2019年アカデミー賞授賞式、全部門のテレビ生中継を決定 ─ 4部門省略の新方針を撤回、業界内の反発受けて

アカデミー賞を主催する米映画芸術科学アカデミーは、第91回(2019年)アカデミー賞の授賞式において、全24部門をテレビで生中継することを発表した。
2018年夏、アカデミーは、第91回以降、毎年4~6部門をテレビで生中継せず、編集した映像を放送時間内に挿入することで対応するとの新方針を決定。対象となる部門は、毎年変更される予定だった。ところが2019年2月11日(米国時間)、2019年の対象部門が撮影賞、編集賞、短編実写映画賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞となることが発表されるや、業界内からは大きな批判が噴出したのである。
これを受けて、2月14日(米国時間)、アカデミーのジョン・ベイリー会長とドーン・ハドソンCEOは業界トップの撮影監督と面会。全24部門をテレビでも生中継することを決定したという。このたび、アカデミーは以下の声明を発表した。
「撮影賞、編集賞、短編実写映画賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞という4部門の放送について、アカデミー会員のみなさんからご意見を頂戴しました。(授賞式では)アカデミー賞の全部門を、編集することなく、従来通りの形式で放送いたします。2月24日の日曜日(現地時間)、授賞式にてお待ちしています。」
テレビで4部門を生中継しないという判断については、業界の大物フィルムメーカーが抗議の公開書簡に相次いで署名。クリストファー・ノーランやクエンティン・タランティーノ、マーティン・スコセッシ、デイミアン・チャゼル、スパイク・リー、ドゥニ・ヴィルヌーヴといった監督たちも名を連ねていた。
しかし米Varietyによれば、アカデミー側は今回の騒動について困惑しているとのこと。2018年8月、アカデミー会員は「複数の部門をテレビで生中継しない」との決定を承認していたためだ。なお今回の撤回により、アカデミーが2018年8月に発表した新方針である、通称“人気映画部門”の設立と、複数部門のテレビ生中継見送りは揃って実現しなくなったわけである。
テレビでの生中継を一部割愛して収録映像に差し替えるという判断は、授賞式の中継・放送を担当する米ABC局が、視聴率の事情などから放送時間の短縮を求めたことによるもの。2020年(第92回)以降、新たな方針によって放送時間の短縮が探られるのか、それとも従来の形式が維持されるのかはわかっていない。ともあれ、授賞式の模様がすべてテレビで生中継されるという決定は、映画関係者のみならず映画ファンにとっても朗報だ。
アカデミー賞の授賞式は、その名の通り全世界を代表する映画賞のセレモニーでありながら、同時に世界各国でで放送される“一年に一回のお祭り”、すなわち「エンターテインメント・ショー」でもある。今回の一件は従来通りの方針に無事落ち着いたが、今後もその両立があらゆる側面から求められることに変わりはないだろう。
第91回アカデミー賞授賞式は2019年2月24日(米国時間)に開催予定。
アカデミー賞 公式サイト(英語):https://oscar.go.com/