ウディ・アレンの自伝、出版中止に ─ 出版社社員らが抗議活動、巨匠スティーヴン・キングは独自の見解

名匠ウディ・アレンの自伝『A Propos of Nothing』の出版が中止されることがわかった。2020年3月6日(米国時間)、出版元の米Hachette Book Group(HBG)が発表している。
同書は私生活から仕事に至るまで、アレンの人生を綴った回顧録として、2020年4月7日に出版される予定だった。しかし、HBG傘下のGrand Central Publishingによる2020年3月2日の出版発表以降、反発の声が各所で勃発。HBG従業員ほか、多くの人々が同社のニューヨークオフィス前にて抗議運動を行うなど、批判の勢いは収まらず、出版発表から4日での取り止めとなった。
出版中止の決定について、HBGの広報担当者は、以下のように声明を発表している。
「我々HBGは、作者との関係を非常に真剣に捉えており、軽々しく出版を取り止めることはありません。[中略]また、会社として社員のために、活気があり、支えとなるような、開放的な職場環境の提供にも努めています。社員の声を考慮に入れた結果、出版中止という結果に至りました。」
アレンは、2018年に自身の養女から性的虐待で告発され、世間から大きな批判を浴びた。その後、米Amazon Studiosに映画契約を不当に破棄されたと主張したアレンは、同社を相手取った訴訟を起こしている。後に両者は和解しているが、新作映画『A Rainy Day in New York(原題)』の米国公開は見送られたままだ。ハリウッドでは、アレンを擁護する声もあれば、非難する声もある。アレン本人は一貫して行為を否認しており、警察からの捜査も数回受けているが、物的証拠は無く、刑事告訴もなされていない状況。このような背景と#MeToo運動の潮流により、出版に対する抗議運動が起きたものと考えられる。
なお、今回の発売中止措置に対して、ホラー小説の巨匠スティーブン・キングは独自の見解を示している。自身のTwitterにて、キングは「Hachette社の判断で、私は不安になりました。アレンに対する不安ではありません。私が心配しているのは、次は誰が抑圧されるかということです。一度抑圧が始まれば、次からは簡単にそうなりますよ」とコメント。続けて、「アレンが小児性愛者だと思うなら、本を買わなければいい。彼の映画を観なければいい。彼のジャズを聴かなければいい。このように差し控えて、財布で意志を示してください。アメリカではそうするんです」とも記した。キングのこの発言は、Twitter上で物議を醸している。
The Hachette decision to drop the Woody Allen book makes me very uneasy. It’s not him; I don’t give a damn about Mr. Allen. It’s who gets muzzled next that worries me.
— Stephen King (@StephenKing) March 6, 2020
Once you start, the next one is always easier.
— Stephen King (@StephenKing) March 6, 2020
If you think he’s a pedophile, don’t buy the book. Don’t go to his movies. Don’t go listen to him play jazz at the Carlyle. Vote with your wallet…by withholding it. In America, that’s how we do. https://t.co/znGZu0wJEF
— Stephen King (@StephenKing) March 7, 2020
今後、すでに契約の支払いや書籍の印刷を済ませているというHBGの判断により、書籍に関する全権はアレンに帰属することになるとのこと。果たしてアレンの自伝が出版される日は来るのだろうか。