Menu
(0)

Search

【考察・解説】『アントマン&ワスプ:クアントマニア』予告編解剖 ─ マーベル次代最強ヴィラン、カーンの計画とは

アントマン&ワスプ:クアントマニア
(c)Marvel Studios 2022

2023年2月17日に日米同時公開が決定したマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)『アントマン&ワスプ:クアントマニア』より、初の予告編映像が届けられた。ここでは、見所満載の予告編映像を、アリのように小さなところまで隅々チェックしてみよう。

スコット、31アイスクリームへ復帰?

『アントマン』(2015)でバイト先の31アイスクリーム(海外名称はバスキン・ロビンス)をクビになってしまっていた主人公スコット・ラング(ポール・ラッド)だが、アベンジャーズでの知名度アップを気に入られてか「世紀の従業員」的な名誉を与えられたようだ。有名になった途端に手のひらを返した31アイスクリームに対して、スコットは胸中どんな思いなのだろうか?カメラの前でスコットと握手するマネージャーのおじさんの、狡そうな笑顔もポイント。

スタン・リー風おじいさん

コーヒー店で「ありがとう スパイダーマン!」と呼び間違えるおじいさんは、どこか故スタン・リーを思わせる風貌をしている。アントマンもスパイダーマンも、スタン・リーが生み出した「虫」がモチーフのヒーローという共通点がある。実は『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021)でも、ラストのドーナツ店でスタン・リーに似た老人が登場。もしかしたら、これは彼らなりのスタン・リーへの新たなトリビュート方法なのかもしれない。

ちなみにスパイダーマンことピーター・パーカーといえば(トム・ホランドが演じる)学生の正体が世間に明かされていたが、『ノー・ウェイ・ホーム』の出来事で人々はその記憶をなくしている。このおじいさんも、スパイダーマンが誰なのかを既に記憶していないのだ。

量子領域を警戒するジャネット・ヴァン・ダインと、謎の開発者

スコットの愛娘キャシー・ラング(キャストは本作からキャスリン・ニュートンに変更された)は特殊な装置を開発。原語では「That’s why we made this (だから私たちはこれを作った)」と言っており、スコットもこれを初めて見るような表情をしていることから、キャシーは科学に明るい別の何者かと協力して開発した可能性がある。

しかしジャネット・ヴァン・ダイン(ミシェル・ファイファー)は、この装置が量子世界にシグナルを発するものと知り戦慄する。ジャネットといえば前作『アントマン&ワスプ』で、30年にも及ぶ量子世界への幽閉から生還している。ジャネットが量子世界でどのような年月を送ったのか、その詳細は語られていなかったが、そこには恐るべき事実が秘められていたのだろう。

アントマン&ワスプ:クアントマニア
© 2022 MARVEL.

量子世界に広がる高度文明

これまでの『アントマン』シリーズで描かれた虚無空間のような量子領域に対して、本作には量子世界の街や文明が登場する。その世界観はまるで『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』で描かれる遙か宇宙のようだ。スコットとキャシーは、この世界の戦士たちと思しき面々に取り囲まれている。

続く場面で、道を先導したり、ホープ(エヴァンジェリン・リリー)に「何をそんなに恐れているの?」と尋ねられたりするジャネット。彼女が隠してたこととは、後に登場する本作のヴィラン、カーン(ジョナサン・メジャース)の脅威のことだろう。

映像では、現実世界をも凌駕するような高度なテクノロジーも見られる巨大な都市が登場。映像の1:27で描かれる、空中要塞の周囲で回転する発光リングに注目だ。既にファンの間では、『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021)のテン・リングスや、「ミズ・マーベル」(2022)カマラ・カーンのバングルとの類似性が指摘されている。この都市は、それらと同じパワーを起源としている可能性がある。

ビル・マーレイは何者だ?

1:43でサングラスを外しながら登場する貴族風の男は、『ゴーストバスターズ』シリーズでお馴染みのビル・マーレイだ。実はマーレイ、2022年4月に出演映画の現場で共演者から不適切行為を告発される問題があった。同作は一時撮影中断に陥ったが、その後折り合いがついた模様。一時は『アントマン』についても不安視されたが、予定通りの出演となったようだ。

『アントマン&ワスプ:クアントマニア』の量子世界の都市がこれほど巨大であれば、そこには政治家や統治者が存在するはずだ。カーンもその1人なのだろうが、マーレイ演じる男は一体何者なのだろう。バーのシークエンスで見られたように、ここでは異形のエイリアンのような種族が多い中、なぜマーレイが演じる男は明らかに人間の姿をしているのだろうか。これは、彼も量子世界の研究に携わっていた者であり、過去にこの世界にやってきたまま定住していることを示唆している。

ついに登場したカーン

インフィニティ・サーガのラスボス、サノスを倒したヒーローたち。次に迫る大物ヴィランともっぱら噂されているのが、このカーンだ。コミックでは“征服者カーン”と呼ばれる、主に『ファンタスティック・フォー』のヴィラン。マルチバースの移動を繰り返すうち、いくつもの変異体が生み出されたという原作設定を持つ、数奇なキャラクターだ。

