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【インタビュー】『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』Qの進化とこれから ─ ベン・ウィショー、3度目の挑戦に何を思う

007/ノー・タイム・トゥ・ダイ
© 2021 DANJAQ, LLC AND MGM. ALL RIGHTS RESERVED.

『007』シリーズ最新作にして、6代目ジェームズ・ボンドを務めてきたダニエル・クレイグにとって最後となる『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』が公開中だ。ダニエル・ボンド有終の美に華を添えるかのように、本作にはMやマネーペニー、『007 慰めの報酬』(2008)ぶりの再登場となるフェリックス・ライターら、おなじみのメンバーが揃って帰ってきた。

ボンドカーやガジェット周りを担当するMI6所属のQも、ジェームズ・ボンド最後の任務に欠かせない重要な仲間だ。ダニエル版シリーズ第3作『007 スカイフォール』(2012)劇中、ロンドンのナショナル ギャラリーでの鮮烈な初登場は今も記憶に新しいQだが、『007 スペクター』(2015)を経て、『ノー・タイム・トゥ・ダイ』ではさらに頼もしい姿を見せてくれる。

そんなQを演じたのは、『パディントン』シリーズではくまのパディントンの声を務めるほか、『クラウド アトラス』(2012)『 メリー・ポピンズ リターンズ』(2018)などでも知られるベン・ウィショー。2018年には、ヒュー・グラント主演のドラマ「英国スキャンダル〜セックスと陰謀のソープ事件」においてエミー賞とゴールデングローブ賞の両賞で助演男優賞を獲得するなど、近年の活躍は目覚ましい。

実力派のウィショーがQを演じるのは、本作で3度目。『007 ロシアより愛をこめて』(1963)から17作連続でQを演じた初代デスモンド・リュウェリンが徐々にキャラクター像を作り上げてきたのに対し、ウィショーは現代における新たなQ像を早くも確立し、ファンからも愛をもって受け入れられている。『ノー・タイム・トゥ・ダイ』でも、Qは最新技術を駆使したガジェットやマシンを開発しているようだが、演じるウィショーはQという役をいかにして進化させたのか。THE RIVERは、公開にあわせて行われた世界各国合同の取材に参加し、ウィショーの思いを訊いてきた。

 007/ノー・タイム・トゥ・ダイ
Getty Images for EON Productions, Metro-Goldwyn-Mayer Studios, and Universal Pictures

シリアスな世界におけるQのユーモア

── あなたが演じるQというキャラクターは、60年間続いてきた『007』シリーズの歴史において、最も重要で伝統的なサイドキックという位置づけです。Qのキャラクター開発において、ご自身の取り組みをどう評価していますか?

『007 スカイフォール』でサム・メンデス監督からこの役のオファーを頂いた時、Qを数作ぶりに再登場させる上での明確なアイデアを監督は持っていました。その理想像というのが、コンピュータ・オタクみたいな人間だったんですけどね。一方で、ジェームズ・ボンドは若干時代に遅れた人間なので、彼にとってQは新鮮で、今のテクノロジーがどうなっているのかをQを通して知るんです。

そこからQというキャラクターはスタートして、その後の2作でキャラクターを進化させていくことができたのは幸運でした。歴代の『007』シリーズではガジェットが大切だった思うのですが、同時に僕にとっては2人(ボンドとQ)の関係性も重要だったんです。他のキャラクターについてもジェームズ・ボンドのミッションにより関わっていくのが分かるでしょうし、与えられた役割以上に、それぞれのキャラクター性が前に出てきているんです。僕自身もそこが楽しめた部分であり、自分らしさを加えようと努めました。

── ボンドとQの関係について、オタクと屈強な男みたいに正反対に考えられると思いますが、あなた自身、2人についてはどう思いますか?

おっしゃるとおりです。2人はおかしな組み合わせで、それぞれ全く違う人間です。このような2人が一緒に働くなんてあまりないと思いますけど、個人的にはお互いに好感を持っていることが気に入っていて。一緒にいることを楽しんでいるし、尊敬しあっていることも良いですよね。この映画では、もっと2人は互いを深く頼り合うようになります。2人の関係を皆さんが楽しんでくれると祈っています。

 007/ノー・タイム・トゥ・ダイ
© 2021 DANJAQ, LLC AND MGM. ALL RIGHTS RESERVED.

── 先代に比べて、あなたのQが見せるユーモアについてどう思われますか?

全体的に、70〜80年代のシリーズに比べると、製作側は(ダニエル版シリーズで)シリアスな要素を加えていると思いますが、ユーモアもしっかり交えられていると思います。ダニエルもそうしていると思いますし。ファンタジーではなく、どっちかというと現実の世界に基づいているというだけであって。ずっとジョークを言っていることなんて出来ないわけですから、ダークでギスギスした世界で、どのようにして自由や遊び心を見出していくかということが大切だと思います。

将来は考えすぎず、Qとしてのこれから

── 予告編では、ボンドとノーミが乗っているハイテク戦闘機が見られますが、Qは『スペクター』から相当腕を磨いているようですね。あなた自身、ガジェットや機械には詳しいのでしょうか?

