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ワーナー新幹部、低収益のイーストウッド『クライ・マッチョ』をなぜ公開したのかと問う

クライ・マッチョ
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米ワーナー・ブラザーズの新幹部が、名匠クリント・イーストウッドの直近作『クライ・マッチョ』公開に立腹しているとの情報が話題になっている。

『クライ・マッチョ』は2021年に公開された映画。老いた元ロデオスターが、少年と共に旅をしながら「本当の強さ」を説く物語だ。“イーストウッド監督50周年記念作品”と銘打たれた記念碑的映画でもある。

もっとも、批評家や観客からの評価は今ひとつで、3,300万ドルと伝えられる製作費に対し、世界興収は1,550万ドルに留まった。米公開時には初週末3位。以降、5位、12位と転落した。

Wall Street Journalによると、当時ワーナーの幹部らは、『クライ・マッチョ』が利益を生む作品になるとは考えていなかったという。ここにメスを切り込んだのが、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーの幹部として就任した仕分け人、デヴィッド・ザスラフCEO。同氏はDC映画ハリー・ポッター魔法ワールドなど、ワーナー作品の抜本的な見直しに次々取り組んでいる改革派である。

ザスラフは2021年の『クライ・マッチョ』にも、利益を生む見込みがないのなら、なぜ公開させたのかと詰めたそうだ。「誰にも借りは作らない。これは“ショー・フレンド”じゃない、“ショー・ビジネス”だ」と言い放ったと伝えられている。

イーストウッドはハリウッドを象徴する伝説的存在。伝えられたところから想像すると、米ワーナーは「イーストウッドの記念作であれば」と、半ば採算度外視のような矛盾も抱えつつ公開に踏み切ったようだ。作品の良し悪しは別として、そこには映画文化を守りたい想いもあっただろうし、コロナ禍の状況を踏まえればその意義は決して理解しがたいものではない。

一方で新幹部のザスラフはビジネスに徹し、『クライ・マッチョ』公開に合理主義的な異を唱える。おそらく「利益にならない映画は公開するな」と考えているのではなく、「映画を公開するのなら、利益になるよう最善を尽くすべき」と考えているのではないか。ザスラフが率いるワーナー・ブラザース・ディスカバリーは、ワーナーメディアとディスカバリーを統合した新会社で、Netflixなどストリーミング勢が参入した厳しい市場で戦うために設立されたものだ。

ワーナーの新時代を切り開く使命を帯びたザスラフにとって、「イーストウッドの記念作品だから」という思いはビジネスの理由になりえない。『クライ・マッチョ』が説いた「本当の強さ」とは、ビジネスの世界では立場によって異なるらしい。

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Source:Wall Street Journal

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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