MCUにおいては、ドラマ「ロキ」(2021)で“在り続ける者”として初登場。TVA(時間変異取締局)の黒幕として描かれたたカーンは、性格は穏やかな人物だった。しかしシルヴィアが刺殺したことにより、時間軸の分岐が発生し、より邪悪な別のカーンが到来しうる展開となった。ジャネットは以前からカーンの存在を知っていて、彼を恐れ続けているような反応を示している。

対カーンの行方

今回の興味深い見所は、今後のラスボス級ヴィランになると見られるカーンに対し、アントマンがいかに立ち振る舞うかである。カーンは、2025年公開のクロスオーバー超大作『アベンジャーズ:ザ・カーン・ダイナスティ』で猛威を振るう存在。多くの人が想像するように、アントマンが単体で倒せる相手ではないはずだ。であれば、本作ではヒーロー側の敗北ENDの可能性もある。

カーンは映像内で、スコットらを元の世界に返す代わりに協力を呼びかけている。彼らは過去、量子世界から通常世界への帰還を実現した者たちだ。もしもカーンがアントマンたちの技術を悪用して、通常世界に移動するとしたら?映像に登場した未知のテクノロジー艦隊も束ねてやってくるとしたら、確かに大きな驚異となるだろう。

カーンの本格デビュー作が本作になった以上、打倒カーンの鍵はアントマンが握ることになるはずだ。そもそもアントマンといえば、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)ではサノス突破の緒を掴んだ男。きっと本作では、後の『ザ・カーン・ダイナスティ』で有効になる伏線が張り巡らせれているに違いない。

現実世界では全然認知されていなかったスコット=アントマンの正体を、カーンが知っているらしい点もポイントだ。「アントマン」と名を呼ばれた瞬間、スコットが「なぜその名を知っている?」とでも言いたげに眉を潜める様子にも注目。カーンは、何らかの方法で通常世界の情報を傍受していた可能性がある。

アントマン&ワスプ:クアントマニア
© 2022 MARVEL.

メジャースが演じたことにより、カーンには知性や説得力がもたらされている。サノスのような破壊的なヴィランと違って、カーンには畏怖が感じられ、スコットを理性的な交渉のテーブルに着かせようとする様子さえある。お人好しのスコットのことだから、うっかりカーンに騙されてしまう、なんて展開もあるかもしれない……?

カーンのデザイン再現

アントマン&ワスプ:クアントマニア
(c)Marvel Studios 2022

注目したいのは、ジョナサン・メジャースが演じるカーンのデザインだ。コミックのカーンは、青い肌に紫と緑のスーツという特徴的な出で立ち。ティザーポスターや1:55の姿はコミックに忠実な青い顔が再現されているが、映像の終盤ではメジャースが素肌のままで登場している。おそらく、青色のフィルターまたはライトを搭載したヘルメットを着用することで、コミックのデザインに寄せたのだろう。

なお、これまでに青い肌のアメコミキャラクターを実写化した例としては、『X-MEN』シリーズのミスティーク、ナイトクローラー、ビーストや、DC『ウォッチメン』Dr.マンハッタンなどがある。Dr.マンハッタンの例では、2009年の映画版(ビリー・クラダップ)のルックは高評価だったのに対し、2019年のドラマ版(ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世)はファンから厳しい評価を下されていた。

不在のM.O.D.O.K.

本作には、カーンの他にM.O.D.O.K.がヴィランとして登場することになっているが、今回の予告編では確認できない。サンディエゴ・コミコンで上映された映像ではその姿がキャッチされていたらしいことから、隠し球として伏せられることになったのだろう。カーンとの本格対決が『ザ・カーン・ダイナスティ』に持ち越されるとしたら、本作ではM.O.D.O.K.が実質的なヴィランになることも考えられる。

キャシーのスーツ

アントマン&ワスプ:クアントマニア
© 2022 MARVEL.

最後に着目しておきたいのは、映像の1:53や1:57でキャシーも父スコットやホープと同様のスーツを着用しているところだ。原作コミックでキャシーは、父に憧れてスティンガーやスタチューなどを名乗るヒーローとなって、ヤングアベンジャーズに加入する。MCUでも若きヒーローたちが続々と登場し、ヤングアベンジャーズ実写化の下地が整えられているところだ。おそらく本作では、キャシーの初々しいデビュー戦も見られることだろう。

ここで、彼らは量子世界の中でキャシーのスーツをどうやって入手したのかという疑問が沸く。キャシーの装置によって量子世界に吸い込まれるシーンや、その直後に新世界を散策する場面で、キャシーは明らかに私服を着用している(スコットやホープは、スーツを小型化して携帯していたのだろう)。

これは、彼らが劇中で量子世界と通常世界を何度か行き来するか、または量子世界にはキャシーのスーツを入手できる理由があることを示している。キャシーもまたアントマンやホープのようにヘルメットを着用するかは不明だが、より詳細なデザインも気になるところだ。

『アントマン&ワスプ:クアントマニア』は2023年2月17日、全国劇場公開。

Writer

アバター画像
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

Ranking

Daily

Weekly

Monthly