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『ブラック・ウィドウ』単独映画、コミックの完全再現にこだわらない理由 ─ 「差別的なものを忠実には描かない」

スカーレット・ヨハンソン
Photo by THE RIVER

スカーレット・ヨハンソン主演『ブラック・ウィドウ(原題:Black Widow)』は、マーベル・シネマティック・ユニバースの近作『ブラックパンサー』(2018)『キャプテン・マーベル』(2019)と同じく、キャラクターのはらむ物語を現代に向けてアップデートする作品となる。『キャプテン・マーベル』に続いて参加する脚本家のジャック・スカエファーは、米Inverseの取材にて“攻めの姿勢”を明かした。

「(マーベルでの)仕事を始める前は、スーパーヒーロー映画の大ファンというわけではありませんでした。ですが、いま仕事をしていると、ここには非常に巨大でポジティブな意志表明の可能性があると思います。特に、『キャプテン・マーベル』や『ブラック・ウィドウ』のような、女性を中心とする物語に関わらないなんてありえませんよね。」

こう宣言するスカエファーは、次の10年のスーパーヒーロー映画にも確固たるビジョンを持っている。より共感できる悪役を登場させ、武器や兵器を魅力的に描くことはせず、そして社会で無視されてきた人々の声をきちんと表現するというものだ。時として、これは従来のコミック映画のお約束や、あるいはコミックの原典にも反する選択となるだろう。

しかし、スカエファーは「コミックでも、ある面で差別的だったり、私の善悪の価値観に反していたりする物語に忠実でありたいとは思いません」と断言。『キャプテン・マーベル』公開時、荒らし行為が相次いだことについて「ヘイトは悲しい。恥ずかしく思います」と述べつつ、スカエファーは毅然とした態度を示した。「そこにエネルギーを費やしたいとは思いません。大きな声の負け惜しみに興味はないので」

これまでマーベル・スタジオは、あらゆる作品でコミックファンに敬意を払いつつ、現代にふさわしいストーリーを提供し続けてきた。したがって『ブラック・ウィドウ』でも、コミックに精通するケヴィン・ファイギ社長らの監修を受けながら、物語は丁寧に刷新されているのだろう。出演者のフローレンス・ピューは、本作について「大胆で生々しく、悲しい」物語の、「女性たちが自然な形で、誠実に描かれ」る作品であることを明かしている

なお、ヒーロー映画の隆盛が長期化している現在、原作コミックを離れて独自のストーリーテリングへ明確にシフトするアメコミ映画も現れはじめた。たとえばDCコミックス原作映画『ジョーカー』(2019年10月4日公開)に至っては、すでに「コミックは意識しませんでした。ファンは怒るかもしれませんけど」とまで監督が述べているのだ。いまや「アメコミ映画」は、いわゆる“コミックの映画化”ではなく、さらに自由な可能性を獲得しつつあるといってもいいだろう。

映画『ブラック・ウィドウ(原題:Black Widow)』は2020年5月1日に米国公開予定

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Source: Inverse

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。