映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』3つの見どころポイント解説

アイアンハート:ドラマ化決定、アイアンマンの意志を継ぐ

コミックでは“アイアンマンの意志を継ぐ”若き戦士、アイアンハート/リリ・ウィリアムズにも要注目だ。『ワカンダ・フォーエバー』では、MITに通う19歳の天才学生として登場。シュリやオコエらワカンダの戦士たちに合流し、アイアンマンのようなパワードスーツで戦う。ヘルメット内の表情周りに情報パネルが浮かぶ、トニー・スタークの戦闘場面でお馴染みカットの伝統もしっかり受け継がれている。
アイアンハートは2023年秋にディズニープラスで単独ドラマも配信予定。この製作にはライアン・クーグラー監督も参加している。それもそのはず、ドラマは『ワカンダ・フォーエバー』の直接的な続編になるというのだ。今作でアイアンハートがどのようなデビューを飾り、どのような旅を始めるか、しっかりチェックしておこう。
ちなみにアイアンハートは、コミック『インビンシブル・アイアンマン』では15歳の設定。共に巻き込まれた銃撃事件で心臓を撃たれ死亡した親友を忘れないために「ハート」の名を取り入れる物語が描かれた。コミックではトニー・スタークの後継者として明確に描写されており、自らをA.I.化したトニー・スタークがホログラム登場し、常にリリの側でサポートするという物語になっている。
映画版ではコミックほどトニーが直接影響するわけではないとプロデューサーは明言するが、監督の方は「彼女とトニーの間にはつながりがある」と発言。今後、アイアンハートを通じてトニー・スタークのレガシーが語り直される可能性が高い。
アイアンマンと言えば、ジェット飛行しながらアーマー全身に搭載した武器で戦うスタイルでお馴染みだ。アーマーは作品ごとにアップデートされ、後期はナノテクノジーを用いた変幻自在の立ち回りも見せた。『ワカンダ・フォーエバー』では、アイアンハートのアーマーがどのような機能を搭載しているかもお楽しみの一つ。きっと新時代のアイアンマンらしさを実感できることだろう。
ポイント3:前作との連続性や対比を楽しむ

本作は、MCUフェーズ4の映画として最終作となる。フェーズ3までは「インフィニティ・サーガ」として主にサノスとの最終決戦までの物語が描かれたが、「ワンダヴィジョン」に始まったフェーズ4は「マルチバース・サーガ」としての新章が始まっている。このフェーズはあくまでも今後に向けての「紹介」になるとされており、そのラストを飾る映画が本作『ワカンダ・フォーエバー』だ。
本作は、前述のネイモアやアイアンハートといった新キャラクターを「紹介」しながら、ティ・チャラの意志をいかに受け継ぐかといった継承物語と、新登場のタロカンとの衝突にフォーカスされている。したがって、前作『ブラックパンサー』以外の他MCU作品との繋がりがそれほど重要ではない、独立した世界観になっている。ドラマを観ていないと理解できないような描写や、置いてけぼり感あるマニアックな小ネタが前面に飛び出すことも特にないので、ひとまず前作『ブラックパンサー』さえ観ていれば、誰でもいきなり感動できる映画だ。
前作『ブラックパンサー』の復習はぜひ推奨しておきたい。物語の流れをうまく理解するため、というのはもちろんのこと、前作と対比・連続させたような演出に気づくことができるようになるからだ。また、あくまでもワカンダでの王位継承をめぐる内紛であった前作から、対立国が出現した時にワカンダがどう対応するかといったテーマ性の拡大も体感できるようになるだろう。

海外レビューでは「MCUには稀有な成熟ぶりとシリアスさ」「あるべき形のヘビーさとダークさ」「こんなコミック映画はかつてなかった」と評された一作。今年(2022年)のMCUは比較的ライトな作品が多かったが、フェーズ4を、そして2022年を荘厳に締めくくる映画だ。たくさんの想いが込められた、劇場で観るべき重要作である。
『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』は公開中。胸の前で腕をクロスさせて鑑賞しよう。