「映画の予告編にあったシーンが本編にないのは虚偽広告」裁判が和解

「映画の予告編にあったシーンが、実際の本編にはなかった」は虚偽広告に当たるか?注目を集めたアメリカでの裁判が、「和解」という形に落ち着いたようだ。
この風変わりな裁判は、2019年公開の映画『イエスタデイ』の予告編映像に人気俳優のアナ・デ・アルマスが登場するシーンがありながら、本編には(製作の都合で出番が全カットされたため)一切登場しないのは虚偽広告であるとして、同作をAmazon Primeで3.99ドル(約500円)支払ってレンタルした米メリーランド州の視聴者ふたりが米ユニバーサル・スタジオを相手に訴訟していたもの。原告側はユニバーサル・ピクチャーズが虚偽のマーケティングを展開し、最低500万ドル(約5億7,000万円)分の利益を回収したと主張していた。
争点は、映画の予告編が“商業的”であるかどうかだった。商業的であれば、消費者の多くが誤解を受けるような広告は虚偽にあたる可能性がある。一方、“芸術的表現活動”の一貫であるとするなら、予告編映像に一定の創造性や編集上の裁量が加えられるのも認められるべきだと判断できる。
原告側は、米ユニバーサル社の虚偽のマーケティングに騙された映画顧客の代表として、最低500万ドルの支払いを求めていた。米連邦地裁判事は原告側の訴えを一時認めていたが、その後は原告側の訴えに対して、“自ら招いたこと”で、訴訟を起こす“原告適格に欠く”とし、被告側の立場を支持していた。
2022年1月に起こされた本訴訟は2年の歳月を費やし、2024年4月12日についに和解案が受け入れられた。その条件は明らかになっておらず、米Varietyによれば、両者コメントには応じていないという。
この結果は、双方にとって望ましくない結果となったようだ。ユニバーサルはこの裁判のために数十万ドルの弁護士費用と2年の時間を費やすこととなり、原告側も、当初考えていた金を得られていない。
ユニバーサルは、反スラップ法に基づいて同社主任弁護士の費用(1時間1,158ドル)の払い戻しを求める申立てを行ったり、和解を持ちかけるも原告側の弁護士が粘ったために弁護士費用が膨らんだりと、法的な苦労がかかったようだ。本来7.98ドルの価値しかない訴訟のために圧力をかけられ、巨額の費用を支払わされることになったと、同社の弁護士の一人は憤りを露わにしている。
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Source:Variety