マーベル「ワンダヴィジョン」は『マイティ・ソー バトルロイヤル』の影響大 ─ 屈指の異色作、脚本家が「最大の心配事」語る

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)初のドラマシリーズ「ワンダヴィジョン」を“MCU屈指の異色作”と形容して、異論を唱える人はあまりいないだろう。『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)以降の世界を舞台に、ワンダ・マキシモフとヴィジョンの幸せな結婚生活をシットコム形式で描きつつ、しかし謎に包まれた内実やいかに……。配信開始後すぐに絶賛をもって受け止められた本作は、第4話から新たな展開に入った。
シリーズのカギを握るキーパーソンのひとりが、脚本・製作総指揮のジャック・シェイファー。米IndieWireでは、本作の野心的コンセプトに刺激を与えた一作として、タイカ・ワイティティ監督による『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017)が挙げられている。
「あの映画には頭をぶん殴られたような思いでした。とても大胆で、すごくエキサイティング。型破りで、ありとあらゆる色をこれでもかと使っている作品です。だから、(『ワンダヴィジョン』が)オリジナルでユニークな作品だと思われているのはすごく嬉しいですけど、私としては、“だけど『マイティ・ソー バトルロイヤル』があったしな、あれはヤバかったからなあ”って思ってるんですよ。」

シットコムのフォーマットを扱った「ワンダヴィジョン」でシェイファーらが意識したのは、決して「シットコムのパロディにはしない」ということ。あくまで目的は、独自の魅力を持った“映画のような”シリーズを生み出すことで、それゆえに本作はテレビ作品としてのみ構想され、映画化はまったく検討されなかった。「テレビの美学を利用し、壊さなければいけません。スタジオ撮影、小さいアスペクト比、異なる画質、照明スタイルなどを感じてもらわなければ」。
そんな本作について、シェイファーは米Deseret Newsにて「テレビの黄金期である現在を反映している」とも語る。30分のコメディ番組にもさまざまな作品が登場している今こそ、「30分番組はこうあるべきというルールに従う必要もなければ、ストリーミングサービスが変な作品を生み出す機会を与えてくれる」というのだ。
もっとも、本作はいまやハリウッドを代表する人気シリーズであるMCUの一角を担い、今後の物語にも繋がる重要作。シェイファーは製作のプレッシャーを隠すことなく明かしている。
「プレッシャーといえば、たいていはケヴィン・ファイギ(マーベル・スタジオ社長)が気に入ってくれるかどうかでした。ケヴィンは気に入ってくれるだろうか、自分は気に入るだろうか、誇りに思えるだろうか。チームのみんなはどう思うのか。世界をよりよい場所にする作品にできているか。大きな問いかけを繰り返す毎日でした。」
冒頭に触れた通り、「ワンダヴィジョン」はMCUファンを中心に毎週大きな注目を集めており、その凝りに凝ったストーリーテリングには大きな賛辞が寄せられている。しかし、シェイファーの心配事はまだ完全になくなったわけではないようだ。いわく「良いコンセプトは誰でも思いつくもので、問題は着地に成功するかどうか。物語がどう終わるかで全てが判断されますから」。
ディズニープラス オリジナルドラマシリーズ「ワンダヴィジョン」は配信中。
Source: IndieWire, Deseret News