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ジョン・ウィリアムズ「映画音楽あまり好きじゃなかった」「ただの仕事」

Chris Devers https://www.flickr.com/photos/cdevers/5783786309

『スター・ウォーズ』『インディ・ウォーズ』『スーパーマン』『未知との遭遇』『ジュラシック・パーク』『ジョーズ』『ハリー・ポッター』など、その偉大な作曲歴を全て挙げるには文字数がいくらあっても足りない映画音楽の巨匠ジョン・ウィリアムズは、彼が人生を捧げた“映画音楽”そのものについて、実は否定的な考えを持っていたという。近く刊行される自伝のインタビューで、驚きの見解を語った。英The Guardianが伝えた。

主にスティーヴン・スピルバーグ作品の多くで知られ、映画ファンならずとも誰もの耳に馴染む象徴的な映画音楽の数々を手掛けたウィリアムズは、“映画音楽”のジャンルにおける第一人者である。しかし93歳となるこの作曲家は、「私は映画音楽があまり好きでなかったんです」と告白。映画音楽は過大評価されているのだと、自虐的に語っている。

「映画音楽とは、どれだけ優れていても、たいていの場合はそうではない。ところどころに8分間の光るものがあるくらいで……、“音楽”というものは、そこにはない。つまり、我々が“かけがえのない偉大な映画音楽”だと思っているものは……、懐かしい思い出として記憶しているだけなんです。」

映画音楽における“音楽性”の欠如を自ら指摘したウィリアムズは、「映画音楽が、コンサートホールで正典の最高峰の音楽と同じ場所を占めているという考え自体が、そもそも間違っていると私は思う」とも続けている。ウィリアムズが手掛けた作品は「シネマ・コンサート」としてコンサート・ホールで演奏される機会も多いが、そこに価値を見出すことができないようだ。

「多くの映画音楽は儚いもの。断片的であることは確かで、誰かが再構成しない限り、コンサート作品として捉えることすらできないのです。」

インタビューを行ったティム・グレイヴィングも、「彼のコメントは衝撃的だ」と応じている。「偽りの謙遜ではない。彼は純粋に自重的で、“映画音楽”全般を非難している」。

達人の境地というべきか、インタビュー内でウィリアムズは、自身が手掛けた映画音楽の数々を「ただの仕事」と表現したという。一方でグレイヴィングは、「その言葉を額面通りに受け取るべきではない。彼は映画の音楽作りを、歴史上誰よりも明らかに真剣に捉えていた」とも加えている。

ウィリアムズは2023年公開の『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』を最後に映画音楽から引退すると表明したことがあったが、後に撤回。盟友スピルバーグの父親が100歳まで働いていたという話に触発されたためだ。

この時ウィリアムズは「音楽から引退することはできません。それは呼吸のようなもので、私たちの人生だから。音楽のない一日は間違いですよ」とも話した。これを交えて、この度の発言を解釈したい。これまでの人生で繰り返してきた“呼吸”に、好みや思い入れを抱くことはないだろう。この巨匠にとって、映画音楽とはそういうものなのではないか。

Source:The Guardian

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者、運営代表。執筆・編集から企画制作・取材・出演まで。数多くのハリウッドスターに直接インタビューを行なっています。お問い合わせは nakataniアットriverch.jp まで。

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