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DC映画、マーベルと同じ路線を進めない理由とは ─ 『ジャスティス・リーグ』ザック・スナイダー監督の分析

ジャスティス・リーグ
JUSTICE LEAGUE and all related pre-existing characters and elements TM and © DC. Justice League and all related new characters and elements TM and © Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

マーベル・コミックスとDCコミックス。アメコミ界の二大巨頭は、いまや映画界においては明らかに異なる道を進むことになった。『アイアンマン』(2008)に始まったマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)は、ひとつの世界観のもとにすべての作品を配置し、『アベンジャーズ』シリーズで合流させるという巨大構想を実現。DCも当初はそれに倣おうとしたものの、『ジャスティス・リーグ』(2017)で挫折。その後は『アクアマン』(2018)『ジョーカー』(2019)など、作品ごとに独立した路線を取ることで成功を収めつつある。

DC映画がまだ「DC映画ユニバース」あるいは「DCエクステンデッド・ユニバース」という呼称でくくられていた頃、すなわち単一のユニバースありきで説明されていたころ、その旗振り役を担っていたのが映画監督ザック・スナイダーだ。『マン・オブ・スティール』(2013)『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』(2016)を手がけたザックは、“なぜDCはマーベルのように映画を作れないのか”という持論を語っている。

このたび、ザックはビデオポッドキャスト「The Film Junkee」に登場。あらかじめ記しておけば、彼はDC映画がマーベルと同じ路線で成功しなかったことを決して否定的に捉えていない。むしろ、ワーナー・ブラザース/DCコミックスの現在の方向性を称えているのだ。

「率直に言って、彼ら(ワーナー/DC)が個性を受け入れることを決めてくれて本当に良かったと思います。それまでは常に批判もあったし、まだ途中だったと思うんですが……“途中”というのは、マーベルのようにやるのか、独自の道を行くのか、何をするのかという意味でね。だけど、今は道筋がしっかり固まったと思います。僕が思うこと、そして願っていることは“まずは作り手ありき”ということ。マルチバースならそれができる。最初にフィルムメーカーがいて、キャラクターが決まって、最後にキャラクターが集まるんです。」

ザックが言及しているように、今後のDC映画は「マルチバース」という概念を強力に推し進めていく。エズラ・ミラー主演『ザ・フラッシュ(原題:The Flash)』にはバットマン役でベン・アフレックとマイケル・キートンが出演し、同作はあらゆるキャラクターとタイムラインの架け橋になることが宣言されているのだ。すでにドラマ「クライシス・オン・インフィニット・アース 最強ヒーロー外伝」(2019-2020)では、エズラ演じる“映画版フラッシュ”と、グラント・ガスティン演じる“ドラマ版フラッシュ”が共演を果たしている

クライシス・オン・インフィニット・アース 最強ヒーロー外伝
SUPERGIRLTM, BATWOMAN TM, THE FLASHTM,ARROWTM, DC’S LEGENDS OF TOMORROWTM and all pre-existing characters and elements TM and ©DC Comics.©2020 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

このフラッシュ同士の共演を、ザックは「象徴的な出来事」だという。「こっちのフラッシュを好きになっても、あっちのフラッシュを好きになってもいい。別に対決させる必要もなく、彼らは別の世界にいられるわけです」。そしてザックは、アニメやドラマなど、あらゆる物語を同時に存在させられることが「DCの強み」だと強調した。

「僕が『マン・オブ・スティール』や『バットマンvsスーパーマン』『ジャスティス・リーグ』を作っている時でさえ、こちらとは関係のないアニメやドラマがありました。そんな状況では、“そのフラッシュは正史じゃない”とか“あのアニメはどうでもいい”とか、そういう扱いによってファンを軽んじることなくして物語をまとめることができません。だけどマーベルは長い時間をかけてユニバースを立ち上げたので、映画を作る時にはいろんなことが決まっていたのでしょう。だから、すべてを同じ方針のもとで進めることができる。

それがDCにできなかったのは、すでにドラマもアニメも人気がありすぎたから。それぞれが成功していたし、クリス(クリストファー・ノーラン)の映画にしても、別のトーンに別の世界観がありました。それらをなかったことにできないからこそ、しばらく葛藤していたんでしょうね。」

マーベルの場合、X-MENやファンタスティック・フォー、スパイダーマンといった人気ヒーローの映像化権を手放してしまっていたがゆえに、比較的知名度の低いアイアンマンやキャプテン・アメリカ、ソーの映画化からMCUを開幕せざるを得ないという実情もあった。しかし、結果的には大ヒットの前例がなかったことがプラスに作用し、独自のユニバースを確立することに結びついている。ザックの分析に基づくなら、もしもMCUが超有名ヒーローの映画化に最初から挑んでいた場合、成功のハードルは高かったということになりはしないだろうか。

現在、ザックは『ジャスティス・リーグ』を自らのビジョンに基づいて再創作する、通称“スナイダー・カット”こと「ザック・スナイダーズ・ジャスティス・リーグ(原題:Zack Snyder’s Justice League)」の製作まっただ中にある。『ジャスティス・リーグ』からザックは製作中に降板しており、後任のジョス・ウェドンがザックの構想とは大きく異なる形で作品を完成させた。もしDCが単一のユニバースであることを優先し、“作り手ありき”ではない方針を取っていたとすれば、まずスナイダー・カットの実現はありえなかっただろう。今、ザックは「(DCの)多様性豊かなアプローチをうれしく思います」と述べている。

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Source: The Film Junkee

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。外部寄稿に『TENET テネット』『ジョーカー』『シャザム!』『ポラロイド』劇場用プログラム寄稿など。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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