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『ワイルド・スピード ICE BREAK』への道 この映画のカーアクションがスゴい!傑作カーアクション映画7選

『ワイルド・スピード ICE BREAK』(2016)が凄まじい興行収入をあげています。週末3日間で約9878万ドル(約107億円)の売り上げをアメリカ国内で記録。

さらに世界週末興行収入は5億3198万ドル(約575億円)。現時点で世界興収は10億ドル超えです。さらに驚くべきことは『ワイルド・スピード ICE BREAK』はシリーズ8作目です。にわかには信じがたい事実です。

『ワイルドスピード』シリーズは最上レベルでわかりやすく面白い映画です。一本道なストーリー、派手なアクション、派手な演出、派手なロケーション。ただひたすらに豪華で、ただひたすらに豪華であることだけを追求しているような映画です。私もこのシリーズは大好きで全作鑑賞しています。見終わった後、10分も経つとどんな内容か忘れてしまいますが、心に残るアートであることも一過性の娯楽であることも映画としては立派な在り方だと思います。

さて、そのとにかく豪華な『ワイルドスピード』ですが、ひときわ目を引くのが派手なカーアクションです。

 (C)Universal Pictures

カーアクションは道路封鎖をして車両を用意し、クラッシュさせるときは一発勝負で安全対策に専門家を手配してと、大作映画の規模でしか決して実現することが出来ない映画の華と呼べる存在です。

今回は古今の映画より印象に残るカーアクションシーンをいくつかピックアップしてみたいと思います。

『ブリット』(1968)

古今存在するカーアクションの草分け的存在です。
殺し屋の乗ったドッジ・チャージャーをスティーヴ・マックィーン演じる刑事の乗ったマスタングが追いかけていくという極めてシンプルな構成です。
この映画で特徴的なのはサンフランシスコという街のロケーションを巧みに活かしていることです。
追う側と追われる側の二台の車両はくねくねと曲がりくねった坂道を延々と走り続けます。車は急な坂道に隠れたかと思うと再び飛び出し、急な曲がり角をコーナリングして消えたかと思うと再び現れる。この応酬が10分近い長尺にわたって繰り広げられます。コーナリングでタイヤが擦れる音、轟くエンジン音が画面を盛り立て時折挟まれるスティーヴ・マックィーンの渋面が緊迫感を演出しています。

『フレンチ・コネクション』(1971)

突然ですが、アクションの演出において絶対の基本というものがあります。
それは位置関係です。カーチェイスであれば追う側と追われる側の位置関係、距離感
これが何らかの形で説明されていないと見ている人間は混乱してしまいます。
この混乱アクションをやってしまうのがマイケル・ベイです。彼は一つ一つの画は派手で非常に印象深いのですが位置関係の説明を省いてしまう悪癖があります。そのため、何が起きているのかサッパリわからないという現象がマイケル・ベイ作品ではしばしば見受けられます。
『フレンチコネクション』の印象的な場面、犯人が乗った輸送列車をジーン・ハックマン演じる刑事が高架下の道路を伝って追いかけるというシーン。
これは映像によるジグソーパズルです。ウィリアム・フリードキンは5週間かけて撮影した画を細かくつなぎ合わせ高架上と高架下という複雑な位置関係を過不足なく説明しながらさながらドキュメンタリーのような臨場感で描いてみせるという離れ業をやってのけました。
フリードキンは本作と『エクソシスト』(1973)という歴史に残る2本の傑作を撮った後長年低迷を続けていますが、彼の功績は見逃せません。
手持ちで撮った細切れの画を目まぐるしいほど細かく繋ぎ合わせるという手法はポール・グリーングラスが「ジェイソン・ボーン」シリーズで有名にしましたが、フリードキンは1970年代に既にこれを先取りしています。『フレンチ・コネクション』のカーアクションはその極致と言えるものでこんな複雑なシークエンスを組み立てたフリードキンには唯々畏敬の念しか浮かんできません。

『ミニミニ大作戦』(1969)

一般的にカーアクションと言えば、追う側と追われる側が直線的な応酬をするものですが、『ミニミニ大作戦』はそこに知性を持ち込みました。マイケル・ケイン演じる主人公が乗り込んだのはそれまでカーアクションのイメージとは一線を画するミニクーパーでした。
ケインの乗ったミニクーパーはその小柄な車体を活かし、イタリア警察を出し抜きます。
車体の小ささを利用し、ミニクーパーはメインストリートを外れると水門を潜り抜け、巨大な油送管路へ到達し、人でごった返す広場をわたってバスに乗っかります。クインシー・ジョーンズの軽妙な音楽も心地よく、洒脱でユーモラスな雰囲気を盛り立てています。

『ボーン・スプレマシー』(2004)
『ボーン・アルティメイタム』(2007)

