『ヴェノム』はこうして生み出された ─ トッド・マクファーレンが語るスパイダーマン裏話、映画『スポーン』近況も

スパイダーマン最大の宿敵として人気のダークヒーロー『ヴェノム』は、単独映画の成功で今やワールドクラスの人気者となった。怪物のように恐ろしい風貌と、衝動(と食欲)にまかせた破壊的なキャラクターながら、まったく憎めないキャラクターが人気を呼び、映画は日本、全米、中国などで初登場1位の大ヒット作となり、世界中でヴェノム旋風を巻き起こした。

THE RIVERでは、1988年のコミック「The Amazing Spider-Man #300」で本格初登場を果たしたヴェノムを創り上げた生みの親のひとりであり、偉大なコミック・アーティストとして尊敬を集めるトッド・マクファーレン氏への貴重な特別インタビューに成功。なぜヴェノムは生み出されたのか?トッドは、ヴェノム生みの親として映画をどう観たのか?ファンからマニアまで必読のエピソードをたっぷり引き出した。
また、トッドと言えば、同じく原作を手がける大人気シリーズ『スポーン』再実写化の動きで世界中から熱い視線を浴びているところだ。未だ闇の中で復活の時を待つ『スポーン』の近況についても聞き出しているので、お見逃しなく。

ヴェノム誕生のキッカケは、トッドのワガママだった?
── そもそも、原作コミックのヴェノムはどのようにして生まれたのでしょうか?
ヴェノムは、コミック『Amazing Spider-Man』のヴィランとして産声を上げました。僕がスパイダーマンのアーティストとしてマーベル・コミックスに参加したころ、ピーター・パーカーはブラックコスチュームを着ていたんですね。でも、僕は描きたくなかった。黒いスパイダーマンなんて、スパイダーマンじゃないと思っていたから。スパイダーマンといえば、やっぱり赤と青のコスチューム。だからマーベルに、ブラックコスチュームじゃなくてもいいなら描きたい、と伝えたんです。でも彼らはブラックコスチュームを気に入っていたみたいで。だから、”じゃぁピーター・パーカーからブラックコスチュームを外して、別のキャラクターを作りますよ。そうしたらブラックコスチュームも存続するし、ピーター・パーカーは赤と青のコスチュームになりますよね”って提案したんですね。マーベル・コミックスも賛成しました。
僕はスケッチに取り掛かり、ブラックコスチュームを大きなモンスターの様に描きました。エイリアンや、クリーチャーのようにしたかった。目は大きく、姿勢は猫背で、爪と大きな口がある。舌は、最初の頃は今みたいに分厚くなかったですね。
そのデザインをライターに渡して、ヴェノムという名前が出てきました。後になって、ヴェノムの中にエディ・ブロックが入るから、これはモンスターというわけではないと言われまして。”いや、デザインしたときはモンスターのつもりだったんですけど”って。デザインの変更はしたくなかったので、”じゃぁ、エディ・ブロックを呑み込むっていう設定にしましょう”と。そうすれば、ヴェノムの身体をデカいままにできる。インクレディブル・ハルクみたいな感じですね。ブルース・バナーが巨大化するような。マーベルも”いいですね”と。それに、ヴェノムを大きくしたのには狙いもありました。ピーター・パーカー/スパイダーマンが拳で倒せないような、やっつけるには知恵も必要になるようなキャラクターにしたかったんです。
つまり、もしもトッド・マクファーレンという若きアーティストがそのままブラックコスチュームのピーター・パーカーを描いていたら、ヴェノムは存在していなかったかもしれません。僕がワガママで(黒いスパイダーマンを)描きたくなかったから、ヴェノムというクールなキャラクターが生まれたというわけです。

── 最初にヴェノムのデザインを描き上げた際、どんなことを意識していたのですか?
とにかく身体が大きいキャラクターにすることにはこだわりました。なぜなら、スパイダーマンがスイングして蹴り飛ばしたり、クモ糸で縛り上げて牢屋送りにできるようなキャラクターにはしたくなかったからです。それではヤワすぎる。だから身体をデカくしたんです。僕たちがサイと対峙した時と同じですよ。押そうとしても、デカすぎて、重すぎて無理ですよね。もし押そうと思ったら、知恵を使って上手いやり方を考えなくちゃいけない。ヴェノムの創造も同じです。ピーター・パーカーが頭を使わないと敵わない、パンチも通用しないような相手です。