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「その日のタスクだけに集中すべき」巨匠リュック・ベッソン監督に訊く仕事術 ─ 『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』

ヴァレリアン 千の惑星の救世主
© 2017 VALERIAN S.A.S. - TF1 FILMS PRODUCTION

ビジネスマンや学生にとって、映画監督から学ぶべきことは多いはずだ。その映画の大小に関わらず、製作には実に大勢の人間を巻き込み、とりわけ大作となれば数億円規模の金を動かすことになる。優れた映画監督とは、すべからく仕事術にも長けていると言えるだろう。

では、「巨匠」と呼ばれる映画監督は、どのようなマインドセットで「ハリウッド超大作」プロジェクトに挑むものなのだろうか。『レオン』(1994)や『フィフス・エレメント』(1994)、『LUCY/ルーシー』(2014)などの傑作で知られ、2018年3月30日には最新作『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』の日本公開が控えるリュック・ベッソン監督に尋ねた。

『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』リュック・ベッソン監督
リュック・ベッソン監督

「その日やることだけに集中」

『ヴァレリアン』は、最新鋭のVFX技術により、観るものの想像を絶する壮大な映像が繰り広げられる。当然、製作もさぞ大規模で複雑さを極めたはずだ。これほどのスケールのプロジェクトを、ベッソン監督はいかにしてハンドリングしていたのか。

「プロジェクトが大規模すぎて、全体のことを考えると死ねると思いました。」監督は振り返る。

「だから敢えて視野を狭めるというか、今日はこれだけをやる、明日はこれ、明後日はこれ、とこなすことで何とか生き延びました。一度に全体像を考えちゃいけないんですよ。その日やるべき事だけに集中した方が良いですね。

どうすればアイデアを伝えられるか

ヴァレリアン 千の惑星の救世主
© 2017 VALERIAN S.A.S. – TF1 FILMS PRODUCTION

そんなベッソン監督は、スタッフに自らのビジョンが伝わらない苦労があったという。映画の中で、連邦捜査官の主人公ヴァレリアンとローレリーヌが巨大なマーケットでの捜査に挑むシーンの撮影でのことだ。ここではキャラクターらの実体は砂漠の上にあるが、ヴァレリアンがVRヘッドセットのようなゴーグルを着用すると、異世界の巨大マーケットにトリップする。この二つの世界が入り組んだ複雑なシーンをいかに映像化しようと考えているのか、スタッフに説明するわけだが…。

「劇中では約15分のシーンですが、撮影には6週間もかかっています。撮影前に技術者全員を集めて、絵コンテを見せながら1時間かけてこのシーンを説明したのですが、1時間の説明の後、みんな(きょとんとした顔をして)”うーん…”という反応だったんです(笑)。これは誰も理解してくれていないぞと。だから僕も(頭をポリポリ掻きながら困り顔で)”うーん…”と(笑)。」

ヴァレリアン 千の惑星の救世主
© 2017 VALERIAN S.A.S. – TF1 FILMS PRODUCTION

途方に暮れたベッソン監督は、自身の頭の中にあったビジョンを、実際に映像化してみることにした。

「どうしたら良いんだろうと思って、僕のやっている学校(※)から生徒をかき集めて、1週間かけて絵コンテ通りに実演してもらったんです。生徒にヴァレリアン役やローレリーヌ役をやってもらいながらね。これをいったん撮影して、編集もして、音楽までつけて15分の映像を作ったんです。砂漠のシーンは画面が黄色っぽくて、メガネを通じて観る画は赤っぽく、エイリアンになって巨大市場の中に入ると青っぽくなる。この映像を繋げると、黄色、青、赤、赤、黄色、青、青…と色が移ろい変わっていく。これを技術者の皆さんに観てもらって、ようやく”あぁ〜、こういうことですね…”と理解してもらえたんです(笑)。撮影直前まで困難の連続でしたよ。」

※リュック・ベッソン監督は、パリに映画学校「レコール・ド・ラ・シテ」を設立している。

ヴァレリアン 千の惑星の救世主
© 2017 VALERIAN S.A.S. – TF1 FILMS PRODUCTION

ベッソン監督が『ヴァレリアン』製作を通じて語ったエピソードには、誰もが活用できる教えがあるだろう。どんなに複雑壮大なプロジェクトだろうとも、どんなに難関校の入試試験だろうと、まずは目の前のタスクから、そして目の前の設題からこなしていけば良い。あのベッソン監督でさえ、「全体のことを考えたら死ねる」と言うのだ。そして、時に周囲の人間を巻き込む必要がある際には、誰もが理解しやすい必要最低限のプロトタイプのようなものを用意すると良い。

それにしても、仕事や勉強にちょっと疲れてしまった?そんな時こそ映画『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』を劇場で観るべきだ。ベッソン監督自身がまさしく「映像化不可能」と考えていたフランスの伝説的コミックを、脅威のVFX技術を多用して鮮烈に映画化。日本版のポスタービジュアルに踊る「これは劇薬!」の文字に偽りはない。スクリーンを通じて、インスピレーションとエナジーを脳に直接摂取することができる。

映画『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』は2018年3月30日(金)より全国ロードショー。宇宙で、ブッ飛べ!

『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』公式サイト:http://www.valerian.jp/

(取材・文:Naoto Nakatani)

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THE RIVER編集部THE RIVER

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