『ブラック・ウィドウ』海賊版拡散で約6億ドルの損失か ─ 配信戦略で高画質版が世界に流通

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)作品『ブラック・ウィドウ』(2021)が、ディズニープラスでのプレミア アクセス配信によって約6億ドルの損失を生んでいた可能性がある。米Deadlineが配信戦略の“落とし穴”を報じた。
新型コロナウイルス禍の影響を受け、ディズニー/マーベル・スタジオは『ブラック・ウィドウ』を劇場公開と同日にディズニープラスで配信する方針を決定。月額料金に加え、29.99ドル(日本では3,278円(税込))を支払うことで最新作を自宅などで楽しめる“プレミア アクセス”にて配信を実施した。ところが結果的には、これが高画質の海賊版の流通に繋がったという。
報道によると、『ブラック・ウィドウ』は公開・配信の直後から海賊版の流通が始まり、複数言語の本編が4K画質で世界中に出回ったという。本作は2021年7月9日に全世界で劇場公開となったが、8月末の時点で違法視聴された回数は2,000万回以上。プレミア アクセスだけで6億ドル近い損失が出ていた計算となる。またプレミア アクセスは別料金が発生するため、ただでさえワーナー・ブラザースによるHBO Maxの同時配信(別料金なし)よりも視聴者数が伸びていなかったというから、ディズニーにとっては大きな痛手だろう。
また、配信戦略の導入は『ブラック・ウィドウ』の劇場興行に大きな影響を及ぼした。本作は米国公開後2度目の週末に、興行収入が前週比-67.8%というMCU史上2番目の下落率を示した。コロナ禍の影響が大きかった時期ゆえ、これがすべて配信戦略のためだと断じることはできないが、それでも少なからぬ影響があったことは確かだろう。劇場興収額に応じた報酬を受け取る契約だった主演のスカーレット・ヨハンソンは、“同時配信は契約違反”としてディズニーを相手に訴訟を起こし、両者の関係性にも重大な危機が訪れたのである(のちに和解)。
なお、ディズニープラスでは『ジャングル・クルーズ』(2021)や『クルエラ』(2021)なども劇場公開と同時にプレミア アクセス配信されたが、これらも劇場興行のみでより多くの利益を生むことができた可能性が指摘されている。むろんディズニーだけでなく、ライバルであるワーナー・ブラザースも同時配信戦略が劇場興行にダメージを及ぼしたほか、『DUNE/デューン 砂の惑星』(2021)や『マトリックス レザレクションズ』(2021)などは海賊版での視聴が非常に多かったことが報じられていた。
Source: Deadline(1, 2), Business Insider