末にしておくので、あとはみなさん自身で決めてくださいね、って」

Netflixオリジナル映画『タイラー・レイク -命の奪還-』は独占配信中。

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Source: Collider

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。外部寄稿に『TENET テネット』『ジョーカー』『シャザム!』『ポラロイド』劇場用プログラム寄稿など。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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