『ウィキッド』、その真髄は「エルファバの決意にある」 ─ 「彼女のようになりたいが、ほとんどの人は正直に言えばグリンダのような人間だ」

世界的ヒットを記録した『ウィキッド ふたりの魔女』(2024、日2025)のジョン・M・チュウ監督が、後編『ウィキッド 永遠の約束』を控えた今、映画で“勇気”を描くことの意義を語った。
米Motion Picture Association(MPA:旧アメリカ映画協会)のクリエイター・アワードを受賞したチュウ監督は、授賞式の場で、議員やジャーナリスト、ロビイストらを前に、『ウィキッド』が主人公エルファバを通して描き出す“勇気”についてスピーチしている。
生まれながらにして緑色の肌をもつエルファバは、周囲から差別され、孤立しながらも魔法使いの才能に恵まれた。優等生的だが才能には乏しい友人グリンダとともに、敬愛するオズの魔法使いのもとに向かったエルファバだが、そこで恐ろしい事実に直面し、再び孤立を余儀なくされる──。
「『ウィキッド』の物語は、友情や真実、権力などのあらゆる要素を描いていますが、物語の真髄はエルファバの決断にあります」とチュウ監督はいう。
「他者に対する残酷さへの恐怖と抵抗を抱きながら、彼女はたった一人で立ち上がります。権力に立ち向かうだけでなく、友人たちの助言を拒絶しなければならないのです。“丸くなれ”、“波風を立てるな”、“最も個人的な価値観は妥協しろ、代償を払うことになるぞ”。しかしそれでも、彼女は自分の夢を犠牲にし、正しいと信じることを貫くのです。」

『素晴らしき哉、人生!』(1946)や『アラバマ物語』(1962)、『テルマ&ルイーズ』(1991)、『エリン・ブロコビッチ』(2000)、そして『ウィキッド』へ──。「偉大なる物語の伝統において、我々は決して屈しない道徳的なヒーローたちを愛してきました」とチュウは力説する。
「もしも同じく困難な選択を迫られたとき、私たちは彼女たちのようになりたいと思います。ところが私を含め、ほとんどの人は、正直に言えばグリンダのような人間です。声を上げることのリスクを計算し、たいていは慎重になる。正しいことをしたいと思いながらも、危険に身をさらすことを恐れる。ところが幸い、英雄的行為に逃げ道はありません。英雄的行為は、いつ屈服しようとも価値があるのです。」
この言葉は、『ウィキッド』が描き出した包括性や多様性への“勇気”が、ハリウッドにおいても危ぶまれつつある現状を踏まえているものとみられる。もっとも、チュウは“創造”こそ「勇気の行為」だと強調した。「(創造には)単なる思い上がり以上の勇気が必要です。パラシュートなしで飛行機から飛び降りることを決断し、地面に激突する前にパラシュートを作る方法を発見することです」と。
「勇気は広がります。MPAのメンバーとして、みなさんは業界の人々のために戦いながら、日々このことを実践しています。そしてフィルムメイカーとして、我々は同じことを理解しています。最高の創造性を発揮する勇気を見ると、私たちもさらに挑戦し、より大きな夢を──もしかしたら、想像しているよりも大きな夢を──描くのだと奮い立つのです。」
映画『ウィキッド 永遠の約束』は2026年3月、全国ロードショー。米国公開日は2025年11月21日。
関連記事
『ウィキッド 永遠の約束』2026年3月、日本公開決定 ─ 『ウィキッド ふたりの魔女』の続きを描く特報映像が公開 ふたりが出す、答え 『ウィキッド ふたりの魔女』あの二人は後編に登場しない「今は彼女たちの時代です」 バトンは託された 『ウィキッド:フォー・グッド』予告編、公開24時間で1億1300万回再生 ─ 前作の1.5倍、『バービー』級の好記録 注目度高し! 『ウィキッド:フォー・グッド』米予告編が公開 ─ シンシア・エリヴォ&アリアナ・グランデ主演、大ヒットミュージカルが完結へ ついにドロシーたちも登場 『ウィキッド』後編「期待に応えたい」 ─ いよいよ製作終盤「プレッシャー感じる」と音楽家 オーケストラの録音も今月スタート
Source: Deadline