僕の場合は全くですね。だからこそ、このQというキャラクターを演じるのが楽しいんです。僕はQとは対極にありますから。僕自身、創造力や独創性といったものは大切に思っていますが、Qが持っているものは僕にないものです。だから僕にとっても映画を観るのが楽しみなんです。撮影現場では、あなたがおっしゃたみたいな戦闘機のような乗り物やガジェットを楽しめましたが、完成されたものがどうなっているのかも楽しみでしかたないですね。

── Qは(ガジェットや機械の)開発に携わっていますが、時代とともに開発されるものも変わってきていると思います。これについては、どう思われますか?

良い質問ですね。あまり考えたことはなかったです。ある人が「MI6の仕事は、ジェームズ・ボンドのように現場に出て人を殴ったり撃ったりするような人間よりも、Qのような人間に任せるべきだ」と言っているのを、この数日で聞きました。そういった考えは新鮮で興味深かったですが、次の映画ではどうなるのでしょう。ガジェットや機械について、次の映画で見られる変化は楽しみにしています。だって、世界も大きく変わっていますから。『スペクター』から『ノー・タイム・トゥ・ダイ』の世界も様変わりしていますし。こうした映画で描かれることが、僕たちの住む世界を反映できているといいのですが。

007/ノー・タイム・トゥ・ダイ
© 2019 DANJAQ, LLC AND MGM. ALL RIGHTS RESERVED.

── 『スカイフォール』にQ役で出演した時から、『ノー・タイム・トゥ・ダイ』に出演することはすでに決まっていたのでしょうか?

僕は3本の映画に出演する契約でした。そして、この作品が3本目。これからはどうなるか分かりませんね。他のみんなもこれからのことは分からないと思いますよ。誰がダニエルの後を継ぐのかも。将来のことはあまり深く考えすぎないようにしています。もし僕のQに未来があるなら素敵なことだと思いますし、役を他の人に譲るというのなら、その選択に敬意を払います。フランチャイズにとっても新しい事、新しい領域に向かうことは大切ですから。

「映画復活の皮切りに」、公開への思い

── 撮影は内容がリークしないように、かなり徹底された秘密主義のもとで行われたと思います。撮影中、全ての脚本は手渡されていたのでしょうか?

最終的に全部に目を通すことができたのですが、脚本は段階的にもらいました。そこについては全く問題なかったです。僕は全然気にしませんでした。出番が結構あったので、すごく嬉しかったですね。秘密で行うってのも面白いもので、特別感が出るじゃないですか(笑)。そうした企画の熱心ぶりが大好きです。だから僕たちも外に漏らしちゃいけない。

あ、でも現場でみんなと一緒にいる時は全然秘密とかではないですよ。ただ映画を作るだけですから。秘密の多い環境ではありますが、もう一方では家族のような環境なんです。これまでと違ったのは、今回はダニエルにとって最後の作品だったということ。家族を送別するのは寂しくてほろ苦くもありました。

 007/ノー・タイム・トゥ・ダイ
© 2021 DANJAQ, LLC AND MGM. ALL RIGHTS RESERVED.

── いろんな理由から、監督やプロデューサーたちは撮影のスケジュールを常に調整しなければいけなかったと思います。あなたにとってこうした影響はいかがでしたか?今はこうして取材にも答えていますが、映画を撮影したのは2年前とかですよね?

2019年の10月なんで、僕はちょうど2年前に撮影を終えました。そんな前のことを話すのは不思議ですし、けっこう大変です。当時のことを思い出すのも簡単ではないですね(笑)。そのあとはパンデミックもきたので、トラウマのようなことも経験していますから。だからすごく変ではあるんですけど、延期されて公開されるということ自体は、僕にとってストレスではないですね。しっかり公開されて、劇場で観られるのであれば、“いつ”というのは僕にとってあまり大きな影響はないです。ちょっと長く待たなければいけませんでしたけど、総じて待つ価値はあると思います。

この映画は、タブレットやスマホで観てもらうようなものではないんです。そうあるべきではない。なので、この映画を観て、映画館に戻れるんだということを皆さんに思ってもらえたら本望です。映画館が無くなることはないですし、そうなったらとても恐ろしいこと。だから、この映画が復活の皮切りになれば良いなと思っています。

映画『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』は全国公開中。

Writer

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SawadyYOSHINORI SAWADA

THE RIVER編集部。宇宙、アウトドア、ダンスと多趣味ですが、一番はやはり映画。 "Old is New"という言葉の表すような新鮮且つ謙虚な姿勢を心構えに物書きをしています。 宜しくお願い致します。ご連絡はsawada@riverch.jpまで。

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