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『ヴァレリアン』予告編公開記念!1度は読みたいフランスの芸術的コミック『バンド・デシネ』の名作特集

2017年7月にアメリカで公開予定の映画『ヴァレリアン(邦題未定、原題:Valerian and the City of a Thousand Planets)』。
舞台は700年後の宇宙。2人の特別工作員が宇宙の平和を守るため、銀河間都市アルファを調査しにいくというSFストーリーです。

 
プレイボーイな主人公、ヴァレリアン役には『アメイジング・スパイダーマン』で注目を浴びたデイン・デハーン。ヴァレリアンと共に旅をするロールリンヌ役には『スーサイド・スクワッド』エンチャントレス役でおなじみ、すっかり女優業に転身したカーラ・デルヴィーニュ。監督はリュック・ベンソンです!

幻想的な宇宙の風景、2人の関係や複雑で壮大なストーリー。リュック・ベンソンが描く700年後の宇宙世界や2人が乗り込む宇宙船のルックス、美しく近未来的なその映像がかっこよすぎる!と注目が集まるこの『Valerian and the City of a Thousand Planets』。

この作品、原作はフランスのコミック『Valerian and Laureline』。人気のSFコミックで、日仏合作でアニメ化もされています。
世界に誇る日本のアニメーションや漫画。マーベル作品やDCコミックをはじめとしたアメリカのコミック。実はフランスでも”コミック文化”が根強いもの。毎年開催されているコミックの祭典”アングレーム国際漫画祭”はヨーロッパ最古の漫画のイベントであり、”漫画界のカンヌ”とも呼ばれているほど。
今回はそんな不思議で独特な魅力がつまったフランスコミックについてご紹介したいと思います。

フランスの漫画、バンド・デシネとは

フランスでは漫画作品を”コミック”という呼び名ではなく”BD(バンド・デシネ)という名前で親しまれています。
日本の漫画と異なるところはまずフルカラーであること。そして”少年ジャンプ”のような漫画雑誌は存在せず、すべて書き下ろしです。フランスだと気軽に立ち読みしたり学校帰りに買って帰ったり・・・というよりはプレゼントで贈るようなものだそう。

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そしてこのように1つ1つのコマが大きく、”間”があることも特徴。メッセージ性が強く含みを持たせた表現や手法が多いところは、フランス映画と共通している気がしますね。
絵も繊細でアーティスティック。内容はSFやファンタジー系はもちろん、哲学や風刺などを扱ったものまで。近年の”バンド・デシネ”は子供向けというより大人向けのものが多いです。

代表的なバンド・デシネ作品

『Valerian and Laureline』

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今回映画化される『Valerian and Laureline』。著者はジャン=クロード・メジエール。彼はバンド・デシネ作家の大御所で、映画で監督を務めるリック・ベンソンの代表作品『フィフス・エレメント』のコンセプトデザインも手がけているそう。
『スター・ウォーズ』シリーズにも影響を与えたというSFロマン『Valerian and Laureline』、映画を観る前にコミックやアニメもチェックしてみてはいかがでしょうか。

『L’INCAL(アンカル)』

“メビウス”という名前をご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか。彼は近年のバンド・デシネの先駆者ともいうべき大御所。宮崎駿監督も影響を受けたと公言している人物です。この不思議な都市と、空に浮かぶ船のような飛行船の絵は どこかジブリも思い出させますよね。

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メビウスの描く絵はどれも美しく繊細なものばかり。不思議な生物や幻想的な風景、神秘的な宇宙空間・・・彼の頭の中にはどれだけの世界が存在していて、その目を通してどのように現実世界を見ていたのか気になります。
架空の世界と現実の世界がいりまじったような、1度見たら虜になるメビウスの世界。

そんな彼の代表作品がアレハンドロ・ホドロフスキーとタッグを組んで製作した『L’INCAL(アンカル)』。

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ある日宇宙の鍵をにぎる謎の生命体”アンカル”を手に入れた私立探偵ジョンが、アンカルをめぐって宇宙抗争に巻き込まれていく・・・というストーリーです。
最強カルトムービー『ホーリー・マウンテン』『エル・トポ』をつくりあげたアレハンドロ・ホドロフスキーの頭脳とメビウスのセンスが合わさったコミックなんてもう、読むしかないですよね!
人間、ロボット、宇宙人、はたまた謎の生命体、様々なモノと出会い世界をめぐり 壮大で衝撃的な物語が展開される『アンカル』。きっとあなたの脳と精神を刺激する、今まで出会ったことのないコミックだと思います。

『MONSTER(モンスター)』

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舞台は未来、生き別れた幼馴染との再会を計画する驚異的な記憶力を持った主人公ナイキ・アッツフェルド。彼らが世界を裏で操る謎の組織の陰謀に巻き込まれていく・・・というストーリー。
よくありがちな物語のように思えますが、宗教や紛争、そして宇宙や芸術も絡んでいるのがバンド・デシネらしい特徴。“芸術と死””美しい悪夢”両極端のものをぎゅっと詰め込んだ、おどろおどろしく恐ろしく、哲学的で風刺的な大人向けのコミックです。
繊細で美しいですがどこか退廃的で、哀しげなタッチの絵に目が離せなくなってしまいます。

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著者はエンキ・ビラル。『ゴッド・ディーバ』『ティコ・ムーン』など映画監督としても活躍する、彼もバンド・デシネを代表する作家です。エンキ・ビラル自身もユーゴスラビア出身なので、この『モンスター』には 幼少期に感じた葛藤が反映されているのかもしれません。

『3秒』

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最後にまた一風変わったバンド・デシネを。この『3秒』は、サッカー界で起こったたった3秒間のスキャンダルをモノクロ、セリフなしの正方形の600コマで表現したという異質なもの。
言葉での説明もなく、モノクロで感じ取れるのは光と闇だけ。普段は意識しないわずか”3秒間”を様々な角度から見せられることにより、私たちはこの物語の謎を少しずつ解明していくことができるのです。

著者はマルク=アントワーヌ・マチュー。彼の中で時間の流れはどうなっているのか、いかにしてこの3秒間の情景を組み立てたのか頭の中を覗いてみたいところです。

きっと読んでも読んでも細かいすみずみまでまた読み返したくなり、今までで1番長い”3秒間”を体験できる作品だと思います。

宇宙や精神世界、宗教や善悪、哲学に風刺。人間が生きていく上での様々な世界やテーマをどこまでも美しく、芸術的に描き出すフランスコミック バンド・デシネ。ぜひ緻密で不思議な絵の世界に、どっぷりと浸かってみてください!

Writer

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Moeka Kotaki

フリーライター(1995生まれ/マグル)

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