「ジェイソン・ボーン」シリーズ一作目の『ボーン・アイデンティティー』(2002)のカーアクションはパリを舞台にマット・デイモン演じるボーンがミニクーパーの小柄な車体を活かして逃走するというさながら『ミニミニ大作戦』の後継といえるものでした。
監督がダグ・リーマンからポール・グリーングラスに交代した後のシリーズは前述の『フレンチ・コネクション』と近しいものを感じさせる演出をしています。
グリーングラスはここに新たな発想を追加しました。それは車両自体を武器にするという発想です。
『ボーン・スプレマシー』ではモスクワでタクシーを、『ボーン・アルティメイタム』ではニューヨークで港湾局のパトカーを調達したボーンはまずその車両で逃走します。
ですが、ボーンの調達した車両はスペックが低く、追跡者の車に追い付かれます。ここでボーンは車両を敵の車両にぶつけて攻撃するという手段に出ます。クラッシュさせてバランスを崩させ、力関係を徐々に逆転させていきます。どちらの作品も最終的にボーンの乗った車両はスクラップ状態になりますが、敵の車両も破壊し逃走に成功します。
「ジェイソン・ボーン」シリーズは主人公がその場にあるものを武器にするという発想のアクションを組み立ててきました。
先のとがったボールペンはナイフの代わりに、分厚い書籍は盾の代用品になります。
ボーンにとって車両もまた武器であるという一貫した姿勢がカーアクションにも見られます。

『ザ・タウン』(2010)

ボストンはニューイングランド最大の都市であり、同地域の文化的、政治的な中心ですが市域人口は70万に満たない大都市とは言えない規模の街です。
それゆえに巨大な幹線道路よりも小道が多く、『ザ・タウン』ではその地理的特性が画面的な効果として活用されています。
ベン・アフレックが監督と兼任で演じる主人公はボストンの入り組んだ小道を何度も曲がりながら複数台のパトカーの追跡を躱し、
時には銃撃で力押ししながら道を拓いていきます。道を曲がるたびに、その先にパトカーがいるかもしれないという視覚的効果は抜群で彼の非凡なセンスを感じます。
ベン・アフレック監督が少年時代をボストン近郊のケンブリッジで過ごし、ボストンをよく知っているというアドベンテージもあるのでしょう。
ドキュメンタリーを思わせるようなめまぐるしいカッティングは前述の『フレンチ・コネクション』を思わせ、さながら2000年代版のボストン版『フレンチ・コネクション』という様相を呈しています。

『ドライヴ』(2011)

『ドライヴ』は「寡黙なアウトローが愛する人を守るためにマフィアを敵に回す」というありがちな内容の脚本を突き抜けた演出力で傑作に押し上げた映画です。
アクションというジャンルは映画賞において基本的に不利なのですが、ニコラス・ウィンディング・レフン監督は本作でカンヌ国際映画祭の監督賞を受賞しています。

カーチェイスは古今東西数多くのアクション映画で描かれてきましたし、その中には映画史に残る名場面も少なくありません。
今回の記事で挙げてきた作品はいずれも劣らぬ傑作だと私は思いますが『ドライヴ』のカーアクションはそのうちのどれにも似ていません
今まで紹介してきたカーチェイスは基本的に猛スピードで鍔迫り合いをするか、小さな車体でかく乱するかのどちらかのパターンに分類できますが、ニコラス・ウィンディング・レフンが選択したのはそのうちのいずれとも違う方法でした。

ライアン・ゴズリング演じる名無しのドライバーは飛ばすときは飛ばしますが、それ以外は極力法定速度を守り、警察無線を傍受しながら相手の動きを読んで時に停車して相手をやり過ごします。カーチェイスというよりも車という駒を使ったチェスのよう「動」と「動」で構成されるはずのカーアクションに「静」と「動」という相反するものを持ち込むことに成功しています。

あまりにも斬新過ぎたのかこの映画のカーアクションに似たものを私は他に知りません。
傑作であると同時に異色作とも言えるでしょう。

まとめ

CGが発明されて以来、視覚化することができないものは無くなりました。
カーアクションもまた然りです。実際、『シン・シティ』(2005)や『300』(2007)のように大胆にも「背景は全部CG」という作品も既に存在しています。
ですが、生のアクションにはやはり代えがたい魅力があります。今回挙げた作品はいずれも生のアクションの魅力が味わえる代物です。
車両という凶器をぶつけあうカーアクションは大作映画の体制あってこそ実現できるものです。私は低予算なインディー映画の製作に何度か関わっているので、こういう大作映画でしかできないものに多大なる魅力を感じます。
今後も映画史にあって生のカーアクションが作られ続けることを楽しみにしています。

https://youtu.be/cK_gcJYItNg

Eyecatch Image: (C)Universal Pictures

Writer

ニコ・トスカーニ
ニコ・トスカーニMasamichi Kamiya

フリーエンジニア兼任のウェイブライター。日曜映画脚本家・製作者。 脚本・制作参加作品『11月19日』が2019年5月11日から一週間限定のレイトショーで公開されます(於・池袋シネマロサ) 予告編 → https://www.youtube.com/watch?v=12zc4pRpkaM 映画ホームページ → https://sorekara.wixsite.com/nov19?fbclid=IwAR3Rphij0tKB1-Mzqyeq8ibNcBm-PBN-lP5Pg9LV2wllIFksVo8Qycasyas  何かあれば(何がかわかりませんが)こちらへどうぞ → scriptum8412■gmail.com  (■を@に変えてください